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初飛行から37年!実戦デビューしたグリペン戦闘機

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スウェーデンが開発したJAS39 グリペン戦闘機が、その初飛行から37年という長い歳月を経て、ついに実戦デビューを果たしました。この歴史的な一歩は、ヨーロッパから遠く離れたタイとカンボジア間の国境紛争という、予期せぬ舞台で刻まれました。これは現在運用されている西側製戦闘機の中では最も遅い実戦デビューであり、グリペンの開発と運用における特異な道のりを象徴する出来事と言えるでしょう。

タイ空軍でグリペンが初の実戦デビュー

7月24日に勃発したタイとカンボジアの国境紛争は、マレーシアの仲介により28日に即時停戦に合意し、29日午前0時に停戦が発効しました。その後もタイ軍による攻撃主張やカンボジア側の否定など、緊張状態は続くものの、紛争は終息に向かっています。この5日間に及ぶ紛争の中で、タイ王立空軍が保有するスウェーデンSaab社製のJAS39 グリペン戦闘機が初めて実戦に投入されました。

7月26日、プー・マ・クア山脈とタ・ムエン・トム寺院付近でカンボジア軍の砲撃が激化する中、タイ空軍はグリペンC/D戦闘機2機を派遣。カンボジア軍の砲兵陣地に対し、誘導爆弾による精密空爆を実施しました。この出撃と空爆は、スウェーデン製グリペンが実戦に投入された歴史上初めての事例となりました。

グリペンの開発と歴史

F-35を断られたタイ空軍はF-16の後継としてグリペンE/F戦闘機を購入する
©Saab

グリペンは、スウェーデン空軍の特定のニーズに応える形で開発されました。短距離離着陸能力、簡素な整備性、そして低コストでの運用を特徴としています。しかし、これらの優れた特性にもかかわらず、その実戦デビューはF-16やユーロファイター タイフーンといった他の西側製戦闘機と比較して大幅に遅れました。これは、今でこそNATO加盟国ですが、スウェーデンが長らく中立政策を維持し、大規模な紛争への直接的な関与を避けてきた歴史的背景や、慎重な姿勢が影響していると考えられます。

スウェーデン空軍は、Viggen(AJ37)戦闘機の後継機を求め、1982年に「JAS計画」を始動。Saab社が開発を主導し、ボルボ(エンジン)、エリクソン(レーダー)、BAEシステムズなどが参画してグリペンの開発が始まりました。1988年12月9日に初飛行に成功し、1997年にスウェーデン空軍に初期型グリペンA/Bの配備が開始されました。機体は小型・軽量で、整備性とコストパフォーマンスに優れた戦闘機として注目され、ハンガリー、チェコ、南アフリカ、タイ、ブラジルといった中堅国で採用されました。その後、電子装置を改良しNATO規格に対応したグリペンC/Dが開発され、2018年には最新のアビオニクスとエンジンを改修し、スーパークルーズを可能にしたグリペンE/Fも開発されています。

グリペンの任務履歴

スウェーデンはNATO加盟国であり、グリペン採用国のハンガリー、チェコ両空軍と共にバルト海上空警戒任務にグリペンを派遣していますが、これまで実戦経験はありませんでした。南アフリカ空軍のグリペンもアフリカ各地での平和維持活動(UNPKO)に従事しましたが、実戦を経験することはありませんでした。2011年のリビア内戦では、NATOの「ユニファイド・プロテクター作戦」にスウェーデンはグリペン8機を派遣しましたが、フランス空軍のラファール戦闘機が空爆を行う中、グリペンに攻撃任務はなく、偵察・監視飛行に限定されていました。また、スウェーデンはウクライナにグリペンの供与を申し出ていましたが、F-16の供与が決定し、機種が増えると、運用が煩雑になると供与を一旦停止しました。

今回のタイとカンボジアの紛争におけるグリペンの実戦投入は、その能力を実証する重要な機会となりました。具体的な交戦の詳細や、グリペンが果たした役割についてはまだ情報が限られているものの、このデビューはグリペンが実際の紛争地域においてもその性能を発揮できることを示しました。この出来事は、今後のグリペンの国際市場における評価や、スウェーデンの防衛産業の戦略にも影響を与える可能性があります。グリペンは今年だけでもコロンビア、ペルーでの採用が決定。タイも最新のE/Fの購入を決定するなど、販売は好調でした。

今後、グリペンがどのような任務に投入され、どのような実績を積んでいくのか、そしてその実戦経験が機体の改良や運用戦略にどのように反映されていくのかが注目されます。グリペンの37年越しの実戦デビューは、航空戦力の進化の歴史において、一つの新たな章を開いたと言えるでしょう。

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