

フランス陸軍が、装甲偵察車の砲手をFPV攻撃ドローンの操縦士へ転身させる取り組みを進めている。ウクライナ戦争でドローンの重要性が明らかになる中、従来の装甲車両を扱ってきた兵士を、新しい戦闘の担い手として再配置する試みだ。注目されるのは、戦車砲手とドローン操縦士という一見異なる職種に、目標を発見して攻撃するという共通の技能があることだ。
AMX-10 RCの砲手からFPV操縦士へ
⚔️ Dans les coulisses de l’EDC… Épisode 2 : retour sur les origines de l’escadron de drones de chasse. 🔥 Tout commence par un constat, une ambition et la volonté du 1er RIMa d’anticiper le combat de demain. ⚡️ Avant de voler, il a fallu oser. #1errima #capaciterre https://t.co/q3867j6kSE
— 1er Régiment d’Infanterie de Marine (@1er_RIMa) July 6, 2026
米軍事専門メディアDefense Newsが2026年10月30日に報じたところによると、フランス陸軍第1海兵歩兵連隊(1er RIMa)では、21歳のイゴール伍長がAMX-10 RCの105mm砲手からFPV攻撃ドローンの操縦士へ転身した。AMX-10 RCは105mm砲を搭載する装輪式装甲偵察戦闘車で、敵部隊の偵察や火力支援を担ってきた車両だ。イゴール伍長は2025年まで同車の砲手を務めていたが、2026年にはFPVドローンのゴーグルと操縦装置を手にする立場に変わった。また、約12年間AMX-10 RCに携わってきたトリスタン曹長も、現在はFPVドローン操縦小隊を率いている。つまり、若い兵士だけでなく、装甲偵察の経験を長年積んだベテランもドローン戦闘に転身しているのだ。
‘Open the hives’ — Why France is turning tank gunners into FPV pilots
砲手はドローン操縦士に向いている
戦車砲手とFPVドローン操縦士は、使用する装備も操作方法も異なる。しかし、両者には共通する能力がある。砲手は照準装置を通して周囲を観察し、敵の位置や動きを把握しながら攻撃目標を判断する。移動する車両を追跡し、攻撃の機会を見極めることも重要な仕事だ。一方、FPVドローンの操縦士も、ゴーグルに映し出される映像を見ながら目標を探し、周囲の状況を判断して攻撃する。つまり、目標の発見・識別・追跡能力や、攻撃のタイミングを判断する経験は、ドローン戦闘にも生かせる可能性がある。もちろん、ドローンを操縦するには新たな訓練が必要だ。また、フランス軍が砲手を優先的に選抜していると公表したわけではない。それでも、今回の転身事例は、従来の軍事技能を新しい兵器体系に応用できることを示す興味深いケースといえる。
戦車を前進させず、ドローンで攻撃する
第1海兵歩兵連隊が編成したのは「第1ドローン猟兵中隊(1er Escadron de Drones de Chasse)」だ。この構想は2023年末に生まれ、2025年のエストニアでの演習「Hedgehog 25」などを通じて実証が進められた。その後、同連隊は3個ある軽騎兵中隊のうち1個を、ドローンを主兵装とする実験部隊へ転換した。部隊は約120人で構成され、Defense Newsによれば、そのうち約100人がドローン操縦要員だ。指揮・兵站部隊に加え、偵察ドローン部隊1個、FPV攻撃ドローン部隊2個、徘徊型弾薬部隊1個の計4個の戦闘小隊を備えている。特徴は、偵察から攻撃までをドローンで一体的に実施することだ。偵察ドローンで敵の装甲車両や指揮所を発見し、FPVドローンや徘徊型弾薬で攻撃する。場合によっては、発見した目標の位置情報を砲兵部隊に提供して攻撃を支援する。
従来のAMX-10 RCでは、105mm砲で攻撃するために車両自体が射撃位置に展開する必要があった。一方、ドローン部隊では車両を隠蔽した場所に置き、そこから無人機を発進させられる。トリスタン曹長は、105mm砲には攻撃距離という利点があったものの、車両が目立つ問題もあったと説明している。現在は車両を隠してドローンを発進させることで、敵に位置を知られる危険を抑えようとしている。
演習で米軍部隊に大きな損耗判定
この部隊の有効性を示したのが、2025年にエストニアで実施されたNATO関連演習「Hedgehog 25」だ。フランス側は約10人のドローン操縦士を戦術部隊に投入。対抗部隊となった米陸軍の第7騎兵連隊第5中隊などには、M2A4ブラッドレー歩兵戦闘車も参加していた。フランス側の説明によると、戦術部隊全体の約5%にすぎないドローン操縦士が、わずか1日の演習で米軍側に与えた損耗判定の約20%を担った。さらに2026年の大規模演習「ORION 26」でも、敵の連隊指揮所4か所や兵站車列、対ドローン部隊、防空部隊などを攻撃対象として判定上の戦果を挙げた。偵察ドローンで前線から数km離れた指揮所を発見し、FPVドローンによる攻撃や砲兵部隊への目標情報の提供につなげている。ただし、これらは演習上の判定であり、実戦での撃破数ではない。Hedgehog 25では対抗部隊の対ドローン能力が十分ではなかったことも指摘されており、成果をそのまま実戦に当てはめることはできない。
フランス陸軍全体に拡大へ
第1海兵歩兵連隊の取り組みを受け、フランス陸軍は同様のドローン戦闘部隊を他の連隊にも拡大しようとしている。フランス陸軍公式広報誌TerreMagによると、第1海兵歩兵連隊の実験成果を基に、RICM、第35歩兵連隊、第5竜騎兵連隊、第7山岳猟兵大隊、第4猟兵連隊の5個連隊でも同様の構想を導入する計画が進められている。さらに、2026年10月のDefense Newsによれば、陸軍参謀総長ジャック・ド・モングロ将軍は、2027年夏までに約15個のドローン戦闘部隊を目指す方針を示した。一方、フランス陸軍公式誌は2026年6月時点で、第1海兵歩兵連隊の部隊も装備や戦術の実証を継続していると説明している。Defense Newsは同年4月初旬に作戦運用可能と認定されたと報じているが、実際の能力検証や装備改良はその後も続いている。
もちろん、ドローンには電子妨害や悪天候に弱いという問題があり、フランス軍も従来の兵器を不要にするものとは考えていない。実際、第6装甲旅団ではドローン操縦士に対しても、Akeron対戦車ミサイルや81mm迫撃砲の技能を維持させる方針を採っている。天候や電子妨害によってドローンが使えない場合でも、従来の兵器で戦闘力を維持するためだ。また、ドローンで敵に損害を与えても、地上の歩兵が不足すれば数で勝る敵部隊に突破される危険がある。ドローンは歩兵や装甲車両を置き換えるのではなく、従来の部隊を補強する戦力として位置づけられている。フランス軍の取り組みが示しているのは、戦車や装甲車の時代が終わるということではない。従来の装甲偵察兵が持っていた目標を発見・識別する能力をドローン戦闘に生かし、偵察と攻撃のあり方そのものを変えようとしているのだ。
装甲偵察車の砲手からFPVドローン操縦士へ。ウクライナ戦争が変えた戦場では、兵士に求められる専門技能もまた、大きく変わり始めている。
