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米国がウクライナに供与する巡航ミサイルERAMとは?停戦交渉は?

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©Anduril, Zone 5 Technologies

国防総省国防安全保障協力局(DSCA)は8月28日、北大西洋条約機構(NATO)が資金を負担する形で、ウクライナへの拡張射程攻撃弾「ERAM」の供与を国務省が承認したと発表しました。このERAMは、これまで米国がウクライナに供与した兵器の中で最長の射程を誇り、ウクライナの長距離打撃能力を飛躍的に向上させるものと期待されています。

Ukraine – Air Delivered Munitions

DSCAの発表によると、国務省はウクライナ政府への空中投射弾および関連機器の対外有償軍事援助(FMS)を承認しました。この大規模なパッケージには、最大3,350発の拡張射程攻撃弾「ERAM」と対応するGPS誘導キット(EGI)、関連部品、訓練、整備支援が含まれています。主要請負業者はZone 5 Technologies(ゾーン5テクノロジーズ)社とCoAspire(コアスパイア)社の2社です。推定総費用は8億2,500万ドルで、デンマーク、オランダ、ノルウェーからの資金と米国の対外軍事資金を使用して購入されます。納入は2025年末までに開始される見込みです。

拡張射程攻撃弾「ERAM」とは

ERAMは「Extended Range Guided Munition」の略で、直訳すると「拡張射程誘導弾」です。その名称から砲弾を連想させますが、実際には空中発射型の誘導兵器であり、いわゆる巡航ミサイルに分類されます。ERAMは、空中発射型の戦術的で拡張性に優れた安価な空対地兵器として、昨年から米空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)がウクライナ向けに開発を進めていました。最初のユニットの生産が完了したばかりであり、その全容は未だ不明な点が多く、外観も公開されていません。

アメリカメディアの報道によれば、ERAMの射程は240~450kmとされ、標準的な射程は400km前後と見込まれています。飛翔速度は亜音速で最低マッハ0.6(約760km/h)に達し、弾頭重量は約226kgです。誘導方式はGPSとINS(慣性誘導)を組み合わせたもので、CEP(円形公算誤差)10m以下の高い精度を有するとされています。また、耐ジャミング性能を持ち、GPS信号が妨害されても精度を維持できる点が特長です。空中発射型であるため、戦闘機に搭載して空中から発射されます。ウクライナに供与されているF-16戦闘機への搭載が可能であり、ウクライナ空軍の主力戦闘機であるソ連製のMig-29やSu-27でも運用可能になるとされています。

ERAMの最大の特徴

ERAMの最も際立った特徴はそのコストです。正確なコストは公開されていませんが、総費用8億2,500万ドルを3,350発で単純に割ると、一発当たり約24万6,300ドルとなります。これは、イギリスとフランスがウクライナに供与している巡航ミサイル「Storm Shadow/SCALP」(ERAMと同じ空中発射型で最大射程は若干長い550km)の一発当たり約250万ドルと比較して約10分の1の価格です。また、ウクライナへの供与が度々噂されているドイツ製の空中発射型巡航ミサイル「Taurus」(約150万ドル)や、アメリカからウクライナに供与された兵器でこれまで最も射程が長かった地上発射型の弾道ミサイル「ATACMS」(射程300km、約150万ドル)と比較しても、ERAMの圧倒的な低コストが浮き彫りになります。

JDAM-ERやHammerといった滑空誘導爆弾と比較するとERAMは高価ですが、これらの爆弾の射程は40~70km程度と短く、発射母機を敵の防空圏に晒すリスクがあります。ERAMは、より長い射程を持つことで母機の撃墜リスクを軽減しつつ、安価なスタンドオフ攻撃(敵の防空圏外からの攻撃)を可能にします。この低コストであることから量産も容易であり、2年以内に年間1,000発の量産を目指していると報じられています。

ERAM供与が持つ戦略的意味合い

ERAMの供与承認が、米国が仲介するロシアとウクライナの停戦交渉が進む中で発表されたことは、注目に値します。ERAMの射程から、ロシア領内への攻撃を容認する姿勢とも解釈される可能性があります。

しかし、現在の停戦交渉は停滞しており、このERAM供与は「米国は交渉の余地を残しつつ、ウクライナの防衛力を強化する用意がある」というバランスを示す戦略的な行動と捉えられています。ロシアは攻撃の手を緩めておらず、戦線もロシア有利な状況にあり、ウクライナ側からより大きな譲歩を引き出すために攻勢を強めているとされます。今回のERAMの供与は、そのようなロシアへの牽制も目的としているでしょう。「戦争を長引かせれば、強力な兵器がウクライナに渡る」という脅しと見ることもできます。ウクライナ側も最近、射程1,000kmに延伸した国産の巡航ミサイル「ネプチューン」や、射程3,000kmの「フラミンゴ」を発表するなど、長距離打撃能力の向上に努めています。ERAMを含め、これらの兵器の配備が進めば、ロシア領内の軍事拠点への攻撃が増加する可能性が高まります。

ERAMの供与について、現時点ではロシア側からの目立った反応は確認されていません。今後の情勢にどのような影響を与えるか、引き続き注視が必要です。

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