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トルコ最新ステルス戦闘機「KAAN」の弱点とは? 米国製エンジンが握る量産と輸出の命運

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©Turkish Aerospace Industries, Inc.

トルコが開発を進める第5世代ステルス戦闘機「KAAN(カン)」は、米国のF-35計画から排除された同国にとって、「航空戦力の独立」を象徴する一大国家プロジェクトだ。しかし、その野心的な計画の裏には、目を背けられない大きな矛盾が潜んでいる。機体はトルコ製でも、その心臓部はアメリカに握られているのだ。
KAANは初期量産型に、アメリカのGEエアロスペース製の「F110」ターボファンエンジンを採用している。そのため、量産・運用・輸出のあらゆる局面で米国の輸出管理制度(ITARなど)の制約を受ける。この構図は、「国産戦闘機」という華々しい響きの裏にある、ほろ苦い現実を浮き彫りにしている。

なぜ“国産”なのに米国製エンジンなのか?

KAANはトルコが国家の威信をかけて開発している第5世代の国産ステルス戦闘機だ。そのため、トルコが独自開発を進める新型エンジン「TF35000」の搭載を最終目標としている。しかし、第5世代戦闘機用エンジンの開発は世界屈指の最難関技術であり、一朝一夕には完成しない。開発スケジュールを最優先したいトルコは、実績十分なF110を「つなぎ」として採用せざるを得なかった。この決断により、試験飛行や初期量産を前倒しできた。その一方で、KAANは「米国の承認なしには動けない」という新たな足枷を抱え込むことになった。国産エンジンへの完全な置き換え(実用化)は、早くても2030年代初頭以降と見込まれている。

アメリカが「NO」と言えば量産はストップする

F110エンジンは、単に買って終わりではない。

  • エンジン本体の追加調達
  • 交換部品(サプライチェーン)の維持
  • 整備・オーバーホールや技術支援
  • 制御ソフトウェアのアップデート

これらはすべて、米国政府の輸出ライセンス(許可)の対象だ。つまり、政治的な対立で関係がこじれれば、ライセンスが停止され、KAANの量産計画そのものが空中分解するリスクがある。実際、トルコ政府は2019年のロシア製防空システム「S-400」の導入を巡る米トルコ関係の悪化により、米議会でのF110輸出承認が停滞し、KAAN計画に影響が出ていることを認めている。さらに、緊迫化するイスラエルとの対立など、外交リスクの火種は尽きない。

第三国輸出の主導権もアメリカにある

問題はトルコ空軍向けだけにとどまらない。KAANは将来的に、パキスタン、インドネシア、サウジアラビア、アゼルバイジャンなどへの輸出が期待されている。しかし、米国製エンジンを積んでいる以上、第三国への輸出には米国の「再輸出承認」が不可欠となる。仮に米国が安全保障上、あるいは外交上の理由で拒否すれば、トルコはいくら巨額の契約を結んでも機体を引き渡せない。つまり、KAANのビジネスパートナーを最終的に選ぶのは、トルコではなく米国になる可能性が高いのだ。

すでに「同じ失敗」を経験しているトルコ

©Turkish Aerospace Industries, Inc.

この懸念は、決して大げさな仮説ではない。トルコは過去に、攻撃ヘリ「T129 ATAK」で全く同じ苦汁をなめている。パキスタンから30機の大型輸出契約を獲得するも、同機にはイギリスのロールス・ロイス・ホールディングスと米国のハネウェルの合弁企業であるLHTECが開発した「LHTEC T800」エンジンが搭載。この輸出許可が米国から下りず、契約は事実上の頓挫。供給元の多角化を迫られる事態に。この苦い教訓は、「防衛産業において、米国製エンジンを採用することは、輸出の主導権も米国に握られること」を証明した。KAANの初期型も、まさにこのリスクを踏襲している。 
もちろん、これはトルコに限った事ではなく、他国の事例としてはスウェーデンのグリペン戦闘機はコロンビア空軍の老朽化したクフィル戦闘機の後継として採用を内定・交渉していたが、米国政府がグリペンに搭載される米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)製エンジン「F414」の輸出を公式に拒否(拒否権発動)し、契約が白紙化されており、米国製部品を搭載する全ての兵器にそのリスクがある。

トルコが急ぐ「真の独立」とF-35からの脱却

こうした地政学的リスクを打破するため、トルコは国産エンジン「TF35000」の開発を国家の最優先課題に掲げている。純国産エンジンへの移行が完了すれば、米国の輸出許可は不要になり、制裁に怯える必要もなくなる。独自の改良も自由に行え、第三国への輸出を邪魔されることもない。KAANが真の意味で「純国産戦闘機」と呼べるようになるのは、このエンジンが完成した瞬間だ。
KAANはトルコ防衛産業の技術力の高さを世界に示したが、その初期型は「米国依存」という構造的弱点を抱えたままだ。トルコが本当にF-35の呪縛から脱却し、自立した戦闘機輸出国になれるかどうか。その成否は、機体そのものの性能ではなく、国産エンジンを実用化できるかという「時間との戦い」にかかっている。

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