米司法省は7月1日、中国国籍の男２人が米国内でスパイ活動を行ったとして逮捕した事を発表した。6月30日、中華人民共和国国籍の2名が、オレゴン州ポートランドとテキサス州ヒューストンの連邦裁判所に初出廷し、米国司法長官への事前通知なしに中国政府の代理人として活動したとして、カリフォルニア州北部地区連邦検事局によって刑事告発された。
Justice Department Charges Two Individuals with Acting as Agents of the PRC Government
被告人の詳細と逮捕の経緯
逮捕されたのは、オレゴン州ハッピーバレー在住のユアンス・チェン（38歳、中国国籍、永住権保持者）と、2025年4月に観光ビザで中国からテキサス州ヒューストンに渡航したライ・リーレン・ライアン（39歳、中国国籍）の両被告である。彼らは、中国政府の主要な対外情報機関である国家安全部（MSS）に代わって、米国で諜報活動を監督および実行した疑いで、先週金曜日に刑事告発され、逮捕された。逮捕は、2025年6月27日、オレゴン州ハッピーバレーおよびテキサス州ヒューストンでFBIによって行われた。これは、複数の州にまたがる協調的な防諜および法執行活動の一環として実施された大規模な作戦の結果である。
MSSによる秘密諜報活動の全容
2022年1月、中国広州滞在中、ライがチェンにMSSのために働くよう勧誘。2人は 米海軍の軍人および基地に関する情報の収集に従事。MSSのために働き続け、米海軍内で新たなMSSの諜報員となりうる人物を特定するのを支援した。
2022年と2023年に、チェンはライの指示により、ワシントン州の米海軍施設とカリフォルニア州サンガブリエルの米海軍募集センターを訪問。チェンは募集センターで新兵の個人情報を入手し、それをMSSの情報将校に送信したとみられる。告発書によると、チェンはMSSから、将来の水兵の関与と募集の方法、および発見のリスクを最小限に抑える方法について指示を受けていた。最終的に、チェンはソーシャルメディアで海軍職員に接触を開始し、その職員に関する情報をMSSに提供した。告発書によると、チェンは2024年4月と2025年3月に広州に渡航し、MSS情報将校と会い、報酬と具体的な任務について話し合ったという。
この事件に対し、米国の高官からは強い非難の声が上がっている。
「この事件は、中国政府が我が国の軍に浸透し、国家安全保障を内部から弱体化させようとする、継続的かつ積極的な取り組みを浮き彫りにするものです」と、パメラ・ボンディ司法長官は述べ、米国の主権と安全保障を守るための司法省の揺るぎない決意を強調した。「司法省は、敵対国が我が国にスパイを送り込むのを黙って見ているつもりはありません。外国工作員を摘発し、その工作員の責任を追及し、国家安全保障に対する秘密の脅威からアメリカ国民を守ります。」
カシュ・パテルFBI長官は、「FBIは、中国に代わって米軍兵士の勧誘を試みたとして、中国国籍の2名を逮捕した」と発表した。さらに、「中国共産党は、デッドドロップなどのスパイ技術を用いて情報提供者に金銭を支払って米国内で活動するという計画を、うまくやり遂げられると考えていた。この事件は複雑かつ組織的な取り組みであり、サンフランシスコ、ポートランド、ヒューストン、サンディエゴの各FBIと対諜報部による卓越した対諜報活動の一例である。FBIは、中国による国境への侵入を企てる頻繁な試みから、引き続き米国を警戒して守っていく」と述べ、FBIの卓越した防諜活動を称賛した。
ジョン・A・アイゼンバーグ司法次官補（国家安全保障担当）は、「中国国家安全部のような悪質な外国情報機関は、米国内で自らの命令を実行するための情報機関として、人材を募集し育成することに長年を費やしている」と指摘し、「私の指揮の下、国家安全保障局は引き続き我が国を守り、敵対勢力の秘密スパイ網を無力化していく」と語った。
カリフォルニア州北部地区連邦検事のクレイグ・H・ミサキアン氏は、「これらの容疑は、外国の敵対勢力が米国を標的とする、広範囲にわたる取り組みを反映しています。今回は、国家安全保障情報と軍関係者を標的とした違法な情報収集活動です」と述べ、自身の事務所とFBIが米国に対する脅威に対し、常に警戒を怠らないことを強調した。「国家安全保障を弱体化させようとする試みを阻止するため、いかに複雑で機密性の高いものであっても、対スパイ活動の捜査と訴追を継続していきます。」
海軍犯罪捜査局（NCIS）のオマール・ロペス局長は、「NCISと海軍省は、外国による情報収集の脅威を非常に深刻に受け止めています。中国は長年にわたり、機密軍事情報へのアクセスを理由に、様々な手段を用いて米軍人を諜報機関の要員として採用しようと試みてきました」と述べた。「NCISと海軍省は、海軍省の重要な戦闘能力と造船能力を脅かすあらゆる試みを根絶するために、引き続き協力していく所存です。」
MSSの役割と脅威の性質
昨日公開された刑事告発書では、中国政府が、国家安全部（MSS）を含む複数の機関を通じて米国に対する諜報活動を行っていることが明らかにされている。MSSは、中国のために民間の情報収集を担当し、防諜、対外情報、そして政治安全保障を担う。MSSとその各部局は、中国に影響を与える可能性のある政治、経済、安全保障政策に関する情報に加え、中国にとって価値のある軍事、科学、技術情報の入手を目指している。彼らの主な任務は、米国を主な標的とする秘密裏かつ隠密な人的情報源探査作戦を実施することである。
チェンとライの両被告は、合衆国法典第18編第951条に違反した罪で起訴されている。この条項は、米国司法長官への通知なしに、米国内で外国政府の代理人として活動すること、または活動することに同意することを犯罪と定めている。有罪判決を受けた場合、被告人は最高25万ドルの罰金と最長10年の懲役刑に処される可能性がある。