

2026年4月1日、ドナルド・トランプ大統領は、イラン戦争開始以来、初めてとなる全国民向けテレビ演説を実施し、現在の戦況に対する認識を表明した。大統領は「目標はほぼ達成された」と述べ、戦争が終結に向かっているとの見解を示した一方で、「今後2、3週間で彼らに極めて激しい打撃を与え、彼らを本来あるべき石器時代へと引き戻すつもりだ」と、さらなる強硬な方針を同時に打ち出した。この二律背反とも取れるメッセージは、国内外に大きな波紋を広げている。
トランプ大統領の国民向け演説の要約
— ミリレポ (@sabatech_pr) April 2, 2026
「親愛なるアメリカ国民の皆さん」から始まり、Epic… pic.twitter.com/MRqoQgoAlO
「イラン軍はほぼ壊滅」トランプ氏が成果を強調
演説においてトランプ大統領は、米軍とイスラエル軍による協調的な軍事作戦の目覚ましい成果を繰り返し強調した。特に、イランの軍事力に対しては深刻な打撃を与えたと述べ、イラン海軍は「ほぼ壊滅状態」に陥り、作戦遂行能力を喪失。空軍能力は 「重大な損失」を被り、制空権を大きく失った。ミサイルおよび核関連施設は 「深刻な打撃」を受け、戦略的な能力が大きく減退と主張したが、これは戦争初期から繰り返し述べている事だ。米国側が最大の戦略目標として掲げてきた核開発阻止は、今回の軍事行動によってその達成が目前に迫っていると大統領は断言。現在の戦争が「ほぼ完了段階」に入ったとの認識を示し、「我々はまもなく任務を完了する」と、近いうちの勝利を宣言した。
「石器時代に戻す」発言の真意と、大規模攻撃の示唆
今回の演説で最も衝撃的かつ注目を集めたのは、イランに対する徹底的な攻撃を示唆した「彼らを石器時代に戻すこともできる」という発言である。この表現は、ベトナム戦争時代にカーチス・ルメイ将軍が北ベトナムに対して用いた有名な威嚇表現を意識したものと見られている。その真意は「イランのインフラ・軍事力を徹底的に壊滅させ、近代国家としての機能を完全に失わせる」という極めて強い威嚇にある。大統領は、エネルギー関連施設、電力インフラ、さらには塩水プラントといった国家基盤への大規模攻撃を示唆し、これは「国家機能を停止させる戦略インフラ攻撃」を意味するものと解釈されている。実際、米国は今後もイランが要求を飲まない場合、エネルギー関連施設への攻撃を継続する方針を明確に示しており、この演説を受けて国際原油価格は急騰、市場の懸念を如実に反映した。
「あと2~3週間」終戦時期は依然不透明、むしろ激化の兆候も
トランプ大統領は演説の中で、「戦争はまもなく終わる」「今後2~3週間で仕事を終える可能性」と、終戦時期について言及したものの、具体的な停戦期限は示されなかった。この曖昧さが、かえって「むしろ今後、最も激しい攻撃が始まる可能性がある」という見方を強めている。実際、大統領の発言と裏腹に、中東地域への米軍戦力増強の動きが確認されている。
- A-10サンダーボルトII攻撃機とKC-135空中給油機の移動: 3月末、12機のA-10攻撃機がニューハンプシャー州からイギリス経由で中東へ向かっているのが確認された。移動支援として8機のKC-135空中給油機も同行しており、本格的な攻撃作戦への準備とみられる。
- 空母打撃群の派遣: 米海軍は3月31日、ニミッツ級空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」(CVN-77)を旗艦とする空母打撃群が、火災事故で離脱した「ジェラルド・R・フォード」の代替として、ノーフォーク海軍基地から中東へ向けて出港したと発表した。
- オハイオ級原子力潜水艦の動向: 最大154発のトマホーク巡航ミサイルを搭載可能なオハイオ級巡航ミサイル搭載型原子力潜水艦(SSGN)が、ジブラルタル湾で人員移乗を行っている様子が撮影された。艦上部には特殊部隊SEALsなどが使用する特殊潜水艇が確認されており、これも中東への配備準備である可能性が高い。
この他、各特殊部隊、82空挺師団、海兵隊と1万人規模の地上部隊が中東に追加派遣されているとされる
ホルムズ海峡問題と、同盟国・他国への圧力
大統領は、世界のエネルギー安全保障の要衝であるホルムズ海峡問題にも言及し、「海峡が開かれ、自由で安全になれば停戦を検討できる」との考えを示した。しかし、その後の発言は同盟国や他国に対する強い圧力を含んでいた。「米国は石油を輸入していない。我々が去れば海峡は自動的に開く」「石油が必要なら我々から買え」「勇気を出して自分でホルムズ海峡へ取りに行け」「イランはすでに壊滅状態で、難しい部分は終わった。後は自分で戦う方法を学べ」
さらに、イランの凍結資産について「Take it(取ることもできる)」という表現を用い、経済的な圧力や資産没収の可能性まで匂わせた。
市場と世界の反応:不安の増大
今回のトランプ大統領演説は、戦争終結への強いメッセージを発することで、国民の支持と国際社会の理解を得る目的があったと推測される。しかし、蓋を開けてみれば、これまでの強硬な姿勢や政策に特段の変更はなく、停戦時期も依然として不透明なままであった。むしろ、大規模な戦力増強の動きと相まって、「今後数週間が最も危険な期間となる可能性」を示唆する内容となった。これに対し、市場は敏感に反応した。国際原油先物取引は急騰し、世界経済の不安を象徴するかのように株価は下落した。トランプ大統領の演説は、終戦への期待感を高めるどころか、米国民および世界経済の不安を一層増幅させる結果となった。
