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米陸軍、次世代グレネードランチャー(PGS)開発にFNアメリカを選定

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©FN America,LLC

米陸軍が現在、分隊レベルの火力を飛躍的に向上させることを目的とした次世代兵器システム「精密グレネード兵システム(Precision Grenadier System:PGS)」の選定を進める中、FN America, LLCは、PGSプロジェクトのプロトタイプ開発契約を、200万ドル相当の「プロトタイプ プロジェクト機会通知(PPON)」として獲得したことを10月1日に発表しました。この契約は、FN Americaが提案する30mm多目的戦術グレネードランチャー「MTL-30」のさらなる開発を可能にし、従来のグレネードランチャーの能力を大幅に上回る、高い殺傷力と精度を実現する精密交戦システムとして期待されています。

FN WINS U.S. ARMY DEVELOPMENT CONTRACT FOR THE PRECISION GRENADIER SYSTEM

PGS計画の背景と目的

M320グレネードランチャー(USMC)

従来の40x46mm(M203/M320)グレネードランチャーは、低速の放物線弾道を描くため、長距離での直接命中や高精度な動的目標への対応には限界がありました。この課題を克服し、現代戦における多様な脅威に対応するため、米陸軍はPGS計画を推進しています。PGSは、兵士が携行可能な肩撃ち式、半自動、マガジン給弾式の統合型兵装システム(武器、弾薬、射撃管制装置を含む)として構想されており、35mという近距離から500mを超える遠距離の目標に対して、より迅速かつ正確な交戦を可能にする平坦な弾道を実現することを目標としています。

このシステムは、長距離における弾丸の飛行時間を短縮し、プログラム可能なエアバースト弾(HEAB)や近接起爆型(proximity)弾といった高機能弾薬の使用を想定しています。これにより、従来のグレネードランチャーでは対処が困難であった、遮蔽物に隠れた人員目標や、近距離の無人航空システム(UAS)目標を破壊することが可能となり、分隊レベルでの戦術的選択肢を大きく広げることが期待されています。

FN Americaの「MTL-30」

©FN America,LLC

FN Americaがサウスカロライナ州の工場で開発を進める「MTL-30」は、PGSの候補として開発されました。FN社によれば、MTL-30は兵士が携行可能な半自動式、中速、平坦弾道のグレネードランチャーであり、戦闘員は既存の技術よりも効果的なペイロードで、遠距離の標的への攻撃が可能になります。徹底的な試験を通じて、国防総省の主要性能基準を満たし、求められる特性を兼ね備えているとされています。また、最先端の製造技術により、量産可能で、兵站支援も容易であるため、プログラム全体の費用対効果も高いものとなる見込みです。

FN MTL-30は、以下の特徴を備えています。

  • 弾薬: 30mm中速グレネード弾を使用。
  • 装弾数: 3発または5発装填可能な着脱式ボックスマガジン。
  • サイズ・重量: 全長890mm、全高216mm、重量わずか4.5kg強と、従来のオプションよりも軽量で合理化されています。
  • 操作性: ボルトキャッチ、マガジンリリース、セーフティセレクターはすべて両手利きに対応。M4スタイルの伸縮式ストックとモジュラー式チークライザーを装備。M4スタイルの操作、グリップ、ストックを採用することで、兵士が使い慣れたフットプリントを提供し、ユーザーフレンドリーな設計となっています。
  • 拡張性: モジュラーレールシステムにより、視覚増強システム(VAS)などのデバイスを装着するための連続トップレールと、MIL-STDピカティニーレールを備えたサイドM-LOKスロットを装備。
  • 射撃性能: 反動の少ないソフトシューティングランチャーを備え、非常に制御性の高いシステムから効果的なペイロードで迅速な標的への攻撃を可能にします。
  • メンテナンス性: モジュラーシステムはユーザーレベルでメンテナンス可能であり、既存のコンポーネントとの部品の共通性も高くなっています。

これらの特徴により、MTL-30は兵士にとって、より軽量で、操作しやすく、効果的なシステムとなることが期待されています。

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PGS計画においては、FN AmericaのMTL-30以外にも、いくつかの候補が検討されています。今年5月に行われたアメリカ陸軍が主催するxTech Soldier Lethalityコンペティションでは、Barrett Firearms社とMARS Inc.が共同開発する「30mm Support Rifle System (SSRS)」がMTL-30に勝利し、優勝しました。しかし、現時点では、PGSのPPON契約はMTL-30にのみ授与されており、今後の開発と評価を通じて、最終的な選定がなされるものと見られます。FN AmericaのMTL-30は、米陸軍の将来の戦闘能力を大きく変革する可能性を秘めた次世代兵器システムとして、その開発動向が注目されています。

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