

陸上自衛隊は2026年9月2日、宮城県の王城寺原演習場で行われた日仏共同訓練「ブリュネ・タカモリ26」において、自衛隊として初となる攻撃用ドローンを報道陣に公開した。機体の名称は「Drone40」。防衛省・防衛装備庁は同年5月、これを新装備「小型攻撃用UAV I型」として正式に選定したと発表しており、今回の演習公開はその実機を国民が目にする最初の機会となった。
40mmグレネードサイズの“空飛ぶ弾薬”
🇦🇺 DefendTex (@DefendTex), maker of Grenade Launcher Compatible UAS (Drone40) signed MOU with 🇸🇬 Singapore's Defence Science and Technology Agency (DSTA) to explore collaborative opportunities for various platforms of DefendTex.
— Counter Unmanned Systems (@CUAS_NEWS) June 6, 2025
"DSTA is a valued partner of DefendTex. Together,… pic.twitter.com/GdA6ybXSoL
Drone40は、オーストラリアの防衛企業DefendTex社が開発した超小型無人機だ。名称の「40」は、40mmグレネードランチャーから発射できるサイズに由来する。収納時は直径40mm・全長約13cmの円筒形で、発射後に4本のローターアームを展開してクアッドコプターとして飛行する。手投げでの運用も可能だが、40mm弾を発射するにはNATO規格に対応した新型ランチャー(M320やベレッタGLX 160 A1など)が必要で、旧式のM203では弾体が収まらない。陸上自衛隊は20式小銃と組み合わせる新型40mmてき弾銃をすでに導入しつつあり、Drone40を運用するインフラは整いつつあるとみられる。
スペックは資料によって幅がある
DefendTex社の最新カタログによれば、機体本体の重量は約200g、ペイロードを含めた最大離陸重量は約300g。全長は本体132mmにペイロード分が加わる。最大飛行時間は約60分、最大速度は秒速20m(時速約72km)、最大航続距離は35kmとされる。一方、防衛装備庁の公表資料をもとにした報道では最大速度を秒速18mとするなど、出典によって数値に幅があり、単純な比較には注意が必要だ。
| 項目 | 数値(目安) |
| 本体重量 | 約190〜200g |
| 最大離陸重量 | 約300g |
| 直径(収納時) | 40mm |
| 最大飛行時間 | 約60分 |
| 最大速度 | 秒速18〜20m |
| 最大航続距離 | 最大35km |
| 映像伝送 | 暗号化1080p/30fps・リアルタイム |
10種類のペイロードで「偵察から攻撃まで」


最大の特徴は、本体と弾薬部(ペイロード)が分離でき、任務に応じて現場で付け替えられるモジュール構造だ。DefendTexは偵察用の光学・赤外線センサー(ISR EO/ISR TI)、攻撃用の破片弾頭(FRAG)や装甲貫徹用の自己鍛造弾(EFP、均質圧延鋼板を約16mm貫通)、さらに閃光音響弾や発煙弾、照明弾など計10種類のペイロードを用意する。1機を偵察用として飛ばし、脅威を発見すれば別の機体を攻撃用ペイロードに切り替えて投入するといった柔軟な運用が可能だ。複数機を同時に目標へ突入させる「MSRI」と呼ばれるスウォーム機能も開発されている。
歩兵の「見る」と「撃つ」を短縮する
Drone40の戦術的な意味は、破壊力そのものよりも、偵察と攻撃を歩兵の手元で完結できる点にある。従来、前線の分隊・小隊が視界の外にいる敵を発見し攻撃するには、上級部隊への情報伝達や、迫撃砲・特科部隊による火力支援を「依頼して待つ」必要があった。Drone40があれば、分隊長や小隊長のレベルで探知・識別・攻撃というキルチェーンを自己完結できるようになる。歩兵携行火器の射程は対戦車ミサイルでも数kmにとどまるが、Drone40は最大35kmの航続距離を持ち、複数機をまとめて携行できる点でも従来装備と一線を画す。
導入までの経緯――単独入札で決着
防衛省は2023年度以降、複数機種を対象にした運用実証を重ね、小型攻撃用UAVの導入を進めてきた。2026年2月17日の一般競争入札には、Drone40を提案した丸紅エアロスペース1社のみが参加し、初回で落札した。契約金額は約36.8億円、調達数量は約310機、納期は2027年5月末とされる。単純計算で1機あたり約1,187万円になるが、大半は整備体制の構築や操縦訓練システム、技術資料の翻訳といった初度費用とみられ、量産単価そのものではない。なお事前の実証試験には計7機種(うち5機種はイスラエル製)が参加していたが、最終入札にイスラエル企業は名乗りを上げなかった。報道によれば、ガザ地区への攻撃を巡り国連調査委員会がジェノサイドと認定したことを背景に、イスラエル製兵器の調達に反対する声が国内で広がっていたという事情がある。
「I型・II型・III型」という体系
防衛省はこの種の装備を「小型攻撃用UAV」として3区分で整備する計画を示している。歩兵携行で近距離の車両・人員を対象とするのがI型(Drone40)、同じく携行可能ながら軽装甲車両や小型舟艇を狙うのがII型、車載式でより大型の目標を想定するのがIII型だ。今回導入が決まったのは、その中でも最小のI型にあたる。
海外での運用実績と残る課題
Drone40はオーストラリア政府の開発資金で生まれた機体で、豪軍自体は大規模な量産配備には至っていない。英国は国連PKO(マリ・MINUSMA)で偵察用途に限定して運用し、米海兵隊も2021年に試験運用したが正式採用はしていない。ウクライナは2022年8月頃、オーストラリアから約300機を受領したとされるが、公開情報で確認できる戦果はごく限られる。数百万機規模で投入される安価なFPVドローンに比べたコスト面の不利、GPSに依存する自律飛行ゆえの電子戦への脆弱性、投入数の少なさが要因とみられ、「実戦で証明済み」と単純には言い切れない点には留意したい。
自衛隊にとっての意味
それでも陸上自衛隊にとってDrone40は、これまで警戒監視用に限られていたドローン運用を「攻撃」領域まで広げる最初の一歩となる。約310機という数は45個を超える普通科連隊全体に行き渡る規模ではなく、当面は水陸機動団や第1空挺団、即応機動連隊など機動展開力の高い部隊への優先配備が見込まれる。離島・山岳・森林地帯を抱える日本の防衛環境において、専用の発射装置や滑走路を必要とせず歩兵が携行できるDrone40は、地形的にも相性がよい。今回の日仏共同訓練での公開は、その運用構想を内外に示す最初の機会だったと言える。
