フランス空軍は4月9日に行われた式典でミラージュ2000D戦闘機の近代化版「ミラージュ2000D RMV」を発表した。近代化により、ミラージュ2000Ｄは少なくとも2035年まで前線で運用可能になる。
4月9日、ナンシー・オチェイ133空軍基地でミラージュ2000D RMVの運用開始式が開催された。 「構想から現実へ、紙から飛行機へ、アイディアから運用開始まで9年。わずか10年の間に、研究、試験、調整、そして訓練が行われました。この成功の陰には、エンジニア、技術者、整備士、そして航空兵たちの強い意志と厳格さがあり、この航空機が新たなマイルストーンに到達することを可能にしました 。」と、式典を主宰した空軍参謀本部計画プログラム副本部長、ヴィンセント・シュソー航空部隊大将は宣言した。「ミラージュ2000Dの改修は、機敏で近代的かつ断固として運用可能な戦闘態勢を維持するという空軍の取り組みを完全に体現している。この近代化により、航空機は最新世代の装備の恩恵を受け、現在および将来の作戦地域の課題に対応できるようになりました。」とフランス空軍は声明で述べた。
ミラージュ2000D RMV
2016年に開始されたミラージュ2000Dの中期改修計画。ミラージュ2000D RMVと命名された最新モデルは運用寿命の延長と対地攻撃能力強化を目的に様々な新兵器の追加が行われ、米国製の1,000ポンドGBU-48、500ポンドGBU-49、2,000ポンドGBU-50といったEnhanced Paveway II精密誘導爆弾が搭載できるようになった。国産兵器としてはAASM精密誘導ロケット爆弾のレーザー誘導版、タレス/TDA ASPTT（Air-Sol Petite Taille Tacticique）軽量レーザー誘導空対地兵器が追加されている。また、ミラージュ2000Dは核攻撃型ミラージュ2000Nの機体をベースに開発されたため、機内機関砲は搭載されていなかったが、CC422 30mm機関砲ポッドがエアインテーク下の左チンパイロンに設置され、また、短距離対空戦闘用のMICA IR空対空ミサイルも搭載可能になっている。アビオニクスも更新され、最新のナビゲーションシステム、戦術データリンク、デジタル スクリーンを備えた新世代のコックピットシステムを搭載している。フランス空軍は現在65機のミラージュ2000Dを配備しているが、約5億3000万ユーロをかけ、この内50機をミラージュ2000D RMVにアップグレードした。近代化により、少なくとも2035年まで最前線での運用が可能になる。
ミラージュ2000D
ミラージュ2000D（Mirage 2000D）は、フランスのダッソー・アビアシオン社が開発・製造した戦闘爆撃機。ベースとなっているのは1970年代に開発された第4世代戦闘機のミラージュ2000になり、1978年に初飛行、フランス空軍の50周年にあたる1984年に初期量産型のミラージュ2000Cがフランス空軍に就役した。ミラージュ2000は迎撃用戦闘機として開発されたがミラージュ2000Dはその派生型として精密な対地攻撃を目的として開発された機体で、核弾頭搭載可能なミラージュ2000Nから、核兵器運用能力をオミットする形で開発され、1993年から2001年にかけて86機が生産された。攻撃用のナビゲーション・照準ポッドやGPS・INS統合ナビゲーションシステム、夜間攻撃能力などが搭載されている。複座型で後席に兵装システムオペレーターが搭乗、複雑な攻撃ミッションを分担している。2001年のアフガニスタンでの不朽の自由作戦、2011年のリビアでのハルマッタン作戦、そしてイラク、シリアでのIS掃討のシャマル作戦などに投入されてきた。
ミラージュ2000Nが2018年に退役し、基本型であるミラージュ2000Cが2022年に退役。現在、運用中のマルチロール型のミラージュ2000-5Fも退役が始まっており、一部はウクライナに供与されている。フランス空軍の主力機体は第4.5世代多用途戦闘機のラファールに切り替えられる計画で230機以上をオーダーしている。また、ドイツ、スペインと共に第6世代戦闘機のNGFの開発を行っている。ミラージュ2000D RMVはミラージュ2000シリーズの最後の機体になる予定だ。
