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92%撃破…米海軍が開発した”ドローン殺しの弾”「DKC」とは

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NSWC

米海軍の研究機関である海上水上戦センター(Naval Surface Warfare Center Crane Division)が開発した新型弾薬「ドローンキラーカートリッジ(DKC)」は、現代の戦場における喫緊の課題である小型無人機(ドローン)の脅威に対し、革新的かつ低コストで対応する手段として、大きな注目を集めています。この弾薬は、実射試験において最大92%という驚異的な撃破成功率を記録し、ドローンがもたらす「新たな戦場の脅威」への効果的な「低コスト対抗手段」として評価されています。

NSWC Crane’s new low-cost, ‘Drone Killer Cartridge’ achieves 92-percent kill rate in demonstration event

DKC開発の背景、戦争が示した戦場の変化

DKCが開発された背景には、近年の戦争、特にロシアによるウクライナ侵攻で明らかになったドローンの深刻な脅威があります。小型のFPV(First Person View)ドローンなどが大量に投入され、歩兵や非装甲車両、さらには基地インフラに対して直接的な攻撃を加える戦術が一般化し、従来の防空システムでは対応が難しい「新たな戦場の脅威」となっています。従来、軍隊は高価なミサイルや高性能な防空システムで航空脅威に対応してきました。しかし、数百ドル程度の小型ドローンを数十万ドル以上するミサイルで迎撃することは、費用対効果の面で明らかに非効率です。戦場では、兵士が既存のショットガンなどを用いてドローンを撃ち落とす事例が報告されており、DKCはこの現場レベルでの切実なニーズと経験を技術的に体系化した兵器と言えます。ウクライナでは既に、DKCに類似したアサルトライフル対応の対ドローン弾「Horoshok」が開発され、量産・実戦使用されている事実も、この種の兵器の必要性を裏付けています。

ライフルで「散弾効果」を実現する革新的な設計

DKCの最大の特徴は、米軍が使用する既存の小銃や機関銃といった標準的な火器システムをそのまま活用できる点にあります。特別な武器プラットフォームを導入する必要がなく、弾薬をDKCに変更するだけで、歩兵レベルに対ドローン能力を付与できるため、導入コストと時間の両面で大きな利点を持ちます。DKCの設計思想は、従来の単一弾頭とは一線を画しています。小型で高速移動するドローンに対し、高い命中精度が求められる通常のライフル弾で対応することは極めて困難です。DKCは、この課題を克服するために、1発の弾丸が発射後に空中で複数の子弾に分裂・拡散し、広範囲をカバーする「弾幕」を形成する構造を採用しました。これは、動く目標に対しては拡散弾が有効であるという古典的な戦術思想を、小銃弾の領域に応用した新しい発想です。

DKCの二つのタイプ

DKCには、その拡散方法によって大きく分けて2種類の構造が存在します。

  1. セグメント型(分裂型):
    弾頭が複数の分割体で構成されており、発射後に空中であるいは銃口を出た直後に分裂し、複数の弾体として目標に向かって飛翔します。各弾体は回転安定を維持するように設計されており、これにより一定の精度と目標に対する貫通力を確保できます。
  2. ペレット型(散弾型):
    多数の小型球形弾(ペレット)を内蔵した構造を持ちます。発射と同時にこれらのペレットが広がり、本質的にショットガン(散弾銃)に近い効果を生み出します。これにより、目標の正確な位置を狙わずとも、広範囲をカバーして命中確率を高めることを目的としています。

いずれのタイプも、小型無人機という特殊な目標に対する命中確率を飛躍的に高めることを目的として設計されています。

米インディアナ州の試験場で実施された実射評価では、DKCは小型ドローンを対象とした試験で92%という高い撃破成功率を達成しました。この成果は、従来の標準的な小銃弾による対ドローン射撃と比較して大幅な性能向上を示すものであり、その実用性が証明されました。DKCが提供するのは、「安価な防空」という新しい概念、すなわち「歩兵による近距離防空(Infantry-level Air Defense)」能力の実現です。高価なミサイルシステムに頼らず、既存の小銃を活用した低コストの弾薬で迎撃能力を確保するこのアプローチは、防衛予算の効率化にも寄与します。

将来の戦場では、無人機は単独ではなく、複数機が連携して攻撃を仕掛ける「群れ(スウォーム)」戦術が一般化すると予測されています。高性能な迎撃装置やミサイルだけでは、こうした飽和攻撃に完全に対応することは困難になる可能性があります。DKCのような低コストで広範囲に配備可能な対ドローン弾薬が普及することで、歩兵や車両単位での防衛能力が強化され、戦場全体の対ドローン防御密度が大きく向上することが期待されます。

軍事用途に留まらず、この技術は重要施設の警備や、警察・法執行機関における低空を飛行するドローンへの対策など、多様な保安用途への応用も視野に入っています。DKCは、現代および将来の戦場における「ドローン脅威」への対抗策として、非常に重要な位置を占める技術となるでしょう。

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