

ロシア空軍の最新鋭ステルス戦闘機「Su-57」が7月23日、モスクワ州で墜落したと複数のロシア軍事ブロガーや海外メディアが報じた。ロシア国防省も軍用機の墜落を認めているが、機種名については公表しておらず、「技術的不具合が原因」と説明している。一方、親ロシア派の軍事ブロガーやウクライナ側の情報機関に近い関係者からは、防空部隊によるフレンドリーファイア(同士討ち)の可能性が指摘されており、事故原因を巡って様々な憶測が広がっている。
パイロットは脱出、生存
V podmoskevské oblasti se zřítil russký stíhací letoun Su-57 páté generace, informují russká média.
— 🍀Tomáš Doupal 🇨🇿 (@TomasDoupa39474) July 23, 2026
Odhadovaná cena jednoho letounu Su-57 se pohybuje od 100 do 150 milionů dolarů.
Spekuluje se, že byl zasažen přátelskou palbou russké protivzdušné obrany. Pilot se katapultoval. pic.twitter.com/Zc4wVHP4dK
事故はモスクワ州オジンツォボ地区付近で発生したとされる。公開された映像では、戦闘機が急速に高度を失った後に墜落し、炎上する様子が確認できる。パイロットは墜落前に射出座席で脱出しており、生存したと報じられている。墜落地点は住宅地を避けた森林地帯で、地上での人的被害は確認されていない。ロシア国防省は「モスクワ州で戦闘練習機が離陸中に技術的不具合を起こして墜落した」と発表したが、具体的にどの機種かには触れていない。しかし、ロシア紙『コメルサント』や複数の軍事系Telegramチャンネルは、墜落したのはSu-57だったと報じている。ロシア国防省側としては、自軍の最新鋭戦闘機であるSu-57の損失の事実を公表することは避けたい意向があると推測される。
「味方の誤射」説が浮上
事故後、墜落の原因として最も注目を集めているのがフレンドリーファイア説だ。親ロシア派軍事ブロガーの一部は、防空部隊「BARS-Moscow」の対応に疑問を呈し、「防空部隊に質問すべきだ」と投稿。モスクワ周辺ではウクライナ軍による長距離ドローン攻撃が頻発しており、防空部隊は常に高い警戒態勢を維持している。そのため、防空システムが自軍機を敵機と誤認した可能性が取り沙汰されている。
❗️As part of a cyber operation, the OSINT community InformNapalm, together with Ukrainian specialists, remotely hacked the air defense systems of the “BARS Moscow” training ground, where Russians were training to counter Ukrainian UAVs.
— 🪖MilitaryNewsUA🇺🇦 (@front_ukrainian) July 23, 2026
The hackers gained access to the combat… pic.twitter.com/YGD45vH1Ft
さらに、ウクライナ寄りのOSINTコミュニティ「InformNapalm」は、ウクライナ情報機関によるHUMINT(人的情報)とCYBINT(サイバー情報)を組み合わせた作戦により、BARS-Moscowの防空部隊を混乱させ、結果としてSu-57への誤射を誘発したと主張している。InformNapalmによれば、防空部隊の運用情報や訓練データを分析し、その弱点を突いた情報・サイバー作戦を実施したという。
現時点で誤射を裏付ける証拠はない
ロシア軍はウクライナ戦争において、度々フレンドリーファイアで味方機を撃墜している。2024年1月には、A-50早期警戒管制機やIl-22空中指揮機という極めて貴重な機体を誤射で失ったとされる。モスクワ近郊の防空部隊は国内でも特に重要な部隊であり、優先的に最新装備や優秀な人員が配備されているものの、絶え間ないドローン攻撃による過度の緊張状態に加え、防空部隊と空軍の連携不足やIFF(敵味方識別)運用の課題が以前から指摘されていた。もっとも、フレンドリーファイア説を裏付ける客観的な証拠は現時点で公開されていない。InformNapalmは作戦の概要を説明しているものの、通信傍受記録やレーダーデータ、交信記録など第三者が検証可能な資料は提示しておらず、ロシア側も誤射を認めていない。そのため、この説は現時点では「有力な仮説の一つ」にとどまり、事実として断定できる状況にはない。
他の事故原因としては、主に以下の可能性が残されている。
- 機体または飛行制御システムの不具合
- エンジントラブル
- その他の運用上・整備上の問題
確認されればSu-57として2機目の全損
今回の機体がSu-57であると正式に確認されれば、2019年12月に初号量産機が飛行制御システムの不具合で墜落して以来、2機目の全損事故となる。


なお、2024年6月にはアフトゥビンスク基地でウクライナ軍のドローン攻撃を受けSu-57が損傷し、2026年5月にもシャゴル基地で2機が損傷したとウクライナ側が発表しているが、これらはあくまで「損傷」であり、全損が確認された事例ではない。
ロシアにとって大きな痛手
Su-57はロシア唯一の実用ステルス戦闘機であり、生産数は依然として限られている。近年も追加納入は続いているものの、実戦配備数は西側の第5世代戦闘機と比較すると極めて少なく、わずか1機の損失であっても戦力や宣伝面に与える影響は小さくない。ロシア航空宇宙軍は損失を恐れてか前線での直接運用を控えており、高いステルス性を備えながらも現在の主な任務は国内の防空にとどまっている。Su-57は最近、アルジェリア空軍に納入されるなど、海外輸出が始まったばかりであり、損失原因によっては今後の販売に影響が出る可能性がある。
事故の真相については今後の調査や更なる情報の公開を待つ必要があるが、仮に防空部隊による誤射だった場合、ロシア軍の防空指揮・識別体制の深刻な欠陥を示す事例となる。一方で技術的不具合だった場合でも、ロシアが国の威信をかけて開発・配備を進める第5世代戦闘機の信頼性に、改めて大きな疑問符がつくことは避けられないだろう。そのため、ロシア国防省が墜落原因の詳細を公表する可能性は極めて低いと考えられる。
