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F-35Aの墜落は着陸装置が凍結し、システムが地上にいると認識したため

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2025年1月下旬、米空軍のF-35A戦闘機がアラスカ州フェアバンクス近郊のイールソン空軍基地での訓練飛行中に墜落するという重大な事故が発生しました。この事故では、パイロットは緊急脱出し、幸い軽傷で済みましたが、1億9,650万の機体は失われました。この事故を受けて、空軍航空機事故調査委員会(IAB)が詳細な調査を実施し、その結果が今月26日に公表されました。

Press Release: Aircraft Accident Investigation Report Released for Eielson F-35 Crash

事故原因の詳細

IABの報告書によると、事故の主な原因は、航空機の油圧系統内で水に汚染された作動油が凍結したことでした。この凍結により、着陸装置が正しく機能しなくなったことと、F-35の高度なシステムが根底にあります。

事故当日の午前10時42分頃、当該機が訓練のために格納庫を出た際の気温は-18℃でした。離陸準備と先に離陸した他の5機のF-35の軽微な問題のトラブルシューティングをまっている間、当該機は地上で約40分間待機しました。この待機中に、前脚内部を流れる水に浸かった油圧液が凍結し始めます。
午後11時22分の離陸直後、前脚が正しく格納されないという問題が発生しました。パイロットは装置を降ろそうと試みましたが、これも失敗し、車輪自体が左に傾いたままロックされてしまいます。
着陸装置の不具合の原因が不明なまま、パイロットと僚機は高度9,500フィートで約50分間、飛行場上空を旋回し続けました。この間、パイロットは管制塔の飛行監督者と連絡を取り、監督者は航空機メーカーであるロッキード・マーティン社の技術者との電話会議を設定しました。この電話会議には5人のメーカーエンジニアが参加し、解決策を模索しました。

対応チームは、機体の着陸装置の状況を改善するため、「タッチアンドゴー」を提案しました。これは、着陸の衝撃によって機首のギアがまっすぐになり、本着陸時の横転や滑走路逸脱のリスクを軽減できるのではないかという期待に基づいたものでした。パイロットはA-10攻撃機で約1,700時間、F-35で555時間の飛行経験を持つベテランでしたが、最初のタッチアンドゴーで前輪を戻すことできませんでした。そこで、さらに速いスピードでのタッチアンドゴーが提案されましたが、この時点では既に氷結が進んでおり、前輪と右主脚の両方が完全に展開または格納できなくなっていました。
この状況が事態をさらに悪化させました。着陸装置に不具合が生じたことで、機体の重量が車輪にかかることを検知するセンサーが混乱し、システムはF-35が地上にいると誤認識し始めました。
正午を過ぎた12時48分には、左主脚も展開できなくなり、システムは機体が完全に地上にいると判断しました。その結果、機体は時速400km以上で飛行中であったにもかかわらず、飛行中の制御から地上制御に切り替わってしまいました。これにより、機体はパイロットの操縦操作に反応しなくなり、「制御不能」な状態に陥りました。滑走路上わずか約100メートル上空という危機的な状況で、パイロットは緊急脱出を余儀なくされました。

根本原因と組織的問題

調査官は、墜落の根本原因は汚染された作動油にあると結論付けました。さらに、この問題は単なる偶発的なものではなく、所属する第355世代戦闘飛行隊の組織的な問題が背景にあることも明らかになりました。

具体的には、第355世代戦闘飛行隊は人員不足に陥っており、専任の危険物プログラムマネージャーも不在であったことが判明しました。これにより、作動油の取り扱いに関する厳格な規則が遵守されていなかったと報告されています。結果として、機体に作動油を充填するために使用された整備カートに水が侵入し、その結果、水を多く含んだ作動油が機体に使用されてしまったのです。

この事故は、航空機の複雑なシステムと、それを支える適切な整備プロトコル、そして組織的な管理体制の重要性を改めて浮き彫りにしました。人的資源の不足や規則遵守の不徹底が、このような重大な事故につながる可能性を示唆する事例となりました。

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