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F-15D戦闘機の後部座席で着陸後に誤って射出座席を作動し、搭乗者が機外へ

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USAF

米空軍のF-15Dイーグル戦闘機の搭乗者が着陸後、滑走路をタキシング中に誤って射出座席を作動させ、機外に射出されるという事故が起きた。

2025年8月15日、マサチューセッツ州ウェストフィールドのバーンズ空軍州兵基地にて、米空軍第104戦闘航空団所属のF-15Dイーグル戦闘機が着陸後、滑走路をタキシング中に予期せぬ事態が発生した。後部座席の搭乗者が射出座席を誤って作動させ、機外に射出されるという事故が起きた。この衝撃的な瞬間を直接捉えた動画はないものの、事故後のF-15Dの様子を撮影した動画がSNS上に公開されており、その異常な状況が確認できる。

事故現場の状況と映像の分析

公開された動画では、滑走路を移動するF-15Dの操縦席後部のキャノピーが失われ、複座型である同機の後部座席にいるはずの搭乗者の姿が見えない。さらに、後部座席からは射出座席の発射後に発生する特徴的な煙の柱が立ち上り、吹き飛んだキャノピーが左翼上にあることも確認できる。その後、射出されたとみられる搭乗者の姿が捉えられている。搭乗者は、高度ゼロ、タキシング中という、いわゆる「ゼロ・ゼロ射出」の形で機体から脱出したことになる。射出座席はACES II型で、地上ゼロ高度でも作動可能。

航空管制との緊迫したやり取り

この事故の緊迫した状況は、航空管制局(ATC)との無線通信の音声記録からも明らかになっている。コールサイン「RAMBO 01」で飛行していたF-15Dのパイロットは、冷静ながらも事態の深刻さを伝える声で、後部座席のパイロットの射出を報告し、地上緊急事態を宣言した。ATCはこれを受け、直ちに滑走路を閉鎖し、緊急サービスと連携しながら、事故機に対し滑走路からの退避と停止を指示した。

「インセンティブ・フライト」の搭乗者か

事故機であるF-15Dは、当時「インセンティブ・フライト」を終えたばかりであったと報じられている。米空軍における「インセンティブ・フライト」とは、士気向上や功績表彰を目的として、パイロット以外の空軍隊員や特定の関係者(整備員、補給担当、事務職など飛行任務を支えるスタッフ、議員、友好国軍関係者、民間の支援者など)を戦闘機や輸送機などに搭乗させ、飛行体験を提供する制度である。このことから、後部座席には正規の飛行訓練を受けたパイロットではない人物が搭乗していた可能性が高い。現時点では搭乗者の身元は正式に確認されていないものの、バーンズ空軍基地の第104戦闘航空団の募集担当官であるとみられている。

第104戦闘航空団は、今回の事件とその発生状況について、公式な声明をまだ発表していない。搭乗者の容態については詳細は不明だが、命に別状はないとみられている。

過去の射出座席誤作動事例

射出座席の誤作動は、稀ではあるものの定期的に発生している。過去の事例をいくつか挙げると、その深刻さが浮き彫りになる。

  • 2019年:フランス空軍ラファール戦闘機
    民間人が飛行中に誤って射出レバーを引き、機外に射出される事故が発生。この事故では、搭乗前のパイロットと民間人とのコミュニケーション不足や、Gに耐えきれずパニックに陥った民間人がレバーを引いたことが原因とされた。本来であれば前座席のパイロットも一緒に脱出する仕組みだったが、パイロットは射出されずに緊急着陸し、機体の不具合が明るみに出た。
  • 2021年:カタール空軍向けF-15QA戦闘機
    セントルイス空港でタキシング中に搭乗員2名が誤って射出された。幸い、双方軽傷で済んだ。
  • 2024年:テキサス州シェパード空軍基地T-6A TexanII練習機
    着陸後、教官のハーネスの胸部ストラップがレバーに引っ掛かり、地上で不用意に射出座席が作動。着陸後既にシートベルトを外していたため、空中に射出された教官は残念ながら死亡した。
  • 2021年:ロシア空軍Tu-22M3爆撃機
    離陸準備をしていたロシア空軍重爆撃機航空連隊第52警備隊のTu-22M3爆撃機が、エンジン始動後の飛行前チェック中に何らかの理由で緊急脱出用の射出座席が突然作動。4人の乗員が機外に放り出された。この時、射出座席がゼロゼロ射出に対応しておらず、高度が低かったためパラシュートが開かず、乗員4人はそのまま落下し、3名が死亡するという痛ましい事故となった。

今回のF-15Dの事例は、タキシング中という特殊な状況下でのゼロ・ゼロ射出であり、大事故にならなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。しかし、これらの事例は、射出座席の安全性の確保と、搭乗者への徹底したブリーフィング、そして緊急時のプロトコルの重要性を改めて浮き彫りにしている。事故原因の究明と再発防止策の徹底が求められる。

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