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F-35のコストが50%近く高騰!採用国は調達計画を見直すかもしれない

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F-35のコストが50%近く高騰!採用国は調達計画を見直すかもしれない
USAF

カナダ政府はF-35ライトニングII戦闘機88機の購入計画を進めているが、会計検査院の報告によると、F-35の調達コストは当初の見積もりを少なくとも45%上回り、計画の遂行に重大な影響を及ぼす可能性がある。この状況を受け、発注数の削減、および欧州製の代替案の検討に迫られている。

海外メディアの報道によれば、カナダ会計検査院監査総監のカレン・ホーガン氏は、インフレ、為替レートの変動、武器需要の増加により、F-35の調達コストが上昇し、最終的な請求額が少なくとも277億カナダドル、最大で332億カナダドルに達する可能性があると指摘した。カナダ政府は、老朽化したCF-18戦闘機群の後継機として、2023年1月に190億カナダドルの契約を発表していたが、今回の見積もりはこれを少なくとも45%上回る。ホーガン氏は、国防省の調達アプローチには脆弱性があり、潜在的な脅威の影響を最小限に抑えるための積極的な対策が不足しており、プロジェクトには十分な緊急時対応計画が存在しないと批判した。また、2018年に会計検査院が指摘したパイロット不足の問題が依然として大きなリスクであると指摘し、訓練施設の建設が予定より3年遅れていることを明らかにした。

F-35の価格は今後も上昇する可能性が高い。トランプ政権下で実施された関税措置はF-35のサプライチェーンに影響を与え、特に原材料(鋼・レアアース等)のコストが増加している。F-35のエンジン、センサーを手掛けるRTXコーポレーションだけでも、今年850億ドルの影響を見込んでいる。発注数が増加してこともありロット14ではF-35Aの単価が約8250万ドルまで低下したが、ロット15以降はインフレ、関税、追加機能、維持費などの要因により価格上昇が避けられない状況にある。また、維持費は1機あたり年間約660万ドルと、米国防省が目標とする410万ドルを大幅に上回っている。

欧州製戦闘機の調達を検討

価格高騰により、カナダ政府はF-35の調達計画の見直しを迫られている。実際、カナダ政府は以前からF-35の調達計画の見直しを行ってきた。トランプ大統領の「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」という発言や追加関税措置により両国関係が悪化したことがその背景にある。今年3月に就任したマーク・カーニー首相は、カナダが安全保障面で米国に過度に依存している点を懸念し、「カナダの国益に合致しているか?他に最良の選択肢がないか?」という観点から、F-35の調達契約の見直しを命じた。現在、カナダ政府はF-35の代替として欧州製戦闘機の調達を検討している。その候補の一つが、スウェーデンのSaab社製グリペンE/Fである。ステルス性能を持たない第4世代戦闘機であるが、マッハ2の最高速度、スーパークルーズ能力、2,500kmの航続距離を有し、その能力は十分である。また、アップグレードが容易なモジュール設計を採用しており、最新のアビオニクスを搭載できる。グリペンは小型で離陸距離が短く、整備されていない滑走路や舗装道路からの離発着が可能であり、これはカナダの遠隔地である北極地域に適している。さらに、1機あたりのコストは4000~6000万ドルとF-35の約半分であり、1時間当たりの飛行コストは5,800ドルとF-35の7分の1、ライフサイクルコストはF-35の約60%である。2026年までに防衛費GDPの2%達成を目指す中で、投資の有効性が問われており、この価格は魅力的だ。

もう一つの候補は、フランス・ダッソー社のラファールである。ラファールは中東、アフリカなどで実戦経験があり、現在最も売れている第4.5世代戦闘機である。最新版は2019年に開発が始まった「F4」規格であり、長距離での空中ステルス目標の検出を容易にするレーダーとセンサーのアップグレード、ヘルメットに取り付けられたディスプレイの機能向上が行われている。また、通信機器の改良により、ネットワーク中心の現代戦に適応している。次期F5も開発中で、適合型燃料タンク、レーダー断面積低減キット、無人ステルス機と連携するウィングマン機能が搭載される予定である。さらに、フランス政府はカナダ国内でのラファール現地生産のために技術供与を行う用意がある。

しかし、カナダ政府がF-35の調達を完全に中止するわけではない。カナダ政府は計画していた88機のうち、第一陣16機分の支払いを完了しており、最初のF-35は2026年に納入される予定である。また、隣国の米国をはじめ、イギリス、オランダ、ノルウェーなど多くのNATO加盟国がF-35を運用しており、ドイツ、フィンランド、チェコなども調達を決定している。F-35は同盟国システムとの相互運用性により共同作戦が容易になるというメリットがあり、一定数の調達は必須である。とはいえ、トランプ政権下で米国とその他NATO加盟国の間で生じた亀裂や、F-35のコスト上昇を受けて、カナダ政府の今後の動向が注目されている。

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