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米陸軍がM777後継にK9MHを選定 韓国製155mm自走砲の性能と採用理由

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©Hanwha Defense USA

米陸軍は2026年8月18日、韓国Hanwha Aerospaceの米国法人Hanwha Defense USA(HDUSA)との間で、新型155mm自走砲システム「Mobile Tactical Cannon(MTC)」の試作契約を締結したと発表しました。牽引式155mm榴弾砲M777の後継候補として、韓国の装輪式自走砲「K9 Mobile Howitzer(K9MH)」が選ばれた形となります。

試作契約の内容

契約はOther Transaction Authority(10 U.S.C. 4022)に基づく競争的な取得で、まず試作車6両を発注し、さらに12両を追加できるオプションが付きます。契約額は当初約1億30万ドル、オプションを全て行使した場合の総額は約2億6290万ドルに達します。今後約4年間、兵士による実運用評価を含め性能・信頼性・整備性などを検証する計画で、最初の試作車は2026年秋にも引き渡される見通しです。これは正式採用の決定ではなく、あくまで試作・評価段階への移行であり、最終的な量産の可否は評価結果を踏まえて判断されます。

牽引式M777から自走砲へ 

M777(US Army)

M777はイギリスとアメリカが共同開発した155mm榴弾砲で、米軍は2005年から導入しています。重量約4.2~4.3トン級という軽量さが最大の特徴で、航空輸送に適し、米陸軍の軽歩兵部隊などで運用されてきました。一方で牽引式であるため、射撃位置を変更する際には牽引車による移動が必要になります。

対するK9MHは、チェコ製Tatra T815-7をベースとした8×8輪型シャシーに、K9A2由来の完全自動化された砲塔を搭載した自走砲で、砲撃後に自力で迅速に陣地を離脱できます。ドローンや対砲兵レーダーによる監視が常態化した戦場では、この「Shoot and Scoot(撃って逃げる)」能力が砲兵部隊の生存性を左右します。

主要諸元は、CN98 155mm/52口径砲を搭載し発射速度は毎分8〜9発、弾薬搭載数は40発、乗員は2〜3名、展開・撤収は30秒未満とされています。射程は弾種によって異なります。最大速度は整地で60kmを超えます。

なぜ韓国製が選ばれたのか 

米陸軍は過去に自走砲の自国開発計画を3度断念してきました。1994年着手のCrusaderは2002年に中止、Future Combat Systems内のNLOS-Cは2009年に中止、2018年着手の長射程砲Extended Range Cannon Artillery(ERCA)も、M109車体に58口径砲を搭載する野心的な計画でしたが技術的課題を克服できず2024年に中止されました。この経緯を受け、陸軍は新規開発から「既に成熟し、迅速に量産・配備可能なシステム」の調達へと方針を転換しました。2024年10月にはRheinmetall、BAE Systems Bofors、Hanwha Defense USA、General Dynamics Land Systems、Elbit Systems USAの5社に性能実証契約を発注しており、今回のK9MH選定はこの競争を勝ち抜いた結果といえます。

ベースとなっている無限軌道式のK9シリーズ自体は世界で2,500両以上が配備され、韓国のほかポーランド、ノルウェー、オーストラリア、トルコなどにも採用されるなど、今、世界でもっとも売れている自走砲です。ただしK9MH自体は2024年12月に開発が正式着手されたばかりの新型車両で、初号車の公開も2026年春と最近のことです。したがって「実績十分な完成品」というより、「実績あるK9ファミリーの技術を土台にした新開発の輪型システム」という位置付けが実態に近いです。なお2024年10月の性能実証には、独Rheinmetallの輪型自走砲RCH 155なども名を連ねており、K9MHは複数の有力候補との比較検討を経て試作契約に至っています。

米国内生産体制の構築も評価点となりました。HDUSAはアラバマ州オペライカに統合・試験施設を整備する計画を進めており、国内生産基盤の確保という陸軍の要求に応えています。今回の契約はHDUSAにとって米陸軍から獲得した初の大型契約であり、韓国の完成兵器システムが米陸軍の主要装備計画で試作段階に採用される異例のケースとなりました。

今後の展望 

MTC計画は、M777を運用する全部隊の一律更新を意図したものではありません。まずStryker旅団戦闘団(SBCT)への導入が想定され、その後、機動旅団や歩兵旅団戦闘団への展開が検討されています。空挺部隊や軽歩兵部隊が重視するM777の軽量性・空輸適性は自走化によって失われるため、こうした部隊にどこまで展開できるかは今後の検討課題として残ります。将来的な量産規模は最大498両に上るとの見方もあり、2028会計年度の開始を目安とする構想が伝えられています。

ウクライナ戦争では無人機や対砲兵レーダーによる砲兵陣地の即時探知と反撃が常態化し、牽引砲の残存性が大きな課題として浮上しました。米陸軍もこうした戦訓を踏まえ、現行の射程約30kmから2030年までに50〜70kmへの延伸を目標に掲げており、MTCはその一翼を担う位置付けです。

MTCが最終的な採用に至るかは今後4年間の評価次第であり、現時点で決定事項ではありません。それでも今回の試作契約獲得は、韓国防衛産業にとって米国という最大市場への重要な足掛かりとなるだけでなく、米陸軍が「軽さ」重視の牽引砲から機動性・残存性を重視する自走砲へと軸足を移す可能性を示す動きといえます。

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