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    イランが米海軍の無人潜水艇「Dive-LD」を回収 深海6000m・10日間潜航できる大型UUVの実力とは

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    ©Anduril Industries

    イラン革命防衛隊(IRGC)は2026年9月8日、ホルムズ海峡の入り口付近で米軍の無人潜水艇(UUV)を「鹵獲した」と発表した。イラン側が公開した映像・写真に写る船体の形状やマーキングから、機体は米防衛企業アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)が開発した大型自律型無人潜水艇「Dive-LD」と特定されている。

    この事案は単発の出来事ではなく、2026年2月28日に米・イスラエルがイランを攻撃したことで始まった軍事衝突と、その後のホルムズ海峡の機雷除去作戦という大きな文脈の中で起きた。イランは開戦直後から同海峡に機雷を敷設して事実上封鎖し、米軍は4月以降、掃海艦や無人潜水機を投入して掃海を続けてきた。8月末には米側が「航路上の機雷はすべて除去した」と発表したばかりで、Dive-LDもこうした海域監視・機雷関連任務の延長線上で運用されていたとみられる。

    米側とイラン側、食い違う説明

    IRGCは声明で「米軍の最新鋭無人潜水艦を作戦で捕獲した」と主張し、鹵獲機を戦利品と位置づけた。一方、米中央軍(CENTCOM)のティム・ホーキンス報道官は、当該機体が地域海域の測量任務中に故障し、捕獲の24時間以上前から航行不能のまま漂流していたと説明。機密のソナーやレーダーは搭載しておらず、機密データも収集していなかったとして、イラン側の「作戦による鹵獲」という主張を退けた。

    もっとも、アンドゥリルのパーマー・ラッキーCEOは9月9日、自身のSNSで「この機体はCENTCOM管内で数カ月間任務にあたり、数千時間にわたり米軍を支援してきた」「捕獲までに大きな価値を提供していた」と投稿した。人間には危険すぎる海域での運用と、いずれ鹵獲されるリスクを織り込んで設計された「量産型の消耗前提(attritable)潜水艦」だとも説明している。CENTCOMが「旧式機」と位置づけたのに対し、ラッキー氏はむしろ機体の実績と価値を強調しており、両者の説明には温度差がある。

    Dive-LDとは何か

    Dive-LDはもともと米新興企業ダイブ・テクノロジーズが開発し、2022年にアンドゥリルが買収した大直径自律型無人潜水機(AUV)。米海軍への引き渡しは2025年4月に始まった。

    項目仕様
    全長約5.8m
    直径約1.2m
    重量約3t
    最大潜航深度約6000m
    自律運用期間最大10日間
    船体構造自由浸水式(機器類のみ耐圧殻に収容)
    主な任務ISR、機雷戦、海底地形調査、海底インフラ点検

    船体には海水が自由に浸入する「自由浸水構造」を採用し、ミッションコンピューターや航法機器、バッテリーだけを小型の耐圧殻に収める設計となっている。これにより複合材製の安価な船体を短期間で量産できる。

    なぜ米軍は大型UUVを必要とするのか

    水中では電波がほとんど届かず、衛星通信も使えない。長時間にわたり海中を航行する無人機には、人間がリアルタイムで操縦し続けなくても任務を遂行できる高度な自律航行能力が不可欠になる。Dive-LDはこうした環境を前提に、あらかじめ設定した任務を最大10日間、自律的にこなせるよう設計されている。

    有人潜水艦を機雷原や敵沿岸に近い危険海域へ送り込めば、乗員の命を危険にさらす。UUVであれば、その心配がない。しかも1隻数十億〜数千億円規模になる有人潜水艦に比べ、UUVは相対的に低コストで大量配備しやすく、ホルムズ海峡のような狭く戦略的な海域での機雷捜索や航路確認に向いている。

    消耗前提の量産思想

    アンドゥリルはDive-LDを、有人潜水艦の運用コストのごく一部(ラッキー氏によれば艦隊で最も安価な有人潜水艦の0.04%程度)で大量配備できる「attritable」資産と位置付ける。同社は2024年6月、年産能力を12隻から200隻規模に拡大する新工場の設立を発表しており、損失や鹵獲を前提としても任務遂行能力を維持できる体制づくりを進めてきた。

    鹵獲がもたらすもの、そして次の展開

    米側は機密センサーの非搭載を強調するが、実機を入手すれば船体構造・推進系・電源系・航法装置・通信機器・製造方法などを物理的に分析できる。イランは2011年に米軍の無人偵察機RQ-170を、2022年には米海軍の無人水上艇「セイルドローン」を相次いで捕獲・回収した経緯があり、鹵獲した米軍装備から技術情報を得ようとしてきた前例が複数ある。今回もDive-LDを分解・調査し、将来の対UUV能力や自国の水中ドローン開発に役立てようとする可能性は否定できない。ただし機体を入手したからといって、そのまま自律航行アルゴリズムや暗号技術を再現できるわけではない。一方、Dive-LDで培われた技術は、アンドゥリルが開発を進めるより大型のUUV「Dive-XL」や、その軍用版「Ghost Shark」(初号機はオーストラリア海軍向け)に引き継がれている。同社は2026年3月、米国防イノベーションユニット(DIU)と海軍が進める大型UUVの試作プロジェクト「CAMP」にも選定されており、大型無人潜水艇の開発競争はすでに次の段階に進んでいる。

    今回の鹵獲劇は、有人艦艇同士の対峙にとどまらない、探知・妨害・追跡・捕獲を含む無人潜水艇同士の新たな海中戦の姿を象徴する出来事だ。今後、米中露などが大型UUVの配備を拡大すれば、深海はこれまで以上に「無人兵器が活動する戦場」となっていくだろう。

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