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F-22はまだ終わらない ラプター2.0で“後期型”へアップグレード

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アメリカメディアの報道によれば、航空宇宙・防衛大手ロッキード・マーティンが、今年の「航空宇宙軍戦闘シンポジウム」において、F-22戦闘機のアップグレードモデルである「Raptor 2.0」のコンセプトモデルを披露したことが明らかになりました。この新型モデルは、新型ステルス外部燃料タンクと先進的なセンサーポッドを搭載することで、F-22の長年の課題であった航続距離と探知能力の向上を主眼に置いています。

Upgraded F-22 “Raptor 2.0” Details Seen In New Model

主な改良点

公表された「Raptor 2.0」コンセプトモデルには、F-22の運用範囲と戦闘能力を現代の脅威環境に適応させるための、いくつかの特徴的な強化案が盛り込まれています。

新型ステルス外部燃料タンクの導入

F-22はもともと航続距離が限られているという弱点がありました。従来の外部燃料タンクは航続距離を延ばせるものの、レーダー反射断面積(RCS)を大幅に増加させ、F-22の最大の強みであるステルス性を損なうため、有事には敵に探知される前に投棄することが前提でした。新型外部燃料タンクは、低レーダー反射を徹底的に考慮して設計されており、ステルス性を維持したまま滞空時間や作戦半径を延伸できることが期待されています。これは、広大な海域と長大な距離を伴うインド太平洋戦域での運用において、作戦の柔軟性と持続性を劇的に向上させるための極めて重要な改良です。

赤外線探索追尾装置(IRST)ポッドの追加

現代の空戦、特に第5世代ステルス機同士の交戦環境においては、レーダーに依存しない探知手段の重要性が増しています。IRSTは、敵機が発する熱源(エンジン排気や機体表面の摩擦熱など)を探知・追尾するパッシブセンサーです。F-22のIRSTポッド追加は、レーダーを使用することで自機の位置を暴露するリスクを回避しつつ、中国のJ-20やロシアのSu-57といった新世代のステルス戦闘機に対抗する能力を大幅に高めます。これにより、F-22はより静かに、遠方から脅威を探知し、交戦することが可能になります。

内部システムの広範なアップグレード

機体の外見的な変更に加えて、内部的な電子機器の刷新も不可欠です。アップグレード計画には、3つの要素が含まれています。

ミッションコンピュータの刷新と演算能力の増強: 設計当時としては画期的だったF-22のアビオニクスも、現代のネットワーク中心戦の要求を満たすには演算能力の強化が必須です。

センサー融合能力の強化: 機体の各種センサーから得られた情報を統合・処理し、パイロットに単一かつ明確な戦況認識を提供する能力を向上させます。

通信・電子戦能力の向上: F-35や無人機、そして将来のNGADプラットフォームといった、より新しいアセットとのデータリンクとデータ共有を円滑化し、協調作戦能力(C4ISR)を高めます。

なぜ?アップデート

米空軍の制空戦闘機の象徴であるF-22 Raptorは、2005年に初期作戦能力を獲得した世界初の第5世代制空戦闘機です。しかし、その圧倒的なステルス性能、超音速巡航(スーパークルーズ)能力、そして高い機動性を持ちながらも、「2030年代に段階的退役」という見通しが示されてきました。これは、冷戦期に設計が始まったことによる設計思想の陳腐化、冷戦終結後の予算削減による生産機数(わずか187機)の抑制、そして機体寿命や電子機器の旧式化といった複数の要因によるものです。では、なぜ今、退役が目前とされる機体の改良型「ラプター2.0」構想が注目を集めているのでしょうか。その核心は、F-22の退役が“即時全廃”ではなく、次世代制空システムへの「橋渡し」としての役割を持続させるための能力向上策であるという点にあります。

次世代機NGADとF-22の「空白期間」

米空軍は、将来の制空権確保のため、次世代制空構想(Next Generation Air Dominance, NGAD)を最重要プロジェクトとして推進しています。NGADはF-22の後継となる計画ですが、現時点ではまだ開発・試験段階にあり、本格的な初期配備が始動するのは早くとも2030年代前半と見られています。さらに、戦力として中国やロシアの脅威に対抗し得る十分な数が揃うには、そこから数年間の時間を要する可能性が高いとされています。このNGADの本格配備までの“空白期間”において、アジア太平洋地域をはじめとする主要な戦域で、即座に投入可能な第5世代機の戦闘能力を維持・強化することが喫緊の課題となっています。この戦略的な要求こそが、「ラプター2.0」という形でF-22の能力を引き上げる改良プロジェクトの背景にあるのです。

しかし、F-22全機がこの大規模な近代化の対象となるわけではありません。米空軍は、限られた予算の中で最大限の戦力を維持するため、「選択と集中」のアプローチを採用しています。初期生産型であるBlock 20は、主に訓練用途に使用されており、2030年代で退役が検討されています。そのため、改良されるのは、まだ機体寿命があり、戦闘システムも新しい機体であるBlock 30/35が現実的とされています。「ラプター2.0」は、F-22の寿命を何十年も延ばすような「延命策」というよりも、NGADが本格的な戦力として確立するまでの移行期を、戦闘能力を最大限に高めた状態で乗り切るための「実践的な能力強化策」と位置付けられます。

米空軍は現在、中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略の拡大という、非常に困難な課題に直面しています。この環境下で、いかにして制空権を確実かつ継続的に確保し続けるかが、安全保障上の最優先事項です。NGADへの完全な世代交代が実現するまでの数年間、F-22は改良された能力をもって、依然として不可欠な存在であり続けるのです。

F-22の改良案は高度化する安全保障環境の中で、米空軍が「即応性」と「将来投資」という二つの戦略的要請を両立させようとする、非常に現実的かつ戦略的な判断を映し出しています。2030年代半ばに向けて、F-22は改良された「Raptor 2.0」として、なお世界の第一線に立ち続ける可能性が高いでしょう。

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