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突撃戦法は止める?ロシア軍がドローンを取り入れた新たな歩兵教義を採用

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ロシア軍は、長期化する戦争と深刻な人員不足に対応するため、ソ連時代からの歩兵による突撃戦術から脱却し、ドローンやロボット技術を統合した新たな歩兵教義を採用していると報告されています。ウクライナの調査分析グループ「DeepState」やディフェンスブログの報告によると、ロシア軍は人員不足への対応として、無人地上プラットフォーム(UGV)やLoitering弾(滞空無人爆弾)、FPVドローンといった無人システムによる戦術を強化し、歩兵への依存を減らす新ドクトリンへの移行を進めています。

Russia adopts new infantry doctrine amid manpower strain

従来の戦術からの転換

これまでの歩兵や装甲車による正面からの突撃は「自殺に近い」とされ、多大な損失を招いてきました。この反省に基づき、ロシア軍は人員と装備の損失を最小限に抑えるため、ドローンや砲兵による精密な支援のもと、歩兵が徒歩で着実に前進する手法を採用し始めています。これは、無謀な突撃による人的・物的損失を避けるための、より計算されたアプローチと言えます。

第二次世界大戦の教訓と現代技術の融合

ロシア軍は、第二次世界大戦で使われた突撃小隊の概念を継承しつつも、旧式化したソビエト時代の複合火力戦術を再構築し、現場での教訓から得られた新たな戦術を統合しています。これにより、従来よりも機敏で柔軟な突入部隊の編成が進められています。具体的な戦術としては、まずドローンで目標を偵察し、砲兵や空爆で敵を掃討した上で、歩兵を段階的に投入するという多段階戦法が採用されています。これは従来の大量突撃とは異なり、損失を減らすことに貢献しているとされています。

小規模分散型攻撃への移行

これまで行われていた中隊規模の縦隊による大規模攻撃は、もはや主流ではなくなりました。その代わりに、ドローンの支援を受けた2人から4人規模の小集団による攻撃行動が増加しています。人員総数は変わらないものの、部隊が分散して独立して活動することで、ウクライナ軍の攻撃も分散化させることができ、一度の攻撃による損害を低減する効果が期待されています。

精密な偵察と側面攻撃の重視

報告によれば、ロシア軍は小火器による直接的な戦闘やウクライナの防衛陣地への正面攻撃を最小限に抑える傾向にあります。まずドローンによる偵察を行い、砲兵や空爆、FPV自爆ドローンで敵を掃討した後、歩兵は防衛線を迂回するか、側面から攻撃するという戦術を取り入れています。さらに、陽動作戦部隊による後方への侵入を図ることで、敵の混乱を誘い、全体の戦術的優位性を確保しようとしています。

依然として残る「無謀な突撃」の現実

しかし、「無謀な突撃」が完全に姿を消したわけではありません。依然として多くの犠牲を伴う歩兵突撃が発生している事例も報告されています。ウクライナ側は、ロシア軍が「数百の歩兵と数十の装甲車両」を組織的に動員した大規模突撃も行っていると報告しており、こうした戦術が新たな段階の攻勢として認識されているとしています。ロシア軍では、「通常部隊」「突撃部隊」「廃棄可能な部隊(disposable troops)」などで部隊を再編しており、ドローンを使った攻略部隊は、ある程度練度が高い歩兵が担っていると推測されます。

過去の大規模動員と人的損失

2022年2月末に開始されたウクライナ侵攻では、当初の電撃戦が失敗に終わり、早期に膠着状態に陥りました。ロシア軍はキーウ周辺からの撤退を余儀なくされ、ウクライナ軍の反撃により北部方面からも後退しました。これに対し、プーチン大統領は2022年9月21日に予備役の部分的動員令を発令し、2023年11月までに30万人が招集され、ロシア軍の規模は115万人となりました。また、民間軍事会社ワグネルを通じて最大18万人の囚人が徴集され、多くの人員を確保して採られた戦術が、ソ連軍時代から続く「人海戦術」でした。これは、損害を顧みず、圧倒的な火力と物量をもって進撃する戦術です。

この戦術で、2023年5月には東部の要所バフムートを陥落させましたが、10ヶ月に及ぶ戦闘でロシア軍は10万人以上の兵員を失いました。同年10月には同じ戦法でアウディーイウカに猛攻撃を仕掛け、翌2024年2月には制圧しましたが、5ヶ月間の戦闘で5万人を失ったとされています。プーチン大統領はこれまでに60万人以上を追加動員し、ロシア軍の規模は150万人となりましたが、損害は100万人を超えるとの報告もあり、人的損失の規模は依然として甚大です。

ロシア軍の新たな歩兵教義は、過去の教訓と現代の無人システム技術を融合させ、より効率的で損失を抑えた戦闘を目指していることが明らかです。しかし、一部では依然として旧来の無謀な突撃が見られ、多大な人的損失を伴う現実も存在します。ロシア軍は、部隊の再編と戦術の柔軟な適用を通じて、戦況を有利に進めようとしていますが、ウクライナ軍の抵抗も強く、今後の戦いの行方は依然として不透明です。

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