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フィンランド軍、小火器のソ連規格をNATO標準口径に移行する事を表明

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Finnish Defence Forces 

フィンランド国防軍(FDF)は、長年にわたり使用してきた旧ソ連/ロシア規格の小火器用弾薬から、NATO標準口径への移行を正式に発表しました。この戦略的転換は、装備の近代化、NATO加盟後の運用互換性の確保、そして弾薬供給の安定化を目的としています。具体的には、5.56×45mm、7.62×51mm、9×19mm、12.7×99mm(.50BMG)といったNATO標準口径の弾薬が今後の新規小火器調達の主流となります。

The Finnish Defence Forces to shift to using NATO-standard calibres for new small arms

この決定に伴い、フィンランドは隣国スウェーデンと共同で新型ライフルシステムの調達・運用統合を進めています。この中核となるのが、フィンランドのSako社が開発したM23ファミリー(スウェーデン向け名称AK24など)です。M23ファミリーは、歩兵用の5.56mm型からマークスマン・狙撃用の7.62mm型まで一貫したプラットフォームを提供し、両国の軍事協力の象徴となっています。

歴史的背景と移行の必然性

フィンランドがソ連/ロシア製規格の小火器を使用し始めたのは、1917年のロシア帝国からの独立にまで遡ります。ロシア革命によるロシア帝国の滅亡後、フィンランド国内には膨大な数のソ連製モシン・ナガン歩兵銃とその弾薬が残されました。第二次世界大戦中の継続戦争でソ連に敗北した歴史的要因、そしてソ連/ロシアと隣接する地理的要因から、フィンランドはこれまでソ連由来の小火器と弾薬を使用し続けてきました。

しかし、2023年のNATO加盟を機に、同盟軍との共同作戦や演習、そして戦時における弾薬補給の側面から、NATO標準口径を採用する論理的必要性が飛躍的に高まりました。ロシアによるウクライナ侵攻以降、これまでソ連規格の装備を使用していた東欧・中欧諸国も次々と西側製装備への切り替えを進めており、特に大量消費が想定される歩兵用弾薬においては、NATOの広範な生産・供給網にアクセスできることは極めて大きな利点となります。フィンランド国防軍は、「新規小火器についてはNATO標準を採用する」と公式に発表し、運用互換性の向上と供給安全性の確保を移行理由として明確に挙げています。

新小銃M23

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フィンランドは既に同じくNATO新規加盟国であるスウェーデンと協定を結び、フィンランドのSAKO社が新たに開発したNATO標準口径の5.56×45mmおよび7.62×51mmライフルのM23ファミリーの共同調達を進めています。M23は設計段階から両国の要求を取り入れており、歩兵用の5.56mm型から7.62mmのマークスマン/狙撃銃まで一貫して供給可能なファミリープラットフォームです。スウェーデン軍ではAk24という名称で採用されており、両国の部隊間での互換性を高めています。

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主力小銃として使用されてきた7.62×39mmは今後、5.56×45mmに置き換えられます。また、マークスマン・狙撃銃の口径として使用されてきた7.62×53mmRは、7.62×51mmに変わります。

移行期間中の課題と対策

しかし、移行期間中は旧口径と新口径の弾薬が混在し、部隊による弾薬の誤供給や在庫管理のミスが生じるリスクが指摘されています。このため、フィンランド国防軍は新口径および新ライフルの配備を正規軍から優先的に進め、ソ連口径規格の装備は徴兵訓練や予備役訓練などで使用するといった形で棲み分けを図る可能性があります。また、森林や豪雪地帯といったフィンランド特有の国土条件での今後の運用評価次第では、地域ごとに運用方針が変わることも考えられます。

フィンランドのNATO口径への移行は、即時の全面切替ではなく「計画的かつ段階的」に行われる見通しです。スウェーデンとのSako社を核にした共同調達は、単独調達よりもコスト面・供給面で有利であり、両国の軍事互換性を高める重要なステップです。しかし、混在期間における運用管理の複雑さ、移行にかかるコスト負担、そして寒冷な森林地帯といったフィンランド特有の環境下での実効性検証など、解決すべき課題も依然として多く存在します。フィンランド国防軍はこれらの課題に戦略的に取り組みながら、NATOとの連携を強化し、防衛能力を一層向上させていくことになります。

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