

米国は、2017年から続いた長期にわたる協議を経て、マレーシアがクウェートから中古の米国製F/A-18ホーネット戦闘機33機を購入することを正式に承認した。これは、南シナ海における緊張の高まりを背景に、マレーシア空軍の航空戦力の大幅な強化に繋がるものだ。
現地メディアの報道によれば、マレーシア空軍(RMAF)創立67周年記念式典において、クアンタン空軍基地で開催された記者会見で、マレーシア空軍司令官のタン・スリ・アスガル・カーン将軍が、クウェートからのF/A-18ホーネット戦闘機最大33機の購入協議について、「米国が必要な対米兵器輸出許可を与えた」と正式に発表した。米国製兵器の第三者への販売は、米国武器輸出管理法に基づき米国議会での承認を必要とするが、このたび上下両院の議会承認が得られたことを意味する。2017年以来の長年にわたる協議がようやく承認を得たことは、中国の海洋進出により南シナ海における緊張が高まる中、マレーシア空軍の能力強化に資するものと期待されている。計画されている調達には、単座型のF/A-18Cおよび双座型のF/A-18Dを含む、クウェート空軍が保有する全33機のF/A-18ホーネットが含まれている。
マレーシア空軍は現在、1997年に取得した8機のF/A-18Dホーネットを運用しているが、南シナ海の緊張を受け、この数を倍増させることを検討していた。近年、各国ではホーネットの退役が進んでおり、2021年には米海兵隊のF/A-18C、オーストラリア空軍のF/A-18A/Bが全機退役し、フィンランド空軍も旧式化したホーネットの後継機としてF-35を64機発注しており、退役が決定している。現在、中古市場には多くのホーネットが出回っているが、マレーシアが着目したのは中東のクウェートの機体だ。クウェート空軍のホーネットは、他国の退役機と比較して稼働時間が短く、耐久寿命が長いためだ。
クウェート空軍は、1991年の湾岸戦争後、単座型のF/A-18C 32機と複座型のF/A-18D 8機の合計40機のホーネットを取得した。しかし、老朽化に伴い、2016年にF/A-18の最新機種であるF/A-18E/Fスーパーホーネットを最大40機取得する契約を米国と締結し、2021年には注文分の28機全てが納入されている。また、2015年には28機のユーロファイタータイフーンも発注しており、これも半数の15機が納入されている。これに伴い、12機のスーパーホーネットの取得は見送られた。ホーネットの全機退役は、スーパーホーネットとタイフーンの全機運用が揃い次第の予定であり、完全退役は2025~2026年頃と推定されており、マレーシアへの引き渡しはそれ以降になる見込みだ。
マレーシア空軍の戦闘機
マレーシア空軍(RMAF)は現在、戦闘機として8機のF/A-18Dホーネットと18機のロシア製Su-30MKMを運用している。しかし、Su-30は2018年にエンジンの問題およびスペアパーツの入手困難により、18機中14機が飛行停止となるなど問題が多い上に、戦争中の情勢を鑑みると、ロシア製兵器の使用には多くのリスクが伴う。RMAFは最近、退役したBAEホーク208/108軽戦闘機の飛行隊を代替するため、韓国製のFA-50M戦闘攻撃機を18機購入しており、納入は2026年になる見込みだ。また、7年前にロシア製のMiG-29Nフルクラム16機が退役したことにより、多用途戦闘機(MRCA)の飛行隊に空白が生じており、次期MRCAの取得検討も進められているが、計画は遅延している。2021年5月には、16機の中国軍機がマレーシア沿岸から100kmに接近したため、BAEホークを緊急発進させたが、中国軍のJ-15、J-16といった戦闘機を前に戦闘機の戦力差は歴然であり、早急な航空戦力の増強が求められていた。
F/A-18ホーネット
マクドネル・ダグラス社が開発し、1980年代初頭に導入されたF/A-18ホーネットは、空対空および空対地の両方の任務を遂行できるよう設計された、双発の空母搭載可能な多用途戦闘機だ。F/A-18Cは単座型、F/A-18Dは、全天候攻撃任務向けに構成された複座型で、照準システムを操作する兵器センサー担当官(WSO)が搭乗する。この機体は、推力出力が強化されたF404-GE-402エンジン2基を搭載し、最高速度はマッハ1.8、外部燃料タンク搭載時の飛行距離は約2,000kmだ。AN/AAR-50などの熱航法ポッド、AN/AAS-38A NITEホークなどの照準ポッド、暗視対応コックピットなどの特徴を備え、一部のD型にはATARS偵察システムが搭載されている。ペイロードは7700kgで、AIM-9 Sidewinder、AIM-120 AMRAAM、AGM-65 Maverick、AGM-84E SLAMなどを搭載可能。F/A-18C/Dの生産は2000年に終了しており、アメリカ海兵隊は現在もAPG-79(V)4 AESAレーダーシステムを搭載したアップグレード版を運用している。