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米国、F-35を今後10年で850機以上調達する枠組み合意 年156機の生産維持へ、稼働率改善も狙う

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米国防総省とロッキード・マーティンは2026年10月22日、F-35戦闘機の生産および維持整備に関する今後10年間の枠組み合意を発表した。米軍向けに最低850機を確保するとともに、米軍と海外顧客向けを合わせて年間156機の生産ペースを維持する。ロッキード・マーティンはこの計画を支えるため、少なくとも70億ドルを自社資金で投資する方針だ。
今回の計画は、単にF-35を大量調達するだけにとどまらない。長期的な生産基盤を安定させ、部品供給や整備体制の強化につなげる狙いがある。ただし、現時点で850機分の正式な購入契約が成立したわけではなく、実現には米議会による承認と予算措置が必要となる。

New Framework Agreement for Multiyear F‑35 Production and Sustainment

10年間で850機以上、世界全体では年間156機を生産

今回の合意は、F-35の生産ロット21~30を対象としている。米軍向けの850機以上に加え、海外顧客向けの注文も含めて年間156機の生産ペースを維持する計画だ。年間156機を10年間続けた場合、生産数は単純計算で1,560機となる。このうち米軍向けが最低850機で、残りは海外顧客向けの需要などに充てられる。ただし、海外向けの710機がすべて確定発注済みという意味ではないため、海外市場に向けた継続的な営業活動は必須だ。米軍向けの調達数は、単純平均すれば年間85機に相当する。長期的な調達の見通しを示すことで、製造企業や部品メーカーが設備投資や人員確保を計画しやすくする狙いがある。

F-35には、米空軍向けのF-35A、米海兵隊向けの短距離離陸・垂直着陸型F-35B、空母運用に対応したF-35Cの3タイプが存在するが、今回の合意では各タイプの具体的な調達数や軍種別の配分はまだ明らかになっていない。また、対象は機体の製造だけにとどまらない。初期予備部品や10年間の改修キット、維持整備も枠組みに含まれている。長期的に必要となる部品や整備を見据え、F-35を生産する段階から将来の運用を支える仕組みを整えようとしている点が特徴だ。

メーカーが70億ドル以上を投資 供給網の強化を目指す

今回の合意で特に注目されるのが、ロッキード・マーティンが少なくとも70億ドルを自社資金で投資する点だ。最先端戦闘機の生産には、最終組み立て工場だけでなく、レーダーや電子機器、エンジン関連部品などを供給する多数の企業が関わる。将来の注文が不透明なままでは、部品メーカー側も設備の増強や人材採用に踏み切りにくい。10年間の生産計画が見通せるようになれば、メーカーやサプライヤーは必要な設備投資を進めやすくなる。米国防総省は、こうした投資を通じて供給網(サプライチェーン)の強化、生産効率の向上、そして調達コストの抑制につなげたい考えだ。一方、投資によって生産能力が拡大したとしても、現場における部品供給や整備上の問題が直ちに解消されるとは限らない。設備投資を実際の納入数や運用能力の向上にどのように結びつけられるかが、今後の重要な課題となる。

F-35の稼働率は低下 保有機数の増加だけでは解決しない

今回の計画を理解するうえで見逃せないのが、F-35の稼働率をめぐる問題だ。米政府監査院(GAO)が2026年6月に公表した報告書によると、米軍全体のF-35が「少なくとも1つの任務を遂行できる割合」は、2021会計年度の67%から2025会計年度には44%へ低下した。さらに「割り当てられたすべての任務を遂行できる割合」も、同じ期間に38%から25%へと落ち込んでいる。米軍は現在約800機のF-35を受領しているが、保有する機体数と、実際に戦力として投入できる機体数がイコールではないことを示している。GAOは、予備部品の不足や整備上の問題、民間企業への高い依存度などを課題として指摘している。F-35は高度なセンサーや電子機器を備える一方、運用を継続するには安定した部品供給と高度な修理能力の確保が不可欠だ。そのため、今回の合意に予備部品や改修キット、維持整備までが含まれていることには大きな意味がある。機体の調達と配備後の運用を支える仕組みを一体的に整えることで、戦闘機戦力の維持・改善を目指すものだ。ただし、仕組みを整えるだけで直ちに稼働率が改善するわけではない。機体数が増加すればそれだけメンテナンスコストも跳ね上がり、全体の総数は増えても「運用可能な機体の割合」は十分に上がらない可能性がある。調達数の確保と並行し、実際の運用・整備体制をどこまで劇的に改善できるかが問われている。

正式契約には議会の承認と予算措置が必要

今回の発表は、今後10年間の生産・調達を安定させるための「枠組み合意」であり、850機分の正式な発注が完了したという意味ではない。複数年度にわたる購入契約を正式に締結するには、米議会から必要な権限を得るとともに、調達に必要な予算を確保する必要がある。機体の単価や軍種別の調達数、具体的な納入スケジュールなども、今後の正式な契約手続きの中で具体化されていく。長期契約が実現すれば、メーカーは将来の需要を見通して生産能力を整えやすくなるメリットがある。一方、米政府側には大量の機体を購入する予算だけでなく、導入後の膨大な維持整備費用も継続的に発生する。生産基盤を強化しながら、いかに長期的な運用費用を確保していくかも大きな課題だ。

日本にも関係するF-35の生産・整備基盤

F-35は米軍だけでなく、日本をはじめとする同盟国・パートナー国も多数運用する国際的な戦闘機だ。米国の生産・供給基盤が安定すれば、長期的には日本を含む各国への部品供給や整備能力の改善につながる可能性がある。ただし、今回の合意によって「日本向け機体の納入が前倒しになる」「調達価格が即座に下がる」と決定したわけではない。日本への実際の影響は、グローバルな供給網の改善状況や、今後の正式契約の内容によって左右される。

今回の計画の本質は、10年間にわたる長期的な需要の見通しを作り、F-35の生産を維持するとともに、配備後の運用を支える基盤を根本から強化することにある。今後の焦点は、米議会がこの長期契約を承認するか、正式契約で価格や納入日程がどう決定されるか、そして部品供給や整備体制の改善が実際の稼働率向上にどこまで結びつくかだ。850機という調達目標のスケール感だけでなく、「必要なときに確実に飛べるF-35をどれだけ確保できるか」――そこに、この10年計画の真の試金石がある。

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