

米空軍は2026年9月17日、長距離爆撃機B-1B「ランサー」とB-2「スピリット」の運用期間を延長する方針を明らかにした。次世代ステルス爆撃機B-21「レイダー」の配備が目前に迫るなか、なぜ旧世代機をあえて長く使い続けるのか。背景には、B-21への移行に想定以上の時間がかかることと、B-1・B-2の能力を簡単には代替できないという事情がある。
司令官が語った「延命」の中身
米空軍グローバル・ストライク・コマンド(AFGSC)司令官のスティーブン・L・デイビス大将は9月17日、Air & Space Forces Associationの「2026 Air, Space & Cyber Conference」で開かれた「戦い、直し、勝つための飛行」と題したパネル討論で、B-1とB-2双方の運用期間を延長すると発表した。ただし、具体的に何年まで運用するのかという最終的な期限は示されなかった。デイビス氏は同時に、両機種で経験を積んだパイロットの一部がB-21の初期パイロットになるとも明かしており、旧型機からB-21への人材移行も今回の発表の柱の一つだ。
これは突然の方針転換ではない。米空軍はすでに2026年4月の段階で、B-1について2037年まで運用する近代化計画を示していた。2027~2031年度の5年間でB-1に約3億4200万ドル(可変搭載量に対応する新型パイロンの導入などを含む)、B-2に約13億5000万ドルを投じる計画で、合計投資額は約17億ドルにのぼる。この投資によりB-2は少なくとも2040年まで運用可能になるとみられている。ロシアや中国をめぐる国際情勢の緊張、そして精密誘導兵器の備蓄不足も、旧型機を手放せない一因とされる。
B-21があるのに、なぜ旧型を残すのか


最大の理由は、B-21が十分な機数を揃えるには時間がかかるためだ。B-21は少なくとも100機の導入が計画されている次世代ステルス爆撃機で、現在は低率初期生産(LRIP)の段階にある。米空軍は2026年2月、ノースロップ・グラマンと年間生産能力を25%引き上げる契約に合意し、42億5000万ドルを投じて納入ペースを加速させる方針を示した。最初の配備先となるサウスダコタ州エルズワース空軍基地では9月10日付でB-21統合の専任部隊「デタッチメント1」が発足し、実機到着を1年後に控えた体制整備が進む。しかし新型機は「配備開始=即座に旧型機を全廃」というわけにはいかない。機体試験に加え、乗員訓練、整備体制、兵器統合、指揮統制システムの確立が必要で、体制が整う前に退役させれば爆撃機戦力が一時的に縮小しかねない。そこで米空軍は、旧型機を延命しつつB-21を増産し、作戦能力確立後に段階的に退役させる移行を進めている。
「大量の兵器を運ぶ」非ステルス機B-1B


1970年代に開発が始まったB-1Bは、高速性、長い航続距離、大きな兵器搭載能力を武器とする非ステルス機で、現在は核兵器ではなく通常兵器の運用が中心だ。ステルスで敵防空網を突破するB-21とは役割が異なり、B-21が高脅威環境への侵入を担い、B-1が大量の通常兵器で攻撃力を提供するという分業も可能になる。現役約45機のB-1について、米空軍は9月8日発表の「North Star Readiness Campaign」で部品供給や整備体制の改善にも着手しており、機体を地上待機させる深刻な部品不足(MICAP)は450件超から約160件まで減少したという(数値は空軍発表によるもので、第三者による検証はされていない)。あわせて、経験豊富なパイロットの飛行時間を確保するため、民間のHondaJet Eliteを訓練機として導入する「BSTAR」計画も進められている。
「唯一無二」のB-2


建造された21機のうち事故で1機を失い、現存約20機となったB-2は、ステルス性を保ちながら長距離を飛行し、大型兵器を投下できる世界でも特殊な機体だ。その象徴が約3万ポンド級の貫通爆弾GBU-57「MOP」である。2025年6月の対イラン核関連施設攻撃「ミッドナイト・ハンマー」作戦では、7機のB-2がフォルドウ、ナタンズ、イスファハンの3施設に計14発のMOPを投下し、他機で代替できない能力を実戦で示した。米空軍は「B-2はB-21が完全に作戦運用可能になるまで、戦闘能力を維持する」と説明しており、B-2の延命は旧式機温存ではなく、移行期間の保険と位置づけられている。
四世代の爆撃機が並走する時代へ
B-21配備後の爆撃機戦力は、通常攻撃のB-1B、高脅威侵入のB-2、次世代ステルスのB-21、長距離スタンドオフのB-52という、異なる特性を持つ機種が並行運用される構図になる。米空軍がB-1・B-2延命に5年間で約17億ドルを投じる計画を示していることからも、旧型機を単なる数年の「つなぎ」として扱っていないことが分かる。
当初計画では2030年代初頭にB-1とB-2は退役し、爆撃機戦力はB-52とB-21の2機種体制になる予定だった。しかし今回の延命方針は、「世代交代」よりも「戦力の空白を作らないこと」を優先する米空軍の姿勢を象徴している。B-52についても、エンジンとレーダーを刷新する大規模近代化により2050年代までの運用延長が見込まれており、旧型機の粘り強い活用は爆撃機戦力全体に共通する流れだ。今後B-21がどの速度で増産され、いつB-1・B-2の能力を本格的に引き継ぐのかが、米国の長距離打撃戦力を左右する重要なポイントになりそうだ。
