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Anduril、UAEと共同開発した「Omen」VTOLドローンを発表 スウォーム運用にも対応

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© 2025 Anduril Industries

米国の防衛テクノロジー企業Anduril Industriesとアラブ首長国連邦(UAE)の国防大手 EDGE Group は、共同開発した新型 VTOL(垂直離着陸)無人航空機「Omen(オーメン)」を正式に発表した。両社は合弁企業「EDGE–Anduril Production Alliance」を設立し、今後はUAEで大規模生産体制を確立する。最初の大型契約としてUAEが50機を発注し、2028年末のフルレート量産を目指す。中東地域で最先端の無人航空機を量産するという意味でも、戦略的に大きな注目を集めている。

EDGE Group and Anduril to Form UAE-US Joint Venture to Develop Autonomous Systems

Omen VTOL無人機

Omen は米国防総省の分類で「Group 3」に属する全高3mの中型無人航空システム(UAS)だが、その性能とコンセプトは従来の同サイズ帯を大きく超える。最大の特徴は、垂直離着陸を可能にする「テイルシッター(尾立ち)」デザインと、電動モーターと内燃機関を組み合わせたハイブリッド推進方式だ。離着陸時は機体を垂直に立て、巡航時には水平にして飛行することで、固定翼のような高効率の飛行性能を実現する。

推進方式はシリーズ・ハイブリッドで、内燃機関は発電を担当し、実際にプロペラを回すのは電動モーターという構造だ。これにより、中型クラスでありながら長時間飛行と高いペイロード能力を両立した。Andurilは、同クラス機の「3~4倍の航続距離」「3~5倍のペイロード容量」を持つとしており、ISR(情報・監視・偵察)センサー、電子戦装置、通信中継モジュールなど、多様な装備を迅速に交換できるモジュール構造も採用している。同じグループ3に分類され、垂直離着陸、水兵飛行する「V-BAT」が飛行時間10時間、航続距離が130km、ペイロードが18kgになるので、その3倍以上となると性能が飛びぬけているのが分かる。運用面でも柔軟性が高い。テイルシッターデザインにより滑走路を必要とせず、前線や島嶼地帯、遠隔地でも運用可能。さらに、機体は折りたたみ式で、輸送箱に収めた状態から2人で数分で組み立て可能とされ、臨機応変な展開に適している。重量物を装備した固定翼機の機動性と、回転翼機の即応性を兼ね備える点は、災害支援や治安維持任務にも応用できる。

Omen のもう一つの大きな特徴は、Andurilが開発した自律型ミッション管理ソフトウェア「Lattice」を搭載していることだ。Lattice は複数機による協調飛行を前提に設計されており、各機が収集した情報を共有しながらリアルタイムでルートや任務を再構築することができる。これにより、単機のISR任務から、複数ドローンによる広域監視、通信ネットワークの即時構築、電子戦支援まで、多様なミッションを人間の介在を最小限に抑えた形で遂行できる。

軍事面では、通信環境が脆弱な地域での情報収集、地上部隊の前進支援、重要インフラの監視、さらには電子妨害や通信中継などの支援任務が期待される。一方、民生用途では災害時の通信インフラ回復や物資投下など、継続飛行と自律性を活かした活用可能性が指摘される。特に中東地域は広大かつ過酷な環境が多いため、滑走路を必要としないOmenの設計は地域ニーズに合致している。

今回の合弁事業は、米国の先端防衛技術とUAEが近年強化している国内防衛産業基盤の融合という点でも重要だ。UAE政府は自国生産能力の拡大と輸出を見据えており、Omen は同国の新たな輸出商品として期待されている。

無人航空機は中型クラスの性能向上が著しい分野であり、これまで大型機が担っていたミッションをより低コストで柔軟に実施できるかどうかが各国の関心となっている。Omen は、その「中型の機動性」と「大型級の能力」を併せ持つことから、今後のUAS市場に大きな影響を与える可能性がある。今後は実運用での信頼性、自律機能の精度、メンテナンス負荷などが評価の鍵となるが、現時点では次世代VTOL無人機として最も注目すべき機体の一つと言えるだろう。

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