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次世代爆撃機B-21レイダー、乗員構成をパイロット1名と兵器システム士官の2名体制にする案が浮上

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USAF

アメリカ空軍が次世代ステルス戦略爆撃機「B-21レイダー」の運用体制をめぐり、乗員構成を「操縦士1名と兵器システム士官(WSO: Weapons Systems Officer)1名」の2名体制とする案を検討していることが明らかになった。従来は「操縦士2名」とされていたが、近年の作戦環境の複雑化に対応するため、人員構成を見直す動きが浮上している。

この案は、11月4日に退任した地球規模攻撃軍団(AFGSC)司令官のトーマス・ビュシエール大将が2025年8月中旬に内部メモとして提案したもので、「B-21は1名のパイロットと1名の兵器システム士官で運用されるべき」と明記されていたと、米軍関係者が複数のメディアに証言している。軍内の一部文書が報道各社に流出したことで、この提案は一気に注目を集め、米空軍参謀長のスコット・フロイス中将は当該の提案が本部に提出されたことを認めつつ、最終的な決定はまだ下されていないと述べた。

マルチタスクを求められるB-21レイダー

B-21レイダーは、B-2スピリットの後継として開発された長距離ステルス爆撃機で、核・通常兵器の双方を搭載可能。空中給油によって地球上のあらゆる目標を攻撃できるほか、AIや自律制御技術を活用した「ネットワーク中心型作戦」を前提としている。そのため、単なる爆撃任務にとどまらず、無人機との連携・電子戦・サイバー戦・センサー管理など多岐にわたるタスクを同時に遂行する必要がある。ビュシエール大将のメモによれば、こうしたマルチドメイン任務では、操縦に加えて戦術判断を担う「戦闘システム専門官」の存在が不可欠だという。具体的には、目標認識・兵器選択・電子妨害の判断・無人機群との連携など、AIが完全に代替できない意思決定部分を担当する想定だ。

B-21は高度な自動化を前提としており、将来的には「1名操縦」あるいは「完全自律運用」も視野に入れて設計されている。だが、空軍内ではAIの信頼性や、予期せぬ状況での対応力に対する懸念も根強い。特に核抑止任務や有人機群との連携を伴う戦域では、「最終判断を人間が行うべき」とする意見が強く、操縦士1名に加えて戦術担当官を配置する案が現実的とみられている。

複数の空軍関係者は、「AIと自動化によって操縦士の負担は軽減されたが、情報処理量はむしろ増加している」と指摘しており、人間による判断力と柔軟性を維持する狙いがあると分析されている。もっとも、空軍がこの案を正式に承認したわけではない。ノースロップ・グラマン社が開発するB-21は現在、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で飛行試験を継続中であり、量産型の最終仕様はまだ確定していない。空軍の公式資料や報道発表でも、乗員構成は「2名」とだけ記され、役割の内訳については明示されていない。

アナリストの間では、「AI支援が進化すれば、兵器システム士官の役割は将来的にAIが補完する形に変わる可能性がある」との見方もある。つまり、初期運用段階では人間2名体制だが、ソフトウェア更新や運用ノウハウの蓄積により、将来的には「操縦士1名+AI支援」という形へ移行する可能性があるという。

爆撃機は長時間任務を強いられる

爆撃機であるB-21の任務は、敵防空圏を突破して長時間飛行することが前提となる。実際、今年6月にイラン空爆を行った米空軍のB-2スピリッツ爆撃機は44時間飛行している。長時間の運用は操縦士への負担が大きく、緊急時対応や疲労管理の観点からも、パイロット2名体制のほうが安全性と信頼性が高いとされ、実際、米空軍の現行爆撃機であるB-52、B-1B、B-2はいずれもパイロット2名体制だ。仮にパイロット1名とWSO体制になったとしても万が一の時に備え、WSOにも操縦できるスキルが求められるかもしれない。「操縦士1名+AI支援」に関しては特に核任務を伴う戦略爆撃で、操作の二重確認や判断の共有が安全保障上の重要要素となるため、一人は懸念がある。

空軍は今後数年以内にB-21の初期運用能力(IOC)を確立し、2030年代初頭に本格配備を開始する見通しだ。その時点でどのような乗員構成が採用されるかは、今後のAI運用技術の成熟度や戦略ドクトリンの変化に左右されるとみられる。現時点で明確なのは、B-21が単なる「新しい爆撃機」ではなく、AIと人間の役割分担を実戦レベルで再定義する最初のステルス戦略機になるということだ。操縦士1名と兵器システム士官1名のコンビが未来の空戦を担うのか、それともAIがその席を奪うのか。B-21の運用決定は、次世代の航空作戦の方向性を占う試金石となるだろう。

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