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インドが防衛計画で将来的な原子力空母の導入を掲げる

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INS Vikrant(Wikipedia)

インド国防省が発表した軍の近代化計画は、核動力推進艦艇、特に将来的な原子力空母の導入を視野に入れており、インドの海軍力強化に対する野心的な姿勢を示しました。この計画には、海軍によるインド製戦闘機の初導入も含まれており、国産防衛産業の強化も同時に推進されています。

インドメディアの報道によると、インド国防省が5日金曜に発表した「15年間の国防近代化計画(15-year defence modernisation plan / roadmap)」では、「原子力推進の艦艇(nuclear-powered warships)」の導入と、将来的な「原子力空母を含む新たな航空母艦建造」が明確に掲げられています。これに加えて、海軍によるインド製の艦上戦闘機の導入も計画されており、これは自給自足の防衛能力向上への強い意思を示しています。現在、原子力空母を運用しているのは米国とフランスの2カ国のみですが、中国も原子力空母の建造を進めていると報じられており、インドのこの動きはライバルである中国、そしてその同盟国であるパキスタンに対抗する狙いがあると分析されています。

現在、2隻の空母を運用

インド海軍は現在、ソ連で建造され2014年に就役した重航空巡洋艦「アドミラル・ゴルシコフ」を改修した「INS Vikramaditya(ヴィクラマーディティヤ)」と、これをベースに国内で建造され2022年に就役した「INS Vikrant(ヴィクラント)」の2隻の通常動力型空母を運用しています。これら通常動力型空母は航続距離や作戦継続期間に限界があるため、原子力空母の導入は作戦継続能力を大幅に向上させることが期待されます。これは中国への対抗だけでなく、インド洋全域における影響力拡大というインドの戦略的野心を強く示唆しています。

空母や将来の軍艦を支えるためには、少なくとも10基の原子力推進システムが必要とされており、インドの原子力委員会(Atomic Energy Commission)のアニル・カコドカル議長は、「インドは原子力空母や原子力推進艦艇を建造する技術的専門性と能力を有している」と自信を表明しています。しかし、原子炉を搭載できる艦体設計、推進システム、核燃料の供給・管理、原子炉の安全管理など、非常に高度で専門的な技術とインフラが必要であり、これらを自国の技術力のみで開発するのは極めて困難な挑戦です。

原子力潜水艦は既に国産化

INS Arihant(indian Navy)

インド海軍は、インド初の国産原子力潜水艦アリハント級の建造・運用実績を持っています。全長約110m、排水量6,000トン級の原潜で、SLBM発射管12基を搭載し、潜行深度は300mです。一番艦は2009年に進水し、2016年に就役。現在2番艦まで就役しており、計4隻の建造が予定されています。しかし、アリハント級はインドが独力で建造した艦ではなく、ロシアの技術協力のもとで建造されました。また、インドは過去20年間にわたりロシアから原子力攻撃型潜水艦をリース(租借)して運用経験を積んできました。しかし、原子力空母建造となるとロシアにはそのノウハウがなく、技術協力は期待できません。

こうした状況下で、原子力空母シャルルドゴールを運用するフランスがインドの技術協力相手として有力視されています。インド海軍はフランスから空母用艦載機として27機のラファールMの導入を決定しており、今後も調達数を増やす計画です。空軍でもラファールの調達数を増やすなど、軍事面で両国は関係を強化しており、原子力空母の建造を進めるにあたってフランスに協力を求める可能性が高いと推測されます。

原子力空母技術において世界最高峰のアメリカは、トランプ政権以降、インドとの関係が悪化傾向にあります。また、国産化を強く求めるインドに対し、アメリカは技術協力に慎重な姿勢を示しており、協力は難しいと考えられます。その点、フランスは潜水艦(スコルペヌ級)や戦闘機での共同開発・生産経験があり、ラファールのライセンス生産についても前向きな姿勢を示しています。インドが国産の艦載機開発を進める上でも、ラファールMの開発実績を持つフランスの協力は大きな助けとなるでしょう。

ただし、インドはアメリカや中国のような「空母大国」を目指しているわけではないとの見方もあります。海軍は原子力空母を3隻目の空母と目論んでいましたが、「同時に3隻を運用する」という案は政府が支持しないとの報道も出ています。これは、多大なコストと維持管理の困難さを考慮した現実的な判断である可能性があります。インドの国防計画は、単なる兵器の増強に留まらず、地政学的なバランス、国産化の推進、そして国際協力の複雑な相互作用の中で進められています。

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