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UH-60ブラックホークを空飛ぶ棺桶と批判!マレーシア軍は購入契約をキャンセル

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US Army

マレーシア軍(MAF)は、スルタン・イブラヒム国王の強い批判を受け、およそ1億8,700万リンギット(約65億円)に相当するUH-60Aブラックホークヘリコプター4機の導入計画を撤回したことが報じられました。この決定は、国王が「空飛ぶ棺桶」とまで酷評した旧式機体の導入に対する異議申し立てが背景にあります。

Armed Forces cancels deal for decades-old Black Hawk helicopters after King slams ‘flying coffins’

現地メディアの18日付報道によると、マレーシア軍は最高国王の厳命に従い、UH-60Aブラックホークヘリコプター4機の購入を中止しました。これに対し、タン・スリ・モハメド・ニザム・ジャファール陸軍司令官は、今回の決定が法令に則って行われたものであり、すでに新たな調達のための入札プロセスを開始したと述べています。

ジャファール司令官は、「マレーシア軍は、30年以上前の旧型ブラックホークヘリコプターの購入に関するスルタン・イブラヒム国王陛下の勅令を常に支持し、遵守しております。我々は決して旧型ブラックホークの導入を提案することはありません。陛下の御意向は承知しており、代替機体の入札はすでに計画済みです」と強調し、既存の契約が既に解除されていることを明らかにしました。

マレーシア軍は当初、4機のUH-60Aブラックホークヘリを5年間のリース契約で導入する予定でした。しかし、これらの機体は製造から既に30年以上が経過した中古品であったため、国王はこれに強く反対し、「空飛ぶ棺桶」と批判するに至りました。国王はさらに国防省に対し、「過去の過ちを繰り返すな」と強い警告を発しました。ここでいう「過去の過ち」とは、マレーシア空軍がかつて経験した、中古機体導入における苦い教訓を指しています。

A-4 Skyhawk (Wikipedia)

過去の事例として、マレーシア空軍は1980年代に米海軍で退役した中古のA-4スカイホーク戦闘機88機を導入しました。しかし、実際に運用できたのはその半数にあたる約40機に過ぎず、稼働率は極めて低いものでした。さらに深刻な問題は、墜落事故が多発したことです。1985年から1989年にかけて10機以上、1990年から1995年にかけても10機以上が失われ、わずか10年間で就役機体の半数以上にあたる20機以上が非戦闘環境で失われるという異常事態に見舞われました。これに伴いパイロットの死亡率も非常に高く、国王が古いブラックホークを「空飛ぶ棺桶」と揶揄したのもこの経験に基づくものです。事故率の高さから、マレーシア空軍はA-4の「維持困難」を判断し、予定よりも早い1994年には全機を退役させました。墜落が多発した原因の一つには機体の老朽化が指摘されていましたが、実際には納入時に機体の検査、新しい電子配線の敷設、J65エンジンの修復、2つの追加兵器ポートの追加、アビオニクス、拡大されたキャノピー、着陸装置パラシュートの設置など、大規模な改修が行われていました。そのため、マレーシア空軍パイロットの技術不足や整備不良も原因として挙げられています。

このような経緯から、マレーシア国内には中古機体に対する強い拒否反応があり、国王はA-4の事例を引き合いに出して、「空飛ぶ棺桶」「過去の過ちを繰り返すな」と述べ、ブラックホークの購入を中止させたのです。

さらに国王は、今回の調達プロセスに元将軍が代理人として仲介し、利権に関与していること、そして軍事とは全く関係のない繊維業者がドローンを売ろうとするなど、現在の軍の調達構造における問題点を強く批判しました。これらの不適切な関与が不正やコストの膨張につながると指摘しています。

新たな入札は8月に公開される予定で、UH-60ブラックホーク自体は除外されていないものの、入札要件はこれまでとは異なり、30年を超えるような古い機体は対象外となると見られています。これにより、より透明性の高い、適切な機体の調達が期待されます。

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