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日本も射程!?中国の低コスト自爆ドローン「飛龍300D」

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中国の国営軍需企業である中国北方工業公司(NORINCO)が開発した自爆ドローン「飛龍300D(Feilong-300D)」は、その特性と潜在的な脅威から国際社会、特に周辺国からの警戒を急速に高めています。このドローンは、ロシア軍がウクライナ侵攻で大量投入し、その効果を実証したイラン製Shahed-136(ロシア名Geran-2)に外観が酷似しているだけでなく、低コストかつ長距離を飛行できる自爆ドローンとしての運用が懸念されています。具体的には、台湾海峡、東シナ海、南シナ海といった海上を横断する低コスト攻撃兵器として、地域の安全保障環境に深刻な影響を与える可能性があります。

飛龍300Dの設計思想と特徴

NORINCOが公開した「飛龍300D」は、その廉価性と大量運用を前提とした設計が最大の特徴です。長距離攻撃や「スウォーム戦術」に特化した兵器として位置づけられており、これは現代の紛争における新たな脅威となりつつあるものです。報道によれば、このドローンは偵察・監視から最終的な体当たり攻撃までを一貫して行えるように設計されています。中国メディアの報道によると、「飛龍300D」は昨年の中国の航空ショー「珠海航空ショー」で初めてその姿を現し、最近になってその一部スペックが明らかになりました。特に注目すべきは、1機あたりの製造コストが約1万ドルと非常に低廉である点です。機体は短い胴体、大きなデルタ翼、後部にはプッシャープロペラを搭載し、標準的なガソリンで駆動する活塞エンジンを使用しています。この設計思想は、「単純で信頼性が高く、安価に量産可能」であることを追求した結果と報じられています。航続距離、最高速度、弾頭重量については公式発表はありませんが、イランのShahed-136との酷似性から同等のスペックを持つと推測されています。

Shahed-136/Geran-2

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飛龍300Dの脅威を理解する上で、その設計のベースとなっていると見られるイランのShahed-136、およびそのロシア版であるGeran-2の性能と運用実績を考察することは不可欠です。Shahed-136は、イランが開発した長距離自爆無人機で、イエメン紛争やイスラエルへの攻撃に実際に使用されてきた実績があります。機体重量は約200kg、標準的な弾頭は30~50kg級、速度は150~200km/h程度、そして航続距離は2000km以上とされています。GPSなどの全地球測位衛星システム誘導により自律飛行が可能です。

ロシアはイランからShahed-136のライセンス供与と技術協力を受け、ロシア名「Geran-2」として2022年からこれまで数万機を生産し、ウクライナ侵攻に大量投入してきました。その長距離特性を活かし、ロシア領内から発進させ、ウクライナの広域を攻撃しています。ロシアは実戦で得た経験を基にさらに独自改良を進めており、迎撃を避けるための夜間塗装やステルス装甲、攻撃効果を高める破片弾頭、焼夷弾頭、熱圧弾頭など複数の弾頭タイプ、対電子戦能力、そしてリアルタイム映像送信を可能にする通信回線を持つ機種へと発展させていると報告されています。

Shahed/Geranは、これまでに数万機が実戦に投入されており、その運用から得られた戦術的ノウハウが蓄積され、実戦に基づいた改良が重ねられています。飛龍300Dは新規開発のドローンではありますが、中国と友好的なイランとロシアからの技術協力を得ているとすれば、実戦で培われた機能が初期段階から組み込まれている可能性があります。これは、飛龍300Dが単なる低コストドローンに留まらず、高度な戦術的価値を持つ可能性を示唆しています。

飛龍300Dの脅威

もし飛龍300DがShahed/Geranと同等のスペックを持つとすれば、その射程は上海から台湾全域をカバーするだけでなく、日本の本州のほぼ全域にまで及ぶことになります。これは、日本の防衛戦略に重大な影響を与える可能性を秘めています。

コストと大量投入による防空飽和攻撃

1万ドルという製造コストは、従来のミサイルやロケットの100分の1以下であり、これにより中国は飛龍300Dの大量生産と大量投入が可能になります。実際にロシアは月産2500機以上を生産し、ウクライナの防空処理能力を上回る数のドローン攻撃を行い、ウクライナの対空資源を消耗させ、大きな打撃を与えています。中国が同様の戦略を採用した場合、周辺国の防空システムを飽和させ、その対処能力を上回る数の攻撃を仕掛けることで、防衛側に多大なコストと人的資源の消耗を強いることが可能になります。

模擬演習と実証された潜在能力:

中国の模擬演習では、飛龍300Dが1,000kmを飛行し、敵の防空システムを回避した上で標的基地を攻撃することに成功したと報じられており、その潜在的な脅威が浮き彫りになっています。これは、低コストでありながら高度な攻撃能力を持つドローンが、既存の防空網を突破し得ることを示唆しています。

中国の技術的優位性と機能拡張の可能性

電子機能やAI技術の分野では、中国はイランやロシアよりも格段に進んでおり、この技術的優位性が飛龍300DをShahed/Geranよりもさらに強力な兵器にする恐れがあります。例えば、より高度な航法システム、精密な標的認識能力、ジャミング耐性、群制御による連携攻撃などが考えられます。さらに、飛龍300Dは戦闘機や地上配備型ミサイルシステムと連携して運用できるという報道もあり、その運用範囲と効果は一層拡大する可能性があります。機能追加によってコストが上昇したとしても、依然として長距離誘導兵器としては極めて安価です。

「飛龍300D」の登場は、現代の戦争における兵器のパラダイムシフトを示唆しています。低コストで量産可能な自爆ドローンが、従来の高価な精密誘導兵器と同様、あるいはそれ以上の戦略的価値を持つ時代が到来しつつあり、これに対する効果的な抑止力と防衛策の構築が喫緊の課題となっています。

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