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F-35C艦載機が迎撃!米空母に接近したイラン無人機の狙い

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US Navy

2026年2月3日、アラビア海上で発生した米海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン(CVN-72)」へのイラン製無人機(ドローン)接近事案と、それに対する米海軍F-35C戦闘機による迎撃・撃墜は、中東における米イラン間の軍事的な緊張が新たな局面に入ったことを示す象徴的な出来事として国際的な注目を集めている。米中央軍(CENTCOM)は、この措置を「意図不明かつ攻撃的な行動を示した無人機に対する自衛措置」と説明し、米側に人的・物的被害はなかったと発表した。

米軍の発表によれば、問題の無人機はアラビア海上空で、エイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群(Carrier Strike Group: CSG)に危険なほど接近した。米側は無線による警告や飛行経路変更の要求を行ったものの、無人機はこれらに一切応じなかったとされる。具体的な飛行経路、高度、速度などの詳細は公表されていないものの、米軍はこれを「艦隊防衛に対する潜在的な脅威」と判断。空母から発進した最新鋭のステルス戦闘機F-35Cが迎撃任務にあたり、無人機を撃墜した。注目すべきは、迎撃手段として艦載防空ミサイルではなく、艦載機であるF-35Cが用いられた点である。これは、空母防衛ドクトリンの標準的な手順に沿った対応であり、脅威をできる限り空母から遠い空域で排除し、二次攻撃など万一の被害を避けるための選択である。昨年4月には空母「ハリー・S・トルーマン」がイエメンのフーシ派ドローン・ミサイルに急接近された際、回避行動で急旋回した結果、F/A-18Eスーパーホーネットが甲板から落下するという事故が発生しており、遠距離での対処の重要性が再認識されている。実際、撃墜から数時間後にはホルムズ海峡で、イラン革命防衛隊(IRGC)の部隊が米船籍のタンカーを妨害する事案が発生しており、単独の作戦では無かった事が浮き彫りになっている。

F-35Cによる迎撃が持つ戦略的意味

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今回の迎撃にF-35Cが使用されたことは、単なるドローン撃墜という事実以上の戦略的な意味を持つ。F-35Cは、米海軍が運用する艦載型ステルス戦闘機であり、従来のF/A-18E/Fと比べ、その圧倒的なセンサー融合能力とネットワーク能力によって、広範囲の監視と精密な迎撃を可能にする。無人機の場合、複数機によるスォーム攻撃の可能性もある。この事案は、「空母打撃群がどの距離で脅威を察知し、どの戦力を用いて対処する能力があるか」を試す機会になり、同時に米側がその能力を誇示する機会ともなった。米側は、高性能なステルス機を使用することで、空母打撃群の防衛能力が依然として極めて高いことを示した。一方で、米軍は過度なエスカレーションを避けるため、無人機の運用拠点やイラン領内への反撃は一切行わなかった。「必要最小限の軍事力行使」に留めたF-35Cによる限定的な迎撃は、「即応性」と「自制」を両立させ、全面衝突を回避しようとする米国の慎重な姿勢を反映している。

イランが使用した無人機Shahed-139

米軍が特定した今回接近した無人機は、イラン製の「Shahed-139」とされる。これは、アメリカのMQ-1プレデターに似た外観を持つ中高度長時間滞空型 (MALE) 無人航空機であり、後部搭載の推進プロペラと長時間滞空型の偵察・攻撃任務に最適化された直線翼が特徴だ。武装の搭載可否は不明だが、その主な任務は空中情報監視偵察(ISR: Intelligence, Surveillance, Reconnaissance)にあると見られている。

今回の無人機接近は、即座の攻撃を目的としたものではない可能性が高い。イランメディアはこの件について「 イランのドローンが国際水域で監視任務を完了した」と報道している。これは、イランが過去にも繰り返してきた、米艦艇や米軍機に対する無人機や高速艇を用いた「グレーゾーン行動」の一種と位置付けられる。これらの行動は、相手の反応速度、防衛手順、指揮統制能力といった機密性の高い軍事情報を探ることを主な目的としている。特に無人機は、撃墜されても人的損失が発生しないため、イラン側にとってリスクを極小化しつつ、米軍の防衛能力と警戒態勢を試す上で極めて有効な手段となる。今回も、米軍の艦載機がどのタイミング(距離)で発進し、どのような迎撃プロファイル(戦術)を取るのかを詳細に観測する目的があった可能性は否定できない。

この事件が発生した背景には、中東地域における米国の軍事的関与の再強化がある。イラン核問題を巡る外交圧力、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派といった親イラン武装勢力による活動の活発化、そして世界の石油輸送の要衝である紅海やホルムズ海峡を含む海上交通路の安全確保といった複数の要因が重なり、米空母の展開自体が地域に対する強い政治的・軍事的メッセージとなっていた。イラン側にとって、米空母への無人機接近は、「米軍のプレゼンスを黙認していない」という、国内および地域に対する強い政治的アピールとなる。一方、米国側にとっては、「挑発には即応するが、全面衝突は避ける」という、極めてデリケートなバランス感覚が試される局面となった。

今回の事案は、今後の中東情勢において無人機が果たす役割の大きさを改めて浮き彫りにした。空母打撃群は引き続き圧倒的な戦力投射能力を持つものの、低コストで大量投入が可能な無人機による接近、監視、嫌がらせといった「常態的な脅威」への対応は避けられなくなると見られる。その結果、F-35のような高性能なステルス戦闘機による常時警戒態勢の維持や、高度な電子戦能力、対ドローン能力のさらなる強化が急務となる可能性が高い。また、こうした迎撃事案が繰り返されることで、単純な誤認や、偶発的な判断ミスによる軍事衝突、すなわちエスカレーションのリスクが高まるという懸念も増大している。米国とイランは緊張が高まる中、互いに「一線を越えない」よう慎重に行動しているが、両者の間の軍事的均衡は常に不安定な状態にある。

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