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ヘグセス戦争長官「肥満兵士は要らん」米軍の肥満体形兵士の割合は?

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DoD US

ヘグセス戦争長官がクアンティコで開催された将官級・上級指揮官会合で、「肥満の将官・将校・兵士を軍内に残すことは許されない」と演説し、男性兵士への体力テスト復活など、肥満兵士の排除を強く訴えたことが大きな波紋を広げている。この発言は、今後の軍の組織運営に多大な影響を与えることが予想される。

緊急会議での長官の強いメッセージ

9月30日、ヘグセス戦争長官は世界中に展開する米軍の数百人の将官クラスを集めた緊急会議を招集した。長官は会議で、「ペンタゴンの廊下で肥満の将軍や提督を見るのは全く容認できない。プロ意識に欠ける体形が許された時代は終わった。肥満の将官・将校・兵士を軍内に残すことは許されない」と厳しく断言した。これに伴い、体重・身体組成・フィットネス基準の見直しを命じ、特に男性兵士に対しては体力テストを復活させる意向を表明した。さらに、「もし私が今日話している言葉に落胆しているのであれば、名誉ある行いとして辞任すべきだ」とまで述べ、自身の意向に従えない者には軍からの除隊を促すという、非常に強い姿勢を示した。

米軍兵士の肥満率の実態

長官の発言の背景には、米軍兵士の肥満率の増加という現実がある。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の調査によれば、活動中の兵士の肥満率は2015年で約16.3%、2019年で約17.9%、2020年時点では約19%と、着実に増加傾向にある。これは現役兵の約2割弱が肥満に該当する計算だ。さらに、BMI(体格指数)基準で見た場合、約7割の兵士が「過体重以上または肥満」に分類されるという衝撃的なデータもある。国立衛生研究所の基準では、BMIが25から30の人は臨床的に過体重、30を超える人は肥満とみなされる。ちなみに、アメリカ全体では成人の35%以上が肥満(BMI30以上)という「肥満大国」であり、軍もその社会背景を反映していると言える。

ただし、BMI基準の限界も指摘されている。兵士という職業柄、フィジカルを鍛えている者は多く、筋肉量が多い場合でもBMIが高く算出され、不当に肥満と判断されるケースがある。一般的にBMIは筋肉量を考慮しないため、実際に肥満体な兵士はCDCのデータよりも少ない可能性も考えられる。

長官が掲げる新方針と課題

ヘグセス長官は「体力基準の強化」「訓練制度の見直し」「体組成測定の厳格化」を表明したが、肥満体の兵士の具体的な「除外」については言及を避けている。しかし、長官が特に将官クラスに言及したことは重要だ。将官は40代後半から60代に集中しており、年齢とともに体重が増加する傾向は避けられない。高位に昇進すると、デスクワークや会議、戦略立案が中心となり、若い頃のように日常的に体を酷使する機会は減少するため、体形が緩むのはある程度自然なこととも言える。また、軍務も多忙を極めるため、フィットネスに割ける時間も限られるのが実情である。

アメリカ社会では、自己管理能力の象徴として体形が重視される傾向が強い。「自身の体形や健康を自己管理できない者が組織や部下を管理できるはずがない」という持論のもと、肥満体の人が昇進できないケースは少なくない。今回のヘグセス長官の発言は、肥満体形を理由に軍を強制的に除隊させることはできないものの、昇進が阻まれる可能性を強く示唆している。

「髭の禁止」が意味するもの

肥満兵士排除と並行して、ヘグセス長官は「ひげを生やすような連中もいらない」と述べ、髭の禁止も表明した。米軍ではこれまで、宗教的配慮から、イスラム教やシーク教など一部の宗教において髭を容認してきた。これらは新兵募集と多様性推進の一環として認められてきた措置だが、長官の発言により、これらの容認も撤廃される可能性が高い。

この方針変更は、特に中東に派遣されている部隊に大きな影響を与えるだろう。中東基地の将官は現地のリーダーと交渉する機会が多く、髭がないと軽んじられる可能性があるため、現地での慣習に合わせて髭を生やすケースがあった。また、特殊部隊も現地に溶け込んだり、訓練や行動を共にするために髭を生やすことが少なくなかった。任務遂行に支障が出るこれらのケースについては、今後も認められる可能性が高いが、基本方針としては髭の禁止が進められる見込みだ。

多様性政策への逆風

今回のヘグセス長官の発言は、トランプ政権がバイデン政権で進められた「多様性」政策を批判する流れと軌を一にするものだ。トランプ政権は、多様性が実力以上の評価を生み、社会的不公正を生んだとして、黒人や女性司令官を更迭するなどの動きを見せてきた。

肥満兵士の排除と髭の禁止は、米軍がこれまで推進してきた多様性、特に人種や宗教、性別、身体的特徴といった広範な意味での多様性への逆行を意味する可能性がある。これらの新方針が、今後の米軍の士気、新兵募集、そして国際的なイメージにどのような影響を与えるのか、注視される。軍の規律と効率性を追求する姿勢は理解できるものの、それが多様性という現代社会の重要な価値観とどのように両立していくのか、難しい舵取りが求められている。

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