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ウクライナのドローン部隊、米陸軍装甲旅団に損害の70% ドイツの演習で露呈した弱点

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army university press

ドイツで2026年春に実施された米陸軍の大規模演習で、ウクライナ軍のドローン部隊が米陸軍の装甲旅団に対し、演習序盤の損害の約70%を引き起こしていたことが明らかになった。ロシアとの戦争で実戦経験を積んだウクライナ軍のドローン戦術が、米軍の装甲部隊にも大きな脅威となった形だ。しかし、注目すべきなのは米軍が苦戦したことだけではない。米軍は部隊の分散や偽装、移動方法などを見直し、ドローンに起因する損害の割合を30%未満にまで低下させた。さらに、攻勢段階では700機を超えるドローンを運用し、敵陣地の突破にも成功している。今回の演習は、ドローンが地上戦を変えつつある現実と、それに適応するために必要な戦術の両方を示した。

参考・引用:Conducting the Offense Through Drone-Enabled Maneuver in Europe

ウクライナ軍の実戦経験が米軍の装甲部隊を苦しめる

US Army

問題の演習は、米陸軍がドイツ南部バイエルン州のホーエンフェルス訓練場で実施した「Combined Resolve 26-07」だ。訓練全体は2026年4月9日から5月10日まで行われ、7カ国から3,600人以上が参加した。対戦したのは、米陸軍第1騎兵師団第3装甲旅団戦闘団「グレイウルフ」と、敵役部隊に加わったウクライナ軍無人システム軍第412連隊「ネメシス」の分遣隊だ。グレイウルフはM1A2エイブラムス戦車やM2ブラッドレー歩兵戦闘車などを運用する装甲部隊である。一方、ネメシスはロシアとの戦争でドローンの運用経験を積んできた部隊だ。

米陸軍の専門誌『Military Review』に掲載された、旅団長マイケル・ジーゲルホーファー大佐ら7人の将校による分析によると、訓練序盤には米軍部隊の損害の約70%が敵側のウクライナ軍のドローンに起因していた。約10日間の訓練局面で、敵側がドローンを使って接触・攻撃を開始した回数は750回を超えたという。ここで重要なのは、70%という数字の意味だ。これは米軍の戦車や兵士の70%が失われたという意味ではない。演習上で損害判定された対象の7割にドローンが起因していたということだ。当然ながら、演習なので車両や兵士が実際に破壊・死傷したわけでもない。それでも、米軍の装甲部隊がドローン戦に十分適応できていなかったことを示す結果といえる。

偵察ドローンが装甲部隊を発見、砲兵が攻撃する

ウクライナ軍のドローン戦術の強みは、ドローン単体の攻撃力だけではない。偵察、目標の特定、攻撃までを短時間でつなぐ仕組みにある。偵察ドローンが敵の戦車や歩兵戦闘車を発見すれば、その情報を攻撃用ドローンや砲兵に伝え、打撃を加えることができる。ドローンが直接攻撃しなくても、位置を発見されることで砲撃を受ける危険が高まる。今回の演習でも、敵側のドローンは米軍の部隊を直接攻撃するだけでなく、砲兵による攻撃のために目標を発見する役割を果たしていた。この戦術が厄介なのは、装甲の厚さだけでは生存性を確保できない点だ。戦車がドローンの攻撃に耐えられたとしても、位置を特定され、砲兵や別の攻撃手段による集中攻撃を受ければ、行動を制限される可能性がある。つまり、ドローンが普及した戦場では、敵の攻撃を受け止める能力だけでなく、敵に発見されない能力も重要になる。

電子戦装備だけでは防ぎきれない

米軍は対ドローン装備や電子戦システムを保有していた。しかし、それだけで部隊を守りきることはできなかった。演習報告によると、電子戦装備はドローンの操縦信号などを妨害する防護範囲を形成したものの、装備を設置した地点から部隊が移動する際には防護の空白が生まれた。装備を前進させながら展開する間、車両や兵士が攻撃にさらされる危険があったのだ。さらに、光ファイバーFPVドローンも課題となった。こうしたドローンは細い光ファイバーケーブルを通じて操縦するため、無線通信を妨害する方式では操縦信号を遮断できない。電子戦は依然として重要だが、それだけでドローンを無力化することは難しい。そこで米軍は、部隊の分散、偽装、遮蔽、移動経路の変更など、基本的な戦術を徹底するようになった。森林の利用や車両間の距離の確保に加え、ドローンに発見された場合は砲撃が着弾する前に移動できるよう、対応手順を見直した。部隊の位置を探知されにくくするため、無線通信や位置情報共有システムの利用を制限する対応も行われた。

