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「砲弾のミサイル化」が本格化―Vulcanoが切り拓く155mm/127mm精密火力

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©Leonardo

大砲という兵器のあり方が、いま静かに変わりつつある。象徴的な存在が、イタリアLeonardoとドイツDiehl Defenceが共同開発した精密誘導砲弾「Vulcano(ヴルカーノ)」だ。新型砲を開発するのではなく、既存の155mm榴弾砲や127mm艦載砲から発射できる砲弾そのものを高性能化し、砲兵の射程と精度をミサイルに近づける発想である。

サブキャリバー弾とGPS/INS誘導

Vulcanoの中核は、サブキャリバー化された細長い弾体だ。155mm砲や127mm砲から発射されるが、飛翔体自体は砲身径より細く、空気抵抗を抑えた形状で運動エネルギーを効率よく飛距離に変換する。基本型のGLR(Guided Long Range)はGPS/INS誘導で長距離飛翔し、オプションでSAL(半自動レーザー)やFarIR(赤外線)の終末誘導センサーを搭載すれば、移動目標も精密に追尾できる。メーカー公表値では155mm GLRが最大70km、127mm GLRが最大80km超(127/64砲では条件により100km超とする資料もある)で、全射程を通じて5m未満の精度を狙う。なお開発体制は、誘導・信管・弾頭の設計権はLeonardoが保有し、終末センサーや機体統合をDiehl Defenceが担う共同プログラムである。

Excaliburとの違いと、GPS依存の弱点

©RTX


米国のM982 Excaliburも同種のGPS/INS誘導155mm砲弾だが、近年はERCA用58口径砲身からの試験射撃で70km級まで到達しており、射程面でのVulcanoとの差は縮まりつつある。むしろ実戦で浮き彫りになったのは、GPS依存の脆弱性だ。ウクライナ戦線ではロシア軍の電子戦により、Excaliburの命中率が大きく低下したとの報告もある。Vulcanoもこれを踏まえ、GPSが妨害・欺瞞される環境を想定し、大半の飛翔をあらかじめ入力した座標に基づく弾道飛行とし、終末段階でのみセンサーを作動させるモードを整備した。カナード翼による揚力を最大限使わないぶん射程は落ちるが、妨害耐性を優先する選択肢として用意されている。

既存砲との互換性、そして海軍への展開

Vulcanoは既存の155mm砲身・発射薬との互換性を保ちながら射程と精度を伸ばす設計で、通常弾とほぼ同じ外形のため物流負担も抑えられる。同じ発想は127mm艦載砲にも展開され、ドイツ海軍はF125型フリゲートでVulcano 127の運用試験を完了し実装段階にある。イタリア海軍でも運用が進む。さらにLeonardoは76mm艦砲向けにもVulcanoを開発中で、GPS/IMUとIR・SAL終末誘導を組み合わせ40km級の射程を目指しているが、こちらはまだ開発段階にある。

垂直落下と最適化された弾頭

弾道制御により最終突入角を最大90度、ほぼ垂直に近い角度に設定でき、弾頭効果の向上と敵防空網からの探知回避を両立させる。弾頭にはIHE(鈍感高性能炸薬)とタングステン製の破片リングを採用し、RF式プログラマブル信管で近接・着発・遅延・エアバーストなど複数の起爆方式に対応する。

最新の動き――米陸軍とNATOが相次いで採用

2026年6月、Eurosatoryにおいて、General Dynamics Ordnance and Tactical Systemsを主契約者としLeonardo・Diehl Defenceが参画する陣営が、Vulcano 155 GLRを基にした次世代弾を米陸軍のERAP(Extended Range Artillery Projectile)計画向けに提案し、BAE Systems、General Atomicsと並ぶ3候補の一つとして選定された。開発契約額は約3786万ドルで、初期運用能力は2030会計年度を目標とする。欧州設計の誘導砲弾が米陸軍に採用されるのは異例の展開だ。同年7月には、NATO調達・支援機関(NSPA)がDiehl Defenceと155mm Vulcanoの調達枠組み契約を締結したと発表。NATO加盟国の長射程精密打撃能力と弾薬備蓄の強化が狙いで、初回納入は2027年を予定する。また、防衛装備庁と陸上自衛隊が2023年に試験調達の契約を締結しており、正式採用するのも近いかもしれない。

「砲」と「ミサイル」の境界が消えていく

かつて砲弾は安価だが無誘導、ミサイルは高価だが長射程・精密という明確な線引きがあった。しかしVulcanoは、既存火砲を活かしながら70~80km級の射程とGPS/INS+終末誘導、飛翔経路制御、最適化弾頭を一つに統合し、その境界を曖昧にしつつある。ミサイルを使うほどではない目標を、通常砲弾では届かない距離から低コストで叩く「中間火力」としての価値が、米陸軍やNATOの相次ぐ採用によって裏付けられつつある段階だ。

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