

トランプ大統領は、第一次政権時から一貫して「自分は新たな戦争を始めなかった大統領だ」という自己規定を繰り返し、これを外交・安全保障政策における最大の功績の一つとして主張してきた。しかし、2025年1月20日に発足した第2次トランプ政権の1年間の軍事行動を詳細に検証すると、その主張と実際の行動との間には、無視できないほどの大きな乖離、すなわち「言行不一致」が存在することが浮き彫りになりつつある。
米国の国防総省(DoD)のブリーフィング記録、米中央軍(CENTCOM)、アフリカ軍(AFRICOM)など各地域統合軍の公式発表、そして『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』といった主要米メディアの綿密な報道を総合的に分析すると、2025年の1年間、米軍は地球上の複数の地域、特に中東、アフリカの不安定地域、カリブ海、そして南米に至るまで、攻撃的作戦を顕著に増加させている。これには、大規模な空爆、精密誘導兵器である巡航ミサイル攻撃、無人航空機(UAV)による限定的攻撃、さらには海上での致死性武力行使(Lethal Maritime Engagement)が含まれており、多くのメディアは「トランプ第2次政権下で米軍の攻撃的・介入的作戦が質・量ともに前例のない増加を示した1年」と総括している。
政権発足直後から激化した対テロ攻撃の「恒常化」
第2次政権が始まって間もない2025年2月1日、最初の軍事行動がソマリアで実行された。これは、米軍がイスラム国(IS)系の過激派組織アル・シャバブの重要拠点を標的とした空爆であり、米軍当局は「米国と同盟国に対する差し迫った脅威を排除するための自衛的措置」であると説明した。しかし、この作戦は単発で終わることなく、年内を通じてソマリアや周辺国において、無人機や特殊部隊による限定的な対テロ作戦として継続的に実施される、いわば「恒常的紛争」の様相を呈した。
さらに3月13日には、イラク西部アンバール州において、イスラム国の幹部アブダラ・マッキ・ムスリフ・アル=リファイを標的とした精密攻撃が成功したと発表された。これはトランプ政権が第一次政権から継続して掲げる「指導部の斬首(Decapitation)によるテロ組織弱体化」戦略の象徴的事例として大々的に喧伝されたが、同時に、イラク主権国家内での継続的な軍事行動の正当性について、国際的な議論を呼んだ。
イエメン・イランへの直接介入
2025年3月中旬から5月初旬にかけて、中東における緊張は一気に最高潮に達した。米軍は、イランが支援するイエメンの武装勢力フーシ派に対し、大規模な報復攻撃を実施した。紅海およびアデン湾における国際商船へのフーシ派による相次ぐ攻撃を理由に、米海軍の艦船や原子力潜水艦から発射された巡航ミサイル、そして艦載機による航空打撃がフーシ派のレーダーサイト、ミサイル発射施設、無人機(ドローン)貯蔵施設に対して加えられた。この軍事介入は、単なる「航行の自由作戦」や「限定的抑止」を超えた、事実上の地域紛争への直接的な参加であると評価された。最終的にはオマーン政府の仲介努力によって停戦合意に至ったものの、米国の軍事行動が地域の緊張を一時的に急激に高めた事実は、外交的コストとして重く残った。
そして、事態は6月22日に新たな、そしてより危険な段階へと突入する。米軍は、イスラエルとの綿密な協調体制の下、「ミッドナイト・ハンマー作戦」(Operation Midnight Hammer)と名付けた攻撃を敢行し、イラン国内の複数の核関連施設を標的とした。長距離ステルス戦略爆撃機B-2と、潜水艦発射型巡航ミサイル(SLCM)を組み合わせたこの攻撃は、イランの主権を著しく侵害するものであった。トランプ大統領は直後に声明を発表し、「イランの核能力を壊滅的に破壊し、世界に対する脅威を排除した」と成果を強調したが、イラン側はこれを否定し、国際社会では主権侵害と国際法違反を指摘する声が相次ぎ、米国の外交的孤立を深める結果となった。
「麻薬戦争」の名の下でのカリブ海での海上攻撃
2025年後半、米軍の活動は伝統的な対テロ・対国家抑止の範疇にとどまらず、「麻薬対策」という新たな名目を掲げてその活動範囲を拡大させた。9月以降、米南方軍(SOUTHCOM)主導のもと、カリブ海および太平洋東部の公海上で、大規模な麻薬密輸に関与すると「特定された」船舶に対し、海上阻止攻撃(Lethal Maritime Interdiction)が頻繁に実施されるようになった。米メディアによる統計的な集計によれば、年末までにこの一連の作戦で100人以上の「密輸関係者」が死亡したとされており、人道的な懸念や、国際法上の「自衛」の範囲を超える武力行使ではないかという法的議論を呼んだ。
さらに重大な問題は、12月に表面化した。中央情報局(CIA)が主導し、米軍の支援を受けた無人機攻撃が、ベネズエラ国内の麻薬関連施設に対して行われたとの報道が流れたのだ。米国防総省は公式には沈黙を守っているものの、事実であれば、これは主権国家の領土に対する秘密裏の武力行使という、国際関係における重大な規範違反を意味する。ベネズエラ政府は強く非難し、米国の「覇権主義的介入」の証拠だと主張した。
報復の連鎖と「戦争ではない」という危うい定義
年末にかけて、報復の連鎖が中東とアフリカで発生した。12月19日、シリア中部の米軍駐留基地が攻撃され、米兵2名と現地人通訳1名が殺害されるという事件が起きた。これに対し米軍は即座に、関与した武装勢力の拠点に対し、空爆と精密誘導砲を含む地上火力支援を組み合わせた大規模な報復攻撃を実施した。また、クリスマスの日である12月25日には、アフリカのナイジェリア北部において、イスラム国西アフリカ州(ISWAP)を標的とする巡航ミサイル攻撃が敢行された。
トランプ大統領および政権の主要閣僚は、これらの軍事行動を総じて「戦争(War)ではない」「議会による宣戦布告を必要としない限定的軍事行動」「米国とその国益を防衛するための先制措置」として位置づけ、あくまで「戦争を始めていない」という主張を維持している。しかしながら、世界各地の複数地域で、継続的かつ計画的に武力を行使し、国家インフラや武装組織の幹部を攻撃し、多くの死傷者を出している現実は、「戦争をしていない」という言葉の定義そのものに対する根本的な問いを突きつける。多くの軍事・国際法専門家は、2025年を「米軍の海外における攻撃的作戦が、地理的範囲、頻度、武力行使のレベルにおいて、第一次政権はおろか、過去数十年と比較しても量・質ともに増加した年」と総括している。議会による十分な統制が働いていない現状、そしてこれらの軍事行動の法的根拠(AUMF: 武力行使容認決議の適用範囲)の曖昧さが、2026年以降の米国内外における最大の争点となることは避けられない。
「戦争をしなかった大統領」というトランプ氏の強固な自己像と、実際に世界各地で積み重ねられた致死的な軍事行動。この深刻な乖離は、今後、米国の民主主義と国際的な法の支配にとって、より厳しく、そして徹底的に検証されることになりそうだ。
