

米空軍が沖縄県の嘉手納基地に恒久配備する最新鋭戦闘機「F-15EX イーグルII」の初号機が完成し、日本配備に向けた段階へ移行した。長年にわたり嘉手納の防空を担ってきたF-15C/Dの後継として、実戦部隊への配備が目前に迫る。F-15EXの登場は、同基地を拠点とする米空軍の航空戦力と運用のあり方を大きく転換させる重要な節目となる。
嘉手納仕様の初号機がポートランドへ移動、2027会計年度の配備開始へ
EXciting progress for F-15EX!
— Boeing Defense (@BoeingDefense) September 3, 2026
We've delivered the 22nd F-15EX to the @usairforce. The aircraft will be the first F-15EX destined for @KadenaAirBase in Japan. pic.twitter.com/RlrTKuCCFl
嘉手納基地向けとして製造された最初のF-15EX(機体番号「22-0022」)は、2026年8月4日にボーイングのセントルイス工場で初飛行を行った。機体には嘉手納所属を示す「ZZ」のテールコードと、第18航空団のマーキングが施されている。同機は8月28日にセントルイスを出発し、オレゴン州ポートランド空軍州兵基地へ到着した。同基地で最終調整や運用準備を経た後、2027会計年度(2026年10月以降)から開始される嘉手納への実機デリバリーに備える。これまで「計画」段階にあったF-15EXの嘉手納配備が、実機のロールアウトによって本格的な実行フェーズに入ったことを意味する。
36機を恒久配備、F-15C/Dから新世代への完全移行
米国防総省は2024年、嘉手納基地のF-15C/D(約48機)を退役させ、36機のF-15EXを恒久配備する計画を発表した。F-15C/Dは1970年代に登場し、1979年の嘉手納配備以来、45年以上にわたり西太平洋の防空を支えてきた。しかし機体の老朽化に伴い退役が進み、2025年1月には第67戦闘機世代整備飛行隊(67th FGS)の発足とともに、現役部隊によるF-15Cの最終運用飛行が行われた。後継となるF-15EXは、既存のF-15の基本構造をベースとしながら、最新のアビオニクス、APG-82 AESAレーダー、EPAWSS(イーグル受動・能動警告生存性システム)などを搭載した大幅な近代化モデルである。
事前飛来と人員訓練で整えられた受け入れ体制
機体の到着に先立ち、嘉手納基地では着々と受け入れ体制が構築されてきた。2025年7月、エグリン空軍基地の第85試験評価飛行隊に所属する2機のF-15EXが嘉手納に初飛来し、現地部隊との慣熟訓練を実施。2026年6月末にも同飛行隊のF-15EXが再び嘉手納へ展開し、F-15Eとともに実戦的な運用データの収集や統合訓練を行っている。さらに、現地整備員の訓練や専用設備のアップデートも並行して進められており、機体が届いてから準備を始めるのではなく、受け入れ基盤を完成させた状態で初号機を迎える万全の態勢が整えられている。
インド太平洋における「火力の要」としての新たな役割
F-15EXが嘉手納で担う役割は、従来のF-15C/Dのような単独の防空任務にとどまらない。中国軍がJ-20などのステルス機や長射程ミサイルを増強するインド太平洋において、米空軍は単なる機数維持ではなく「質の連携」を重視している。F-15EXは、F-35AやF-22といった第5世代ステルス戦闘機が「敵を察知・追跡する目」となり、そのデータを共有して遠距離から大量の兵器を投射する「ミサイル・キャリアー(火力プラットフォーム)」として機能する。F-15EXは圧倒的な兵装搭載能力(空対空ミサイル最大12発以上や大型長距離兵器)を誇り、ネットワーク化された現代空戦において絶大な打撃力を発揮する。
既存のF-15系列のインフラや運用経験を継承しつつ、圧倒的な火力と最新電子戦能力を備えた36機のF-15EX。その常駐配備は、嘉手納基地のみならず、米空軍のインド太平洋における抑止力と空戦戦略が新たな次元へと進化したことを明確に示すものである。
