

2025年9月9日火曜、イスラエルはカタールの首都ドーハに対し、ハマス指導部を狙った空爆を敢行した。この作戦は、単一の標的に対して15機の戦闘機が参加し、10発の弾薬が使用されるという大規模なものであった。驚くべきことに、カタール軍はこのイスラエル軍機の領空侵犯を察知できなかったとされている。
If Israel can attack Qatar over a Hamas negotiator, what stops them from targeting the UK or US next on similar grounds? Their actions resemble ISIS but with far more victims pic.twitter.com/QgmA931WyJ
— Mohammed Hijab (@mohammed_hijab) September 9, 2025
ロイター通信などの報道によると、空爆が行われた建物では、当時ハマスの代表団による停戦に向けた協議が行われており、その中にはハマスの最高幹部ハリル・アル・ハイヤ氏も含まれていた。ハイヤ氏自身は無事であったものの、彼の息子とカタールの治安当局者1名を含む6名が死亡した。イスラエル側は、最大の標的はハイヤ氏であり、「停戦交渉団を暗殺する目的だったが失敗した」と認めており、「情報収集を続けている」と述べている。この発言は、イスラエルが停戦交渉そのものを妨害しようとした可能性を示唆している。
空爆を行ったのはステルス機F-35Iか?
イスラエルメディアの報道によれば、この作戦にはイスラエル軍の戦闘機15機が参加し、単一の標的に対して10発の「精密な弾薬」が発射された。特筆すべきは、イスラエル軍機がカタール領空に侵入した際、カタール軍による迎撃行動が一切なかった点である。カタールはフランス製のラファール、米国製のF-15QA戦闘機、米国製のパトリオット防空システム、そして短距離防空システムを保有しており、高度な防空網を構築しているにもかかわらず、侵入を察知できなかったとされている。この事実から、イスラエル軍機がステルス性に優れたF-35Iを使用し、さらに防空レーダーを無力化する高度な電子戦が展開された可能性が高いと推測されている。イスラエル軍は、今年6月のイラン空爆においても電子戦によってイランのレーダーを無力化している実績があり、今回の作戦でも同様の手法が用いられたと考えられる。侵入経路については、6月のイラン空爆時と同様に、イラク上空を通過し、ペルシャ湾を経由してカタールに侵入した可能性が高いと推測されている。戦闘機の飛行能力を考慮すると、片道飛行でも空中給油が必要となるため、空中給油機も随伴していたと見られる。これは、イスラエルが中東地域における長距離攻撃能力を確立していることを示唆している。
しかし、この事態をさらに複雑にしているのは、カタールが米国の同盟国であり、国内に中東最大の米軍基地であるアル・ウデイド空軍基地が存在することである。この基地には1万人を超える米兵が駐留しており、中東戦略における前線拠点として使用されている。米軍のレーダーはイスラエル軍の侵入を確実に察知していたはずだが、何らの行動もとらなかったとされている。さらに衝撃的なのは、米国がイスラエル軍によるカタール空爆を事前に知らされており、トランプ政権がこれを承認していたと報じられていることである。米国は同盟国であるカタールにもイスラエルによる空爆が実施される旨を伝えたとされるが、カタール首相は攻撃開始後10分後に通知されたと非難しており、事前に十分な警告がなかったことを示唆している。
作戦を了承したとされる米国ホワイトハウスは、イスラエルによる一方的な攻撃であり、非NATO同盟国であるカタールで攻撃が行われたことは遺憾であるとの認識を示した。トランプ大統領も攻撃の数時間後にSNSへの投稿で、攻撃は「ネタニヤフ首相の決定であり、私が下した決定ではない。私はカタールを米国の強力な同盟国であり友人とみなしており、攻撃の場所については大変遺憾に思う」と述べ、カタールの指導者らに対しては「カタールの領土では二度とこのようなことは起こらないだろう」と、今後攻撃がないことを保証した。しかし、同時に「ガザの人々の悲惨さから利益を得てきたハマスを壊滅させることは、価値ある目標だ」と攻撃を容認する発言もしており、米国の姿勢は複雑かつ矛盾をはらんでいる。
カタール首相はドーハに対するイスラエル攻撃について「主権の明らかな侵害、決定的な瞬間を迎えた。地域全体からの報復が必要だ」と報復権を保持すると述べた
— ミリレポ (@sabatech_pr) September 10, 2025
攻撃はトランプ政権承認のもと行われ、事前に警告したとしてるが、開始後10分経過してから通知したと首相は非難pic.twitter.com/ZuutIoD4BL https://t.co/mmupXcjOn9
空爆を受けたカタール政府はもちろん激怒している。カタール首相はドーハに対するイスラエル攻撃について、「主権の明らかな侵害であり、決定的な瞬間を迎えた。地域全体からの報復が必要だ」と述べ、報復権を保持すると表明した。これは、今回の空爆が地域全体の安定に与える影響の大きさを物語っている。また、中東の盟主である隣国サウジアラビアも、声明で「サウジアラビア王国は、イスラエルの残忍な侵略とカタール国の主権に対する明白な侵害を、最も強い言葉で非難し、糾弾します。王国はカタールに対する完全な連帯と支持を表明し、カタールが取る可能性のあるあらゆる措置を支援するために、すべての能力を提供することを約束します。同時に、イスラエル占領による継続的な犯罪的攻撃と、国際法の原則およびすべての国際規範に対する明白な違反がもたらす重大な結果について警告します」と述べ、カタールを全面的に支持し、イスラエルを強く非難している。
今回のイスラエルによるカタール空爆は、単なるハマス指導部の標的化というだけでなく、中東地域の複雑な地政学的状況、米国の関与、そして国際法の順守といった多岐にわたる問題を浮き彫りにした。今後、カタールや周辺諸国がどのような対応をとるか、そしてそれが中東情勢全体にどのような影響を与えるかが注目される。
What do we know about Israeli strike on Hamas in Qatar?
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