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トルコ念願のユーロファイター調達へ!F-35の購入は諦めたか!?

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RAF

英国防省は7月23日、トルコとの間でユーロファイター・タイフーン戦闘機の輸出契約に関する合意に至ったと発表した。この合意は、2023年にトルコがユーロファイターの購入を求めたものの、ドイツの反対により棚上げされていた案件が、今回ドイツの承認を得て正式に締結されたものである。しかし、この合意はトルコがF-35ステルス戦闘機の調達を最終的に断念したことを示唆している可能性も指摘されている。

UK and Türkiye agree big step towards multi-billion-pound export of Typhoon fighter jets

今回の合意は、英国のジョン・ヒーリー国防長官とトルコのヤシャル・ギュレル国防大臣が、イスタンブールで開催された国際防衛産業見本市IDEFにおいて、ユーロファイター・タイフーン戦闘機の輸出契約に関する覚書に署名したことで大きく進展した。契約規模は40機、総額数十億ポンドに上る巨額契約となる見込みで、今後数週間にわたって詳細が詰められる予定だ。英国がユーロファイターの輸出受注を獲得するのは2017年以来であり、この契約は英国の航空宇宙産業にとって極めて重要である。約2万人の雇用維持が数年間にわたって保証されることで、国内経済への波及効果も期待されている。

紆余曲折を経たユーロファイターの交渉

トルコは、ロシアからS-400防空ミサイルシステムを購入したことで米国との関係が悪化し、F-35計画から除外された経緯がある。さらに、既存のF-16戦闘機のアップデートの先行きも不透明になったことから、代替案として2022年から英独伊西が共同開発したユーロファイター・タイフーンの調達を検討してきた。2023年11月には、ヤシャル・ギュレル国防大臣が国会で「Eurofighter Typhoonを40機購入したい」と明確な調達意向を表明し、トルコ側の意思が公になった。

ユーロファイター陣営は、これまでフランスのラファール戦闘機に販売面で後塵を拝していたため、このトルコからの購入意向を歓迎し、英国とスペインとの間で協議が進められた。しかし、ドイツはトルコ政府のイスラエルに対する姿勢や、シリア紛争においてクルド人部隊への攻撃に同戦闘機が使用される可能性への懸念から、一貫して輸出に反対してきた。輸出には共同開発国4か国の合意が必要だ。しかし、トルコが2024年1月にスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を承認する文書に署名したことや、欧州の安全保障状況の悪化を受けて、ドイツ国内でも容認する方向へと動きが見え始めていた。

しかし、今年4月、エルドアン大統領の政敵であるイスタンブール市長エクレム・イマモグル逮捕を受け、ドイツはこれを「トルコ民主主義に対する重大な侵害」と捉え、ユーロファイターの協議を一時停止した。ところが、今年5月にドイツで保守系連立政権が発足すると、ドイツのメルツ首相はこれまでの慎重姿勢から方針を転換。NATO防衛力の強化と自国産業維持を優先する政策へとシフトした。トルコはNATOの重要な加盟国であり、また、共同生産国である英国、イタリア、スペイン、そして関連企業がプログラム存続のために輸出を強く求めていたことから、製造ラインの維持に不可欠であるという国内産業保護の論理が働き、最終的にトルコへのユーロファイター輸出が承認される運びとなった。

F-35調達は諦めた?

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USAF

トルコはかつてF-35戦闘機の初期開発プロジェクトメンバーであり、欧州での生産を担う重要な立場にあった。しかし、2017年にNATOの仮想敵国であるロシアからS-400防空システムを購入したことで、2019年にF-35計画から除外され、購入が不可能となった。その後、ロシアによるウクライナ侵攻やS-400の運用に制限を加えることを条件にF-35購入が承認されるという報道もあり、2024年1月には米国と合意していた79機のF-16戦闘機のバージョンアップをキャンセルし、40機のF-35の購入を要求したとも報じられた。今回、ユーロファイターの購入数が40機と報じられていることから、トルコはF-35の購入を断念したのではないかという推測がされている。

この推測の背景には、トルコが開発を進めている国産第5世代ステルス戦闘機KAANの順調な進捗がある。KAANは当初、2026年の初飛行、2030年から2033年の間の就役を目指していたが、2024年2月には当初の計画よりも2年前倒しで初飛行に成功した。2028年から2029年の間には最初の機体がトルコ空軍に納入される予定で、100機以上の調達が計画されている。既に輸出契約も締結しており、インドネシアとは48機の輸出に合意している。トルコが今からF-35を発注しても、納入は2030年前後になる可能性が高い。

また、F-35は米国によって厳格に管理されており、閉鎖的なデジタルネットワークとシステムによって運用上の自由度が低い。S-400の調達問題で明らかになったように、政権によって政策が大きく変わる現在のアメリカは、安全保障上のリスクが高いとトルコは判断した可能性がある。これに対し、ユーロファイターはトルコに高い運用上の自主性をもたらす。フランスのラファールという選択肢もあったものの、対立関係にある隣国ギリシャがラファールを運用していることもあり、トルコはユーロファイターの取得に動いたのであろう。これは、単なる兵器調達にとどまらず、航空戦力の米国依存からの脱却と戦略的自律性を追求する姿勢の表れとも解釈できる。

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