

米陸軍は2026年12月、新型の6.8mm口径カービン「M8」の部隊配備を始める。最初の配備先はノースカロライナ州フォート・ブラッグの一部部隊だ。M8は、次世代分隊火器(NGSW)計画で採用されたM7小銃の改良型で、より短く、より軽く仕上げられている。M7の配備開始は2024年だった。それから3年足らずで主力小銃の中身が入れ替わろうとしている。これは単なるマイナーチェンジではなく、「高性能だが重い」という現場の評価に対する、陸軍とメーカーの回答といえる。
12月、フォート・ブラッグから配備開始


M8を開発したのは、M7と同じ米SIG Sauer社である。開発段階の名称は「XM8」で、2026年3月にこの名称で存在が公表された。同年4月には陸軍が最初の納入分を受け入れている。2025年12月に調達が承認されており、そこから約4か月で初号機の納入に至った格好だ。配備対象は、歩兵、偵察、衛生兵、前線観測員、戦闘工兵、特殊部隊など、近接戦闘に当たる部隊(クローズ・コンバット・フォース)である。M8は、この部隊群で長年使われてきたM4A1カービンを置き換える位置づけとされる。
なお呼称には注意が必要だ。陸軍の予算資料では現在も「XM8」と表記されている。一方、メーカーの量産ラインでは「M8 Carbine」の刻印が確認されている。正式な型式分類が近いとみられ、本稿ではM8で統一する。
M7との違いを数字で見る
M8は、M7の内部機構を共有する「兄弟銃」である。変更点は、持ち運びと取り回しに関わる部分に集中している。
| 項目 | M7 | M8 |
| 銃身長 | 13インチ | 11インチ |
| 全長 | 866mm | 約3.5インチ(約8.9cm)短い |
| 重量 | 3.8kg | 1ポンド(約454g)以上軽い |
| 銃床 | 折りたたみ式 | 固定伸縮式 |
| サプレッサー重量 | 662g | 594g |
| 弾薬 | 6.8×51mm | 同左 |
| 射撃統制装置 | M157 | M157と互換 |
目を引くのは銃床の変更だ。折りたたみ式は収納性で有利だが、構造上どうしても剛性や信頼感の面で不利になる。兵士からは固定式のほうが堅牢で好ましいとの声が上がり、M8に反映された。ハンドガードの剛性向上など、細部の改良も現場の意見に基づく。
重量は、M4A1との比較でも意味を持つ。メーカーの説明では、M8とM4の重量差はサプレッサーを除いて1ポンド弱にまで縮まった。M7ではサプレッサーを付けるとM4A1より携行負担がかなり大きくなる点が問題視されていた。M8では銃本体に加え、サプレッサー自体も軽くしている。
なぜ「軽量化」が必要だったのか
M7をめぐっては、配備開始後に批判が相次いだ。陸軍の将校が「現代の制式小銃として不適格」と指摘する場面もあった。陸軍とSIG社はこうした主張に反論している。ただ、重量や取り回しが運用上の負担になるという認識は、両者に共通していたようだ。M7が重くなった背景には、6.8×51mm弾の存在がある。この弾薬は、5.56mm弾を使うM4A1に比べて高い貫徹力と有効射程を狙って設計された。近年の防弾装備の高性能化に対抗するためである。高い圧力に耐えるため、銃自体も頑丈で重くなりがちだ。ここで重要なのは、M8が弾薬の性能を捨てていないことだ。陸軍はM8でも「システム全体としての殺傷力」を維持するとしている。弾薬も射撃統制装置も変えず、銃だけを小さく軽くする。これがM8の設計思想である。
継承されるもの:6.8mm弾とM157


M8はM7と同じ6.8×51mm弾を使う。そして、光学照準器にレーザー測距計や弾道計算機を統合した射撃統制装置「M157」とも互換性がある。測距と弾道補正を自動化することで、兵士の射撃精度を底上げするのがNGSW計画の核心だ。つまりM8は、「軽くなったから性能が落ちた銃」ではなく、「システムとしての能力を保ったまま、人間側の負担を減らした銃」として設計されている。弾薬、射撃統制装置、銃の三点セットで能力を発揮するという発想は、M7から変わっていない。
約5万丁のM7はどうなるか
M8の登場で最も気になるのは、すでに配備された約5万丁のM7の扱いだ。2027会計年度の予算要求には、M8が1万4,944丁含まれている。一方で、M7の追加調達は要求されていない。陸軍の担当者も「M7の生産ラインはM8に切り替わった」と説明している。事実上、M7の新規調達は終わりに近い。M7の今後について、陸軍は方針を明らかにしていない。訓練部隊や州兵・予備役への再配分は有力な選択肢だろう。また、SIG社の担当者は、M7からM8への改修が5分以内でできる可能性があると述べている。これが実現すれば、既存銃を無駄にせずに更新できる。ただし、これはメーカー側の見解であり、陸軍が採用するかどうかは別問題だ。なお、NGSW計画のもう一つの柱であるM250自動小銃(M249分隊支援火器の後継)も、すでに一部部隊で運用が始まっている。2027会計年度の予算要求には、2,795丁が計上された。M7とM8が同じ弾薬を使うことで、補給面の整合性も保たれる。
評価の焦点は「短銃身」の代償
最後に、M8の評価を左右しそうな点を挙げておきたい。一般的に、銃身を短くすると、弾の初速は下がりやすい。また、発射時の炎や爆風も大きくなる傾向がある。さらに、銃身を軽くすることは、連続射撃時の熱管理や耐久性にも影響する。13インチから11インチへの変更が、6.8mm弾の貫徹力や有効射程にどこまで影響するのか。現場での検証結果を待つ必要がある。陸軍はこれまでのところ、M8でも弾薬の効果を維持できるとしている。ただ、その根拠が実戦に近い環境で確認されるのは、これからだ。
M7に懐疑的な見方は軍内部には当初からあった。海兵隊はM7を採用せず、従来のM27を使い続ける。特殊作戦軍もNGSW計画の銃器を採用していない。M8が、陸軍の外にまで評価を広げられるかも見どころだ。12月に始まる初期配備は、新しい小銃の完成度を問う最初の本格的な試験になる。重さと能力のバランスを、陸軍が現場の声でどこまで詰められたのか。M8の成否は、米陸軍の小火器近代化の方向性を占う材料になるだろう。
