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軍事パレードで初披露された中国の3つの新型核兵器DF-61、JL-1、JL-3

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2025年9月3日、北京で盛大に執り行われた戦勝80周年記念軍事パレードにおいて、中国は世界の軍事専門家や各国の首脳陣の注目を一身に集める形で、陸・海・空の三軍から運用可能な3種類の新型戦略核兵器を公式に公開しました。この行動は、国際社会に対する明確な核抑止力のメッセージとして広く受け止められています。

核兵器は、その運用形態によって主に3つのタイプに分類されます。第一に、地上から発射される大陸間弾道ミサイル(ICBM)。第二に、戦略爆撃機から投下または発射される爆弾やミサイル。そして第三に、海中を航行する潜水艦から発射される潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)です。これら3つの核兵器運用能力は「核の三本柱」と称され、アメリカやロシアといった核大国は、その核抑止力を維持・強化するために、常にこれら3種類の核兵器を展開し、即応体制を整えています。今回、中国がこれらの新型兵器を大々的に披露したことは、自国の核戦力近代化と核抑止力強化への揺るぎない意思を示すものと言えるでしょう。

今回公開された新型核兵器の詳細は以下の通りです。

DF-61(東風-61) 陸上発射型大陸間弾道ミサイル (ICBM)

DF-61は、今回の軍事パレードで初めてその姿を現した新型ICBMです。パレードでは、16輪の大型道路移動式輸送起立発射装置(TEL)に搭載されたDF-61の発射装置4基が堂々と行進しました。その詳細なスペックについては依然として多くの不明点が残されていますが、3段式固体燃料ロケットを採用しており、推定射程は12,000km以上と見られています。この射程は、北京からアメリカの首都ワシントンDCまでを射程に収め、米国本土全域をカバーする能力を持つことを意味します。さらに、中国の広大な国土面積を考慮に入れると、地球のほぼ全域がその射程圏内に入ると推測されます。

DF-61は、複数個別誘導再突入体(MIRV)を搭載可能とされており、3~6発程度の核弾頭を搭載していると推測されています。特筆すべきはその即応性の高さで、短時間での発射準備が可能な固体燃料を使用しているため、数分で発射準備が完了すると言われています。これらの設計思想と能力は、アメリカのミニットマンIIIやロシアのヤルスといった世界の主要ICBMに匹敵するものとされ、DF-61が今後の中国の主力ICBMとなると見られています。

JL-1(惊雷-1) 空中発射型弾道ミサイル(ALBM)

JL-1は、中国空軍の主力爆撃機であるH-6Nから発射可能な新型の核搭載型弾道ミサイルです。このミサイルも今回のパレードで初めて公開されました。一部の専門家からは、対艦中距離弾道ミサイルDF-21(東風-21)の派生型ではないかとの指摘もあり、2018年に開発が始まったとされています。

JL-1は2段式の固体ロケットエンジンを搭載しており、推定射程は約8,000km程度と見られています。この射程は、アラスカ、インド洋、太平洋、そしてオーストラリアといった広範囲の地域を対象にできる可能性を示唆しています。弾頭には機動再突入体(MARV)を搭載していると推測されており、これにより敵のミサイル防衛網を突破する能力が高まると考えられています。

Julang-3(巨浪-3) 潜水艦発射型ICBM(SLBM)

Julang-3(JL-3)は、1960年代後半に開発されたJulang-1(JL-1)の後継であり、中国が開発した第三世代の固体燃料式潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)です。このミサイルは、中国海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦である晋級潜水艦(094型 SSBN)に既に搭載されているとされ、さらに現在開発中の次世代唐級潜水艦(096型 SSBN)にも搭載されることが計画されています。

JL-3の推定射程は9,000kmから10,000km超とされており、場合によっては14,000kmに達するとの情報も存在します。前身であるJL-2の射程約7,200kmと比較して射程が大幅に延伸されたことにより、中国近海にある「安全なバスチオン(安全水域)」からアメリカ本土への到達が可能となりました。これは、中国の核戦力における「第二打撃能力(セカンドストライク)」を大幅に強化することを意味します。セカンドストライク能力とは、敵の先制核攻撃を受けた後でも、残存する核戦力によって反撃を行う能力のことであり、核抑止力の根幹をなす要素です。JL-3には最大3弾頭のMIRVが搭載されると推測されており、これにより一つのミサイルで複数の目標を攻撃する能力を持つことになります。

このように、今回の軍事パレードで、地上発射型のICBMであるDF-61、空中発射型のALBMであるJL-1、そして海上発射型であるSLBMのJL-3という3つの新生代の核攻撃能力が公式に示されました。これにより、中国は新核戦力の「核の三本柱」を国内外に明確に提示した形となり、その核抑止力の信頼性と即応性を大きく向上させたものと評価されています。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告によると、現在の中国の核弾頭の数は約600発と推定されています。これは、ロシアの約5,459発やアメリカの約5,177発と比較すると依然として大きく劣る数字ではあります。しかし、中国は毎年約100発という驚異的なペースで核兵器を増強しており、この傾向が続けば2030年には1,000発を超える核弾頭を保有すると見られています。中には、中国が2035年までに戦略核兵器2,000発、非戦略核兵器2,500発を保有し、世界最大の核保有国になるという予測も存在します。こうした状況は、中国の核戦力増強が国際社会の安定に与える影響が極めて大きく、予断を許さない状況にあることを示しています。今後、中国の核戦略がどのように進化し、それが国際的な軍事バランスにどのような変化をもたらすのか、引き続き注視していく必要があります。

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