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イランが米軍THAADレーダー破壊か 中東防空網に衝撃

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衛星画像(©AIRBUS) AN/TPY-2 Radar(©RTX)

中東情勢の緊張が続くなか、イランによる攻撃でヨルダンに配備されていた米軍の高性能レーダーが破壊された可能性が浮上し、注目を集めている。報道によれば、米軍のミサイル防衛システム「THAAD」の中核を担うレーダーが攻撃を受け、重大な損傷を受けたとみられている。

複数の海外メディアは、ヨルダン北部の空軍基地に設置されていた米軍の「AN/TPY‑2」レーダーがイラン側の攻撃を受け、機能停止に陥った可能性を報じている。衛星画像では、レーダー施設周辺に焼損した痕跡や残骸が確認されたとされる。同レーダーは価格が約3億ドル(約450億円)ともいわれ、米国のミサイル防衛網において極めて重要な役割を担う戦略資産だ。

 中東ミサイル防衛の「目」

THAADは「ターミナル段階高高度地域防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense System)」の略称であり、弾道ミサイルを大気圏内外の高度40〜150kmの高高度で迎撃するために開発された米国の最新ミサイル防衛システムだ。パトリオットPAC-3より高い高度で撃墜可能で、中・短距離ミサイルに対し高い命中精度を持ち、弾頭を直接目標にぶつける「運動エネルギー弾頭」による「直接衝突(ヒット・トゥ・キル)」方式を採用している。イスラエルや湾岸諸国、韓国など世界各地に配備されている。地上移動式発射台や高性能レーダーで構成されるTHAADの中核となるのがAN/TPY-2レーダーであり、Xバンドレーダーによって弾道ミサイルを数千キロの距離から探知・追跡する能力を持つ。

このレーダーは単にTHAADの射撃管制を行うだけでなく、米軍が構築している広域ミサイル防衛ネットワークの早期警戒システムとしても機能する。特にヨルダンに設置されたレーダーは、イラン方面から発射される弾道ミサイルをいち早く探知する役割を担い、イスラエルや湾岸諸国の防空体制を支える重要拠点とされてきた。そのため、仮にこのレーダーが実際に破壊、あるいは長期間の機能停止に追い込まれた場合、地域のミサイル防衛体制に一時的な空白が生じる可能性がある。

 「迎撃ミサイルではなく目を潰す」戦術

軍事専門家が注目しているのは、今回の攻撃が示す戦術的意味だ。ミサイル防衛システムは迎撃ミサイルだけでなく、レーダーや指揮管制システムなど複数の要素で構成される。中でもレーダーはシステム全体の「目」ともいえる存在で、これが機能しなければ迎撃能力そのものが大きく低下する。そのため、敵の防空網を突破する際には、迎撃ミサイルを直接攻撃するのではなく、レーダーやセンサーを先に無力化する戦術が広く研究されてきた。今回の攻撃が事実であれば、イランがまさにこの「センサー攻撃」の戦術を実行した可能性があると指摘されている。

 さらに重要なのは、今回の攻撃が比較的安価な無人機やミサイルによって実施された可能性がある点だ。AN/TPY-2のような大型レーダーは巨大なアンテナを備える固定施設であり、衛星や偵察によって位置を特定しやすい。もし数万ドル規模のドローンや巡航兵器によって数億ドルのレーダーが破壊されたのであれば、費用対効果の面でも防空システムの脆弱性を示す事例となる。近年の戦争では、ウクライナ戦争や中東紛争などでドローンによるセンサー攻撃が増加しており、防空システムの設計思想そのものに影響を与えつつある。

 米軍は代替配備を急ぐ

米軍は、ヨルダン国内で損傷したレーダーシステムの詳細については、戦略的な理由から公にしていない。しかし、複数の報道機関が伝えるところによれば、米軍はヨルダンの防空能力を維持するという喫緊の課題に対応するため、代替のレーダーシステムを現地に緊急展開する作業を急いでいるとされている。ただ、このTHAADシステムは世界的に配備数が限定された、極めて重要な戦略兵器だ。そのため、レーダーを含む関連機器の予備部品や代替システムが潤沢に存在するわけではない。米国は現在、イランによる地域的な脅威への対応を最優先事項としており、その結果として、これまで韓国に配備されていたTHAADシステムの一部を、中東地域へと緊急移転させたと報道されている。このTHAADシステムの戦略的移転は、東アジア地域における米国の抑止力の低下を招くのではないかという、深刻な懸念を惹起している。

今回の攻撃が確認されれば、米国とイランの軍事的駆け引きは新たな段階に入る可能性がある。特に中東では、イスラエルや湾岸諸国が米国のミサイル防衛網に依存しており、そのセンサー網が攻撃対象となる前例は安全保障上の重大な問題となる。中東の軍事バランスは現在も急速に変化しており、今回のレーダー攻撃は、防空システムとドローン戦の新しい時代を象徴する出来事として、各国軍関係者から強い関心を集めている。

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