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米空軍、次世代爆撃機B-21の生産加速 急ぐ対中国抑止の中核戦力

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USAF

米空軍は、次世代ステルス戦略爆撃機 B-21 レイダーの生産体制を大幅に強化し、納入スケジュールを前倒ししている。これは、単なる老朽化した装備の更新ではなく、急速に悪化する国際安全保障環境、特に中国との「大国間競争時代」に対応するため、B-21を早期に配備し、優位性を保ち、抑止力を迅速に強化することが目的とされる。

DAF increases B-21 Raider production capacity to deliver combat capability faster

米空軍省と主契約者であるノースロップ・グラマン社は、2月23日の共同プレスリリースにおいて、B-21レイダーの生産能力を拡大することで合意し、次世代爆撃機群の配備を加速させると発表した。この加速契約は、2025年度の調整法案、通称「One Big Beautiful Bill」ですでに承認・計上されている45億ドルの資金を活用するものである。この追加投資により、B-21の年間生産能力は25%増加する見込みだ。空軍は、これによりコストとパフォーマンスの規律を維持しつつ、承認済みの調達プロセスを短縮できると説明している。重要主要兵器システム担当ディレクターであり、戦争省(旧国防総省)副長官直属のポートフォリオ・マネージャーであるデール・R・ホワイト大将は、この決定を「規律ある調達の成果」と評価した。大将は、「今回の決定は、プログラムの成果と産業基盤の安定性に対する我々の自信を反映している。今、生産能力を増強することで、我々は責任を持って、戦闘員への重要かつ効果的な能力の提供を加速させている」と述べ、計画の確実性と戦闘能力の早期提供への強い意志を示した。

生産加速の結果、B-21の最初の機体は、当初の計画よりも大幅に早く、2027年にはサウスダコタ州のエルズワース空軍基地のランプに配備される予定である。元々2030年代初頭を予定していた部隊への就役時期は、2020年代というより近い将来に実現する可能性が高くなった。この加速生産契約は、すでに実施された初飛行や低率初期生産(LRIP)段階での実証されたパフォーマンスとプログラムの安定性に基づいており、プログラムの成功をより迅速な実戦能力の配備へとつなげることを意図している。

ステルス爆撃機B-21 レイダー

B-21レイダー戦略爆撃機は完成も初飛行もしていませんが、近代化改修されます
USAF

B-21は、米防衛大手ノースロップ・グラマンが開発を主導する次世代戦略爆撃機であり、現用のB-2 スピリットとB-1B ランサーの後継機としての役割を担う。

  • 極限のステルス性: B-2の設計思想をさらに進化させたフライングウイング形状を採用し、従来の機体を上回る極めて高いステルス性を実現。敵の高度な防空網への侵入能力を最大化する。
  • デュアル・キャパブル: 核兵器と通常兵器の両方の運用能力を持つ「デュアル・キャパブル機」として設計され、戦略的抑止と柔軟な精密打撃任務に対応する。
  • オープン・アーキテクチャ: ソフトウェアとハードウェアにオープン・アーキテクチャを採用しており、これにより将来的なセンサーや兵装のアップグレード、サイバーセキュリティ対策の更新が容易かつ低コストで行える設計となっている。
  • 生産状況: すでに初飛行を成功させ、現在は低率初期生産(LRIP)段階に移行している。最終的なフル生産率は年間約7機を目標としている。

生産加速する理由

B-21生産を加速させる背景には、複数の重要な戦略的要因が存在する。

  • 中国のA2/AD戦略と軍事力拡大: 最も大きな推進力は、中国の軍事力の急速な近代化と拡大、特にA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略の強化であると推測される。中国は、長距離防空システムや対艦弾道ミサイル「空母キラー」を配備し、接近する米軍戦力への脅威を高めている。さらに、第5世代戦闘機J-20の量産も進む。従来の非ステルス爆撃機では、このような高密度な防空圏への侵入は極めて困難となるため、B-21は敵の防空網を突破し、長距離精密打撃を実行できる数少ない有人プラットフォームとして、インド太平洋地域での台湾有事を含むあらゆる有事想定において不可欠な要素となっている。
  • 核抑止力の近代化: ロシアと中国による核戦力の近代化も無視できない要素だ。米国の「核の三本柱」(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)の中で、爆撃機部門は更新が急務となっている。B-2は生産数がわずか21機と少なく、維持費の高騰と稼働率の低さが課題。B-1Bも機体の構造疲労が深刻化している。核抑止力の信頼性を維持し、脅威の進化に対応するためには、より多数の機体を運用可能な新型機の早期配備が不可欠となっている。

米空軍は当初、少なくとも100機のB-21を調達する計画であったが、近年ではその必要数を上回る数の調達を求める声が強まっている。インド太平洋と欧州という二正面での対応、敵の長距離攻撃から生き残るための分散運用、そして長期的な消耗戦への備えといった現実的なシナリオを想定すると、少数精鋭では対応しきれないという危機感がある。そのため、調達計画を倍増させ、最大200機に拡大する検討も行われていると報じられている。

B-21プログラムは、設計段階からデジタル技術を活用し、開発リスクの低減とコスト管理を徹底してきた。過去のB-2プログラムで見られたような極端な価格高騰を回避し、調達単価が抑制されているとされ、これが大規模な量産への政治的・財政的ハードルを下げ、生産加速を後押しする要因となっている。

B-21レイダーは、単なる爆撃機以上の存在として構想されている。将来的には、長距離スタンドオフ兵器や極超音速兵器との統合運用、さらには無人航空機(UAV)との連携運用も視野に入っている。B-21は、高度にネットワーク化された統合打撃体系の中核として機能し、敵防空圏内で情報収集と攻撃を同時に行う「多機能プラットフォーム」へと進化する可能性を秘めている。この「多機能性」こそが、大国間競争時代における米空軍の戦略的優位性を担保する鍵となる。

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