損害の割合は30%未満に低下 鍵は兵士の基本動作

米軍はこうした問題に対処し、演習3日目の終わりまでに、損害全体に占めるドローン起因の割合を30%未満に低下させた。敵側の攻撃圧力が弱まったのではなく、米軍が戦い方を変えたことが重要だ。しかし、その結果、補給にも影響が出て、部隊への補給に要する時間は計画の約2倍に延びたという。これは、ドローン対策が単に新しい装備を追加すれば解決する問題ではないことを示している。生存性を高めるために通信や補給の効率を犠牲にすれば、部隊の戦闘能力そのものにも影響が及ぶ。旅団長らは、旅団レベルの対ドローン戦闘において、約60%は兵士の基本的な現場技術や対応手順が占めると見積もっている。発見されにくい場所を選ぶこと、車両を分散させること、ドローンを発見した際に素早く行動することなど、基本的な行動の徹底が生存性を左右した。

演習に参加したブラックホーク中隊のアラン・ワトソン中隊長も、米軍側の経験を振り返る寄稿で、ネメシスのドローンが訓練区域への進入時点ですでに上空を監視していたと説明している。部隊は偽装を改善し、車両を分散させ、通常の道路ではなく森林や谷地形を利用して移動するなど、戦術を変更した。ワトソン中隊長は、今回の経験を重装甲車両が時代遅れになった証拠とは捉えていない。戦車や歩兵戦闘車には、軽装備の部隊では難しい地形を移動し、乗員を防護しながら目標を確保する能力があるためだ。今回の訓練は、装甲車両を捨てることではなく、ドローンの監視と攻撃を前提に、どのように運用するかを見直す必要性を示したといえる。

米軍も700機以上のドローンを運用して反撃

演習の後半、米軍は防御だけでなく、攻勢でもドローンを大規模に活用した。グレイウルフ旅団は、実験的なドローン部隊である第504落下傘歩兵連隊第3大隊の支援を受け、部隊レベルから旅団レベルまで700機を超えるドローンを運用した。中継用ドローンを活用することで、多くの機体は約25~40kmの活動範囲を確保し、訓練区域全体をカバーできるようになった。ただし、大量のドローンを運用したことで、今度は情報処理が問題になった。多数の機体から情報が送られ、司令部が状況を把握しきれなくなったのだ。従来の情報収集や作戦計画の仕組みは、少数のセンサーを管理することを前提としており、大量のドローンには対応できなかった。そこで米軍は、個々の機体を細かく指示する方式から、目標や優先順位を定め、現場の部隊に裁量を与える方式へと変更した。

敵のドローン管制所、指揮所、レーダー、電子戦装備などを優先目標とし、ドローンと砲兵の攻撃を連携させた。さらに、攻撃のタイミングを調整しながら複数地点で攻勢をかけた結果、グレイウルフ旅団は森林地帯の約6km離れた2か所で同時に敵陣地を突破したという。これは、大量のドローンを保有するだけでは十分ではなく、それらを統合的に運用する指揮・情報処理システムが不可欠であることを示している。

ドローン時代に戦車はどう生き残るのか

今回の演習は、ドローンによる偵察と攻撃が常態化した戦場では、従来の装甲部隊の運用方法を変えなければならないことを示した。今後は、戦車や歩兵戦闘車に加え、偵察ドローン、攻撃ドローン、電子戦装備、防空・対ドローン装備を一体として運用する必要がある。敵のドローンを妨害・迎撃するだけでなく、発進地点や管制所を発見し、無力化する能力も重要になるだろう。また、実戦経験を積んだウクライナ軍のドローン部隊が、米軍の装甲部隊に対して有効な戦術を示したことは重要だ。ドローンの脅威が高まる時代には、高価な装甲車両や高度な電子戦装備だけでなく、兵士の基本動作、情報共有、部隊間の連携が戦場での生存性を左右する。

今回の演習が突きつけた教訓は明確だ。ドローンが飛び交う戦場では、敵から発見されないこと、発見されても迅速に適応すること、そして自らもドローンを効果的に運用することが、地上戦の勝敗を左右する。 ウクライナで培われた戦術と経験は、今後の米軍やNATO各国の地上戦ドクトリンにも影響を与えていくとみられる。

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