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日本、Wave Glider SV6購入、無人化進む海洋監視

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©Liquid Robotics

日本が、米国製の無人海上システム「Wave Glider SV6」を導入する方針であることが明らかになりました。これは、長期間にわたり自律的に海上を航行し、情報収集や監視任務を遂行できる無人水上航行体(USV:Unmanned Surface Vessel)であり、今後の日本の海洋監視体制を大きく変える可能性を秘めています。

今回の導入は、米国の対外有償軍事援助(FMS:Foreign Military Sales)制度を通じて実施されます。米空軍は、FMSに基づき、海洋ロボティクス企業であるリキッド・ロボティクス社(Liquid Robotics、現在はボーイング傘下)との間で、日本向けのUSV20機の供給契約を締結しました。

  • 機種名: Wave Glider SV6シリーズ
  • 供給数: 20機(想定)
  • 契約総額: 約2,500万ドル(約37.5億円相当、1ドル150円換算)
  • 納品完了予定: 2028年2月16日

Wave Glider SV6

Wave Gliderは、波と太陽のエネルギーのみを使用して稼働する、極めてユニークな自律型水上船です。

特徴詳細
推進方式波力推進(波の上下動を推進力に変換する独自構造)+太陽光発電(機器電力供給)
構造フロート部(海面上:太陽光パネル、通信機器、センサー搭載)と、サブ部(水面下:波の動きを推進力に変える翼構造)の2部構成
巡航速度約1~2ノット(低速だが持続的な航行が可能)
連続運用期間数か月~最大1年規模(従来の無人艇を遥かに凌駕する最大の強み
通信機能衛星通信、セルラー通信対応
搭載可能ペイロードAIS受信機、EO/IRカメラ(電気光学/赤外線)、音響センサーなど、任務に応じた柔軟な搭載が可能

従来の燃料を必要とする無人艇と異なり、エネルギー源を洋上から常時得られるため、極めて長い航続期間を実現します。これは、数日~数週間で補給が必要な一般的な無人艇と一線を画し、無人による常続監視網の構築に最適です。

導入の狙い

日本周辺、特に南西諸島海域や東シナ海では、近年、外国艦艇や潜水艦の活動が活発化しており、その動向を常時、広域にわたって把握する必要性が高まっています。しかし、有人艦艇や航空機による監視は、コストが高く、乗員の人的負担も大きいという課題があります。Wave Glider SV6は、これらの課題を解決し、低コストで持続的な監視能力を提供する手段として期待されています。具体的には、以下の任務への適用が見込まれています。

  1. 海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)
    • AIS(船舶自動識別装置)信号の受信
    • 不審船や航跡の監視
    • 国際法規に反する異常行動の検出
  2. 対潜監視支援(Anti-Submarine Warfare Support)
    • 受動型音響センサーを搭載することで、潜水艦が発する音紋(シグネチャ)を長期間にわたって収集・記録可能。
    • 多数機を連携させることで、**「海上に浮かぶセンサー網」**として機能し、潜水艦の存在を察知・追跡する。
  3. 通信中継ノード
    • 遠隔の離島や洋上を航行する部隊との間で、通信のハブ(中継地点)としての役割を果たす。

戦略的意味合い

このWave Gliderの導入は、単なる監視装備の調達という枠を超え、日本の防衛戦略における大きな転換点を示唆しています。背景には、日米間の防衛協力のさらなる強化と、将来的な分散型・無人主体の海洋監視体制構築という明確な構想があります。

  • 日米間の統合: 米軍はすでに無人水上艇や無人潜航艇のネットワーク化(マン-マシン・チーミング)を推進しており、日本がこれに本格的に加わる形となります。
  • 任務の分担: 将来的な海洋作戦において、有人艦艇が「打撃」(戦闘)を担い、Wave Gliderのような無人機群が「目と耳」(情報収集・監視・偵察:ISR)を担うという役割分担が強化される見通しです。
  • 南西方面の防護: 特に中国の海洋進出が顕著な南西方面では、島嶼防衛や、日本の生命線であるシーレーン(海上交通路)防護の観点から、広域かつ持続的な監視能力が不可欠です。Wave Gliderは、有人装備ではカバーしきれない監視の空白域を埋める存在として、高い戦略的価値を持ちます。

導入成功と効果的な運用に向け、今後、以下の点が特に注目されます。

  1. 運用組織の確定: どの省庁・部隊(海上自衛隊、海上保安庁など)が、どの任務(防衛、警備、海洋調査)のために、Wave Gliderを主体的に運用するのか。
  2. 対潜用途への本格活用: 20機という規模を活かし、広大な海域での対潜監視用途にどこまで踏み込んだ活用が行われるのか。
  3. 米軍とのデータ共有体制: 収集された海洋データや監視情報を、米軍のネットワークとどこまでリアルタイムで共有・統合し、日米共同の海洋状況把握能力を向上させるのか。

なお、日本の海上保安庁は、2016年頃から既にWave Glider系のシステムを利用した海洋観測ネットワークの運用実績を持っています。この経験が、SV6の円滑な導入と運用に活かされることが期待されます。無人化・自律化が進む海洋領域において、Wave Glider SV6は「静かに海を監視する存在」として、日本の海洋安全保障を新たな段階へと導く重要な役割を担うことになります。

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