MENU
カテゴリー

米陸軍、対ドローン用にハイドラ-70 ロケット弾増産へ

  • URLをコピーしました!
US Army

増大するドローン兵器の脅威に対し、アメリカ軍はハイドラ-70ロケット弾の増産と確保を計画している。この兵器は対ドローン兵器として費用対効果に優れていることが実証されているものの、現在の供給能力が需要に追いついていない状況だ。

ハイドラ-70は元々1980年代から攻撃ヘリや攻撃機に搭載される無誘導ロケット弾として配備されてきたが、L3Harris社はこれにレーザー誘導機能を追加した精密キルシステム「APKWS(Advanced Precision Kill Weapons System)」を開発。APKWSは既にドローン兵器に対する有効性を実証しており、その需要が急速に高まっている。

WAR ZONEの報道によると、ハイドラ-70自体の年間生産能力は33万発とされるが、実際の生産数はこれを大幅に下回っている。米陸軍は訓練だけでも年間約10万発のミサイルを使用しており、過去10年間で170万発以上のハイドラ-70ロケットが戦闘作戦、演習、訓練、評価に使用されたと米陸軍資材司令部のデータは示している。米軍の備蓄と輸出を合わせた年間供給数は約23万発に過ぎないと推計されており、急増する需要に供給が追いついていないのが現状だ。

多用途性と対ドローン兵器としての有効性

ハイドラ-70は安価な空対地兵器として依然として高い需要があり、ウクライナにも数万発が供与され使用されている。しかし、現在最も需要が高まっているのは安価な対ドローン兵器としての側面である。APKWSは既存のロケット弾の弾頭とモーターの間にセミアクティブ・レーザー誘導装置を追加することで精密誘導兵器化されている。射程はヘリからで最大約5km、固定翼機から発射すれば10kmを超える。もともとはヘルファイアミサイルの代替となる安価な精密誘導空対地ミサイルとして開発されたが、低速の無人機や回転翼機に対する対空兵器としても有効であることがテストで実証された。特に中東における防空迎撃作戦では大きな成果を上げ、フーシ派の無人機をAPKWSで撃墜している。

対空用には近接信管が取り付けられ、飛翔速度は1,000m/s(3,600km/h)に達し、回転翼機であれば5秒以内に撃墜可能である。最大のメリットはそのコストであり、一発当たり35,000ドルと、空対空ミサイルAIM-9 Sidewinderの1発あたりの価格50万ドルと比較して非常に安価である。

地上防空兵器への応用と将来的な展望

 © L3Harris Technologies, Inc.

L3Harris社はさらにこれを地上防空兵器化した「VAMPIERランチャー」を開発した。VAMPIERは光学・IR・レーザーを搭載したモジュールパレット式のISRミサイルランチャーシステムで、最大の特長は車両に依存しない兵器システムである点だ。荷台があれば軍の戦術車両から民間の非戦術車両まで様々な車両に搭載でき、武装化されていない車両を高度な対空車両に変えることができる。VAMPIERの取り付けは2人がかりで2時間で設置でき、運用に必要なオペレーターは1人だけだ。これはウクライナにも14基供与され、実戦でその能力を実証している。神出鬼没な無人機・ドローンにおいて、VAMPIERの柔軟性と、APKWSのコストは非常に魅力だ。

ロイター通信によれば、L3Harris社は需要増に対応するため、5億ドルを投資してアーカンソー州にあるロケットモーター製造施設を拡張する計画だ。これは大規模な固体ロケットモーターの生産を6倍に増やすための投資で、対ミサイル防衛やハイパーソニック兵器に必要なロケットを対象としつつ、ドローン対策のためのハイドラ-70の備蓄促進にも寄与すると見られている。

米陸軍は今後の需要増に対応するため、ロケット弾導入先の多角化も検討しており、複数のメーカーから70mmロケット弾の供給業者を募集する計画である。要件としては、AH-64Eアパッチ攻撃ヘリコプターのAPKWS誘導キットおよびM261 19連装ロケットポッドとの互換性に加え、最大射程は8km以上、榴弾およびフレシェット弾の訓練用弾頭との互換性が求められる。これに加え、APKWSの能力向上も検討されており、シーカーヘッドを改良し、射程距離を12kmに延長する計画が進んでいる。BAEシステムズは既にレーザーシーカーと赤外線シーカーを搭載した先進精密迎撃兵器システムII(APKWS II)誘導ロケットを開発している。これらの動きは、ドローン兵器の脅威に対する持続的な対応と、低コストで効果的な防空システムの重要性を浮き彫りにしている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!