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ロシアの石油精製能力が20%低下!戦争継続に影響も

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ウクライナ軍によるロシアの石油精製施設への攻撃は、ロシア経済と国民生活に深刻な影響を及ぼし始めている。報道によれば、これらの攻撃によりロシアの石油精製能力は一時的に最大20%近く低下し、一部地域ではガソリン不足と価格高騰が発生、ガソリンスタンドには長蛇の列が見られるようになった。これは、戦争が長期化する中でロシアが直面する新たな戦線とも言えるだろう。

2025年9月18日と24日にウクライナの無人機部隊が、約1,500km離れたロシア中部バシコルトスタン共和国にある主要石油化学施設に対し、1週間で2度の攻撃を成功させた。標的となったサラヴァト製油所は、ロシア国内で10番目に大きな製油所であり、年間1,000万トンもの石油を生産し、150種類以上の石油製品を製造する極めて重要な施設である。

この攻撃では、原油の水分・塩分除去ユニットが狙われたとされている。このユニットは原油の前処理(精製前処理)において不可欠であり、これが機能不全に陥れば、その後の精製工程全体に影響を及ぼし、事実上、精製・製造が停止に追い込まれる可能性がある。被害の全容はまだ不明だが、このユニットへの攻撃は、ロシアの精製能力に壊滅的な打撃を与えることを目的とした戦略的なものであったと考えられる。

ロシアの精製能力への打撃と国内供給への影響

2025年8月のロイター通信の報道によると、ウクライナによるドローンやミサイル攻撃により、ロシア国内の約10基の石油精製所が打撃を受け、その結果、ロシアの石油精製能力の約17%が「機能停止」または「部分停止」の状態にあるという。こうした一連の攻撃とそれに伴う精製所の停止・稼働率低下は、ロシア国内におけるガソリン、ディーゼル、灯油などの国内供給網を大きく混乱させている。特に、被災した精製所に依存していたバシコルトスタン共和国、黒海・カスピ海沿岸地域、そしてクリミア半島などでは燃料不足が深刻化している。2025年9月時点では、クリミアや南部地域で一部のガソリン銘柄が入手困難になっているとの報道もあり、市民生活に直接的な影響が出始めている。

燃料供給の不足は、国内の輸送コストを上昇させ、ひいては物価高騰を招く。ロシア政府は価格統制や補助金で対応を図っているが、長期的に見ればこれは財政負担の増大を意味する。ウクライナとの戦争によって戦費が既に増大している中、こうした新たな負担はロシア経済にとって大きな重荷となるだろう。

外貨収入の減少と国際関係への影響

原油の生産と輸出自体には現時点では大きな影響は出ていないものの、精製能力の減少は、ガソリン、ディーゼル、航空燃料といった付加価値の高い「石油製品」の輸出を制限している。これにより、今後、ロシアの外貨収入はさらに減少し、戦費や社会保障費といった国家予算の重要な項目に影響を与える可能性がある。また、輸出量が減少すれば、北朝鮮など同盟関係にある国々への石油製品の供給にも影響が生じ、国際関係にも波紋を広げる可能性がある。

軍への影響

現時点では、ロシア軍への燃料供給への影響は軽微であるとされている。ロシアは膨大な燃料を備蓄していた上に、戦時下においては民間よりも軍への燃料供給を優先しているためだ。しかし、3年にも及ぶ戦争でその備蓄も大幅に減少していると見られる。燃料は優先的に軍に供給されるとはいえ、ウクライナに近い精製所の多くが攻撃を受けているため、遠方の製油所から前線まで燃料を運搬する必要が生じ、鉄道、タンカー、トラック輸送の負担が増加している。今回、さらに遠方に位置するサラヴァト製油所が攻撃されたことで、この輸送負担は一層増大することになるだろう。軍への燃料供給が優先される一方で、その分、民間への供給はさらに圧迫されることになる。厳しい冬の到来を控え、民間への燃料供給不足と価格高騰は、ロシア国民の不満を増幅させる可能性が高い。

ロシア経済の低迷

このような状況の中、ドナルド・トランプ大統領がロシア・ウクライナ戦争における方針を転換し、9月23日に「ウクライナはロシアから奪われた領土を取り戻すべきであり、その可能性は十分にある」と発言したことは注目に値する。彼はその理由として、ロシア国内の経済状況の悪化を挙げている。トランプ大統領は「モスクワをはじめとするロシア各地の住民が、給油のための長蛇の列や、戦時経済が引き起こす様々な問題、そして国家予算の大半が戦争に費やされている現実を知れば、ウクライナが領土を取り戻す力を持ち、さらに偉業を成し遂げる可能性もある」と述べた。そして、「プーチン大統領とロシアは深刻な経済問題を抱えており、今こそウクライナが行動を起こす絶好の機会だ」と強調した。

ロシア経済は、2023年の連邦財政歳入の約3割を石油・天然ガス収入が占めるなど、資源輸出に大きく依存している。しかし、原油価格の低迷、エネルギー収入の減少、そして戦費の拡大が重なり、ロシアの2025年の財政赤字見通しはGDP比1.7%に悪化するとされている。戦争特需で2024年に4.1%だったGDP成長率も、2025年には0.9%にまで低下する見込みであり、これはロシアの戦争経済が景気後退に陥ったことを示唆している。

精製能力の低下は、「直接的に軍を止める」というよりも、「民間・経済を圧迫し、軍需優先の構造をさらに強める」ことで、間接的に戦争継続を困難にする効果が強いとされる。つまり、ウクライナ軍の石油精製施設への攻撃は、ロシアの戦争遂行能力を根本から揺るがす長期的な戦略の一環であり、今後もその影響は拡大していく可能性が高い。

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