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米ロ首脳会談、10点満点と評価するもロシア・ウクライナの停戦交渉の成果は確認できず

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Whitehouse

ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた米露首脳会談が、アラスカ州アンカレジのエルメンドルフ空軍基地で開催された。これは、ロシアが2022年2月にウクライナ侵攻を開始して以来、米露首脳が直接対面で会談する初めての機会となった。プーチン大統領の米国訪問は2005年9月以来10年ぶり、トランプ大統領がプーチン氏と会談するのは、自身の前政権時の2019年6月、大阪で開催されたG20サミット以来のことである。会談の主要な焦点はロシアによるウクライナ侵攻の終結であったが、具体的な成果は得られなかったと報じられている。

米国領アラスカでの会談は、トランプ大統領が笑顔でプーチン大統領を出迎え、固い握手を交わす場面から始まった。両首脳はレッドカーペットの上を歩き、特設されたステージへと向かった。エルメンドルフ空軍基地を会場としたこの首脳会談では、米軍の軍事力を誇示するような光景が繰り広げられた。基地の滑走路には、F-22とF-35の両ステルス戦闘機やAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターなどが整然と並べられ、その圧倒的な存在感を示していた。さらに、両首脳がステージに向かって歩く途中には、上空をB-2ステルス爆撃機とF-35戦闘機の編隊が飛行するというデモンストレーションが行われた。両首脳の到着と握手のタイミングに合わせて実施されたこのフライオーバーは、複数のメディアで「力の示威」として大きく報じられた。この演出がトランプ大統領の考案によるものかは定かではないが、ウクライナ侵攻によって疲弊しているロシアに対し、米国の圧倒的な軍事力を誇示し、これから始まる首脳会談に向けてプーチン大統領に心理的な圧力をかける意図があったと推測される。

10点満点と自己評価するも合意なしと明言

会談は午前11時30分頃に始まり、2時間46分間にわたって行われた。会談終了後には共同記者会見が開かれた。トランプ大統領は会談を「非常に生産的」「大きな進展」と評価し、「多くの点では合意した」「残されたのはほんの僅か」「とても良いチャンスがある」と述べた。さらに、「”まだそこには達していない”が前進に手応えがある」と強調し、会談全体を「10点満点だ」と絶賛した。ウクライナ侵攻以降、急速に悪化していた米露関係において、両国の首脳が対面で会談を行ったことは、確かに「大きな進展」と呼べるかもしれない。しかし、会談の最大の焦点であった「ロシアによるウクライナ侵攻の終結」については、具体的な成果は得られなかった。トランプ大統領は、ウクライナ戦争の終結や停戦に関する合意は一切成立していないことを明確に述べた。「合意があるまでは合意はない」と発言し、停戦合意に向けた進展がなかったことを強調した。プーチン大統領が「相互理解があった」と述べたのに対し、トランプ氏はそれを否定し、具体的な合意には至っていないと主張した。しかし、トランプ氏は「交渉は続行する意向がある」と述べ、ウクライナやNATOとの今後の調整を行う意向を表明した。

一方、プーチン大統領は会談を「建設的で相互尊重の雰囲気のもとで行われた。非常に徹底的かつ有益だった」と評価した。米露間のビジネス協力や経済関係の再構築にも強い意欲を示し、アメリカとの「実利的で丁寧な関係を取り戻す起点」になることを期待していると述べた。また、トランプ氏とは「非常に良好で信頼に基づく実務的な関係」を築けたと強調し、「合意」が成立し、それがウクライナ戦争終結への道を開く可能性があり、早期に戦争終結も可能になるとの希望を示唆した。しかし、同時に「ウクライナ戦争を長期・根本的に解決するには、全ての根本的原因を取り除く必要がある」との立場を重ねて表明し、ロシアの安全保障上の正当な懸念を無視しないよう主張した。ウクライナや欧州諸国に対しては建設的な姿勢を求め、米露間の停戦交渉の進展を妨げるような行動を避けるよう警告した。

ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州NATO諸国の首脳は、米露がウクライナと欧州が求める停戦条件を無視し、当事者であるウクライナを抜きに停戦交渉を進めることに対し、強い懸念を抱いている。停戦条件の最も重要な要素となるのは領土問題だが、ロシア側は停戦条件として、現在占領しているウクライナ東部2州と南部2州からのウクライナ軍の撤退と領土割譲を求めているとされている。しかし、ウクライナ側は、多大な犠牲を払いながら守ってきた領土を安易に譲り渡すことはできないと主張している。ゼレンスキー大統領は、今回の会談にウクライナが除外されたことを厳しく非難し、「ウクライナ抜きに進められる交渉は“死んだ決定”であり、絶対に機能しない」と強調した。和平プロセスには必ずウクライナの参加が必要であると述べ、「私たちは占領者に土地を譲渡することはない」と明言。ウクライナ憲法に基づき、いかなる形の領土譲渡にも断固反対する姿勢を示した。トランプ大統領がゼレンスキー氏の意向をどれほど踏まえて会談を行ったのかは不明だが、少なくともプーチン大統領が停戦を受け入れる条件ではなかったことは確かであろう。

会談後のFoxニュースの取材に対し、トランプ氏は「今、(停戦)実現させるのはゼレンスキー大統領次第だ。ゼレンスキー大統領、プーチン大統領、そして私の3者による会談が予定されていると思う」と述べ、次回の三者会談を示唆した。結局、停戦のボールはゼレンスキー氏に委ねられる形の発言を行った。トランプ大統領は、合意の障害となっている最終的な問題については詳細を語らず、「何が達成できるかを見極めたい」と述べるに留まった。世界の注目が集まったこの米露首脳会談は、顕著な成果は見られなかったものの、停戦に向けた重要な第一歩となる可能性を秘めている。今後の動向が注視される。

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