

米国の無人航空機メーカー、General Atomics Aeronautical Systems(GA-ASI)は2026年9月、新型無人航空機「Wildfire(ワイルドファイア)」を公開した。同社はMQ-1 RedetorやMQ-9 Reaperを開発した企業であり、Wildfireは米空軍が進める次世代無人航空機構想「Massed Modular Aircraft(MMA)」に向けた機体として注目されている。ただし、現時点でWildfireが正式にMQ-9の後継機として採用されたわけではない。米空軍が要求を策定している段階で、WildfireはGA-ASIが提示する候補の一つという位置付けだ。
参考・引用:GA-ASI Unveils Wildfire UAS for Military, Civil and Commercial Roles
「高性能な少数」から「大量投入」へ
Wildfireの最大の特徴は、MQ-9を単純に大型化・高性能化した機体ではなく、低コスト化と大量生産、そして損失を許容した運用を重視している点にある。MQ-9は長時間の情報収集・監視・偵察(ISR)や対地攻撃で大きな成果を上げてきた。一方、ロシアや中国のように強力な防空網を持つ相手との戦闘では、比較的大型で高価な無人機を少数投入する運用にはリスクが伴う。イランやイエメンでも数十機を失っている。MQ-9の価格は1機あたり3000万ドルとされる。
そこでMMAでは、比較的低コストな無人機を多数投入し、それぞれがセンサー、攻撃、電子戦など異なる役割を担う「分散型」の航空戦力が想定されている。Wildfireもこうした思想に基づき、モジュール式の設計を採用。任務に応じてセンサーや兵器などを変更できるほか、将来的には複数の無人機を協調させて運用することも想定されている。MMAでは1機あたりの調達コスト1000万ドルを目標にしている。
フェリー航続距離は約1万4800km
GA-ASIが公表した情報によれば、Wildfireのフェリー航続距離は8000海里(約1万4800km)を超える。これは極めて長い航続能力だが、注意すべきなのは兵器やセンサーを搭載して戦闘任務を行いながら8000海里を飛行できるという意味ではない。MMAでは、兵器などを搭載した状態での戦闘行動半径2300海里以上に加え、無給油で8000海里以上を移動できる能力が求められているとされる。
JSMやLRASMの搭載も想定


Wildfireは、MQ-9よりも大型のスタンドオフ兵器を運用する可能性もある。GA-ASIが公開したイメージでは、対艦・対地攻撃に使用されるJSM(Joint Strike Missile)を4発搭載する構成や、長距離対艦ミサイルLRASM(AGM-158C)を2発搭載する構成が示されている。これはWildfireが単なる偵察用ドローンではなく、敵の防空網などに接近せず、遠距離から攻撃を行う「ミサイルキャリア」としても運用される可能性を示している。MQ-1やMQ-9も偵察・監視・情報(ISR)を主任務としながら、対地攻撃も行っていた。LRASMを搭載できれば、敵艦隊に対する長距離攻撃能力を無人機に持たせることが可能になる。
自律化で「1人が複数機」を目指す
もう一つの重要な特徴が自律運用だ。GA-ASIによれば、WildfireにはFQ-42Aなどで培われた自律化技術を取り入れる構想があり、人間が1機ずつ細かく操縦するのではなく、1人のオペレーターが複数の無人機を監督する運用が想定されている。これが実現すれば、有人戦闘機や爆撃機を中心とした従来の航空戦力に、複数の無人機を組み合わせる新たな戦い方が加わることになる。
「MQ-9の次」は高性能化ではなく大量化か
Wildfireが示しているのは、単なる新型ドローンの登場ではない。MQ-9の時代には、1機の無人機に高性能なセンサーや兵器を搭載し、長時間にわたって任務を遂行することが重視された。一方、Wildfireが目指すのは、比較的低コストな機体を大量に投入し、ネットワーク化された無人機群として戦わせるという考え方だ。もちろん、Wildfireが実際に米空軍のMQ-9後継機として採用されるかは現時点では決まっていない。しかし、GA-ASIがMQ-9の次世代機として「高性能な1機」ではなく「多数の無人機」という方向性を打ち出したことは、今後の米軍無人航空戦力を考えるうえで重要な動きと言えるだろう。
