

米軍によるイランへの報復的な攻撃が続く中、イラン空軍が長年にわたり運用してきた旧式の大型航空機群が相次いで破壊されたことが確認された。特に、世界で唯一の機体とされる空中給油機「KC-747」の喪失は、軍事関係者のみならず、航空ファンの間でも大きな衝撃を与えている。これに加え、アメリカ製の輸送機「C-130 ハーキュリーズ」や哨戒機「P-3 オライオン」なども攻撃の標的となったとされており、この出来事は「1970年代にアメリカが同盟国イランへ供与した軍事遺産が、半世紀を経てアメリカ自身の攻撃によって消滅している」という、歴史的な皮肉と複雑な国際関係の変遷を象徴するものとして指摘されている。
世界唯一の空中給油機 KC-747の終焉
アメリカ・イスラエルの攻撃で炎上するイラン空軍のKC-747空中給油機。F-14トムキャットやF-4ファントムの空中給油に使われていた機体で世界最後の飛行中のBoeing 747-100型機でもあり、世界でたった1機(2機作られたうちの最後)しか存在しなかった大型空中給油機pic.twitter.com/wBPAi5mYCW
— ミリレポ (@sabatech_pr) March 13, 2026
今回、破壊が確認された機体で最も注目を集めているのがKC-747だ。イラン空軍が保有していた、民間大型旅客機ボーイング747-100の初期型を独自に改造した空中給油機である。この改造機は極めて珍しく、世界でも他に類を見ない存在であった。


この機体は、イランがまだアメリカにとって中東における最も重要な同盟国の一つであった1970年代、パフラヴィー王朝時代に導入されたボーイング747-100をベースとしている。この機体は、イランがまだアメリカにとって中東における最も重要な同盟国の一つであった1970年代、パフラヴィー王朝時代に導入された機体をベースにイラン空軍向けにボーイング社の改修によって空中給油能力が付与され、イラン空軍の戦闘機部隊の長距離作戦を支える特殊任務機として運用されてきた。このKC-747は2機製造されたが、今回破壊された機体は、現存する最後の1機、そして同型式のボーイング747としても最後の現役機であったとされる。
イラン空軍は、現在の情勢下でもF-14トムキャット戦闘機など旧式ながらも戦闘機部隊を維持しているが、長距離の防空・攻撃作戦には空中給油機が不可欠である。KC-747はその限られた能力を担う中核的な存在であり、その破壊はイラン空軍の作戦半径を大きく狭めることを意味する。しかしながら、イラン空軍の遠征能力は既に限定的であるため、このKC-747が米軍にとって「大きな脅威」と見なされていたわけではなく、むしろ世界の航空歴史ファンにとっての「歴史的な宝の喪失」としてのショックの方が大きいという見方もある。
C-130輸送機とP-3哨戒機も標的に
The Iranian regime is losing air capability day by day. U.S. forces aren’t just defending against Iranian threats, we are methodically dismantling them. pic.twitter.com/CrJj2nFtHB
— U.S. Central Command (@CENTCOM) March 12, 2026
KC-747に加えて、米中央軍(CENTCOM)が公開したとされる攻撃映像の中には、滑走路上に駐機していた複数の輸送機や哨戒機が精密爆撃を受ける様子が映し出されているという。この標的となった航空機群の中には、以下の機体が含まれている可能性が高いとされている。
- Lockheed C-130 Hercules(軍用輸送機): アメリカが開発した世界的な傑作輸送機。
- Lockheed P-3 Orion(対潜哨戒機): 同じくアメリカ製の海上監視・対潜作戦機。
- Ilyushin Il-76(大型輸送機): 旧ソ連/ロシア製の大型輸送機。
特に、C-130とP-3は、KC-747と同様に、イランが1970年代の親米時代にアメリカから大量導入したアメリカ製軍用機の代表格である。1979年のイスラム革命以降、イランはアメリカによる長期的な経済制裁と部品禁輸に苦しんできたが、その独自の「リバースエンジニアリング」や整備能力を駆使して、これらの機体を半世紀近くにわたって運用し続けてきた。攻撃前の運用状況として、C-130は約28機を、P-3は革命前に購入した6機のうち最近まで5機を現役運用していたと推測されている。また、イラン空軍は旧ソ連製のIl-76も約5機保有しているとされる。今回の攻撃で正確にどれだけの機体が失われたかは現時点では不明だが、イラン軍の国内および地域内での兵員・物資輸送能力や、ホルムズ海峡などでの海上監視・偵察能力に大きな打撃となることは避けられない。
革命前の「親米イラン」の遺産が消える
現在のイラン・イスラム共和国がアメリカと敵対的な関係にあることから忘れられがちだが、1979年のイスラム革命以前、イランはパフラヴィー王朝の下で中東地域において最も強力な親米国家の一つであり、アメリカの主要な同盟国であった。当時のイランは、アメリカの支援を受け、大規模な軍備近代化計画を推進し、最新鋭の米国製兵器を大量に導入した。革命によって両国関係は完全に断絶したが、イランはこれらの「革命前のアメリカ装備」を、制裁下で困難を極めながらも独自に維持・運用し続けてきた。その象徴が、現在でも実戦部隊としてF-14トムキャット戦闘機を運用する世界で唯一の国であるという事実だ。今回の米軍による攻撃で破壊されたとされる航空機の多くが、この「革命前のアメリカの軍事遺産」であるという点は、単なる軍事的な損失以上の歴史的・政治的な重みを持っている。
今回の戦争で注目されているのは、個々の航空機の喪失というレベルを超えた、より大きな歴史的な意味合いである。1970年代にアメリカが同盟国に供与した軍用機が、半世紀後の2020年代になって、その供与国であるアメリカ自身の手によって破壊されているという事実だ。KC-747、C-130、P-3といった機体群は、かつての米イラン間の緊密な同盟関係の象徴であった。その「冷戦時代の遺産」が現在の衝突によって次々と失われていることは、冷戦期に築かれた中東地域の政治的・軍事的な秩序が、今や完全に過去のものとなり、新たな時代へと移行しつつあることを象徴していると言える。
