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実戦経験豊富!?防衛省が購入検討するイスラエル製無人機・ドローン

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実戦経験豊富!?防衛省が購入検討するイスラエル製無人機・ドローン
©IAI

日本の防衛省は、無人航空機システム(UAS)の能力強化を戦略的な柱と位置付け、特にイスラエル製無人機の導入を積極的に検討し、現在そのテストを進めている。この動きは、現代戦における無人機の重要性が増す中、防衛省が無人機戦力の質的向上を図るための喫緊の課題と認識していることの表れである。イスラエルはUAS技術において世界をリードし、実戦経験も豊富なため、同国製の複数の無人機が有力候補として浮上している。

その具体的な動きとして、2025年8月初め、和歌山県の白浜空港でイスラエル航空宇宙産業(IAI)製の無人航空機「ヘロンMK II」が試験飛行を実施している様子が目撃された。この機体に川崎重工業のロゴがペイントされていた。これは、川崎重工業が防衛省から調査役務を落札し、IAIとの間で協力協定を締結した上で、当該機体を日本に輸入したことを示している。

Heron MkII

©IAI

Heronは、IAIによって開発・製造された中高度長時間型(MALE)UAVであり、その優れた性能は多岐にわたる。最大52時間という驚異的な滞空能力と、高度3万5000フィート(約1万m以上)での飛行が可能であり、中型無人機としては非常に高い運用柔軟性を持つ。巡航速度は約220km/h、最大速度は約260km/hに達し、広範囲を効率的にカバーできる。データリンクおよび衛星通信による遠隔操作が可能で、通信リンク距離は最大350kmに及ぶが、衛星通信を利用すれば事実上、通信距離の制限はなくなる。

Heronの主な用途は偵察・監視・情報収集(ISR)任務であるが、その多機能性は電子戦や通信中継、さらには海上監視や災害監視といった幅広いミッションにも対応可能である。ペイロード能力は最大470kgと高く、将来的な拡張性も確保されている。さらに、必要に応じて武装化も可能であり、攻撃任務への転用も視野に入れられている点が、その戦略的価値を高めている。

イスラエル空軍はHeron Mk IIを実戦投入しており、シリア・レバノン国境やガザ地区上空などで偵察・監視任務に従事させている。特に、敵勢力の動向監視、長時間のターゲット追跡、精密誘導兵器の誘導支援などに使用され、その有効性が証明されている。公開情報によれば、電子情報収集(ELINT)や通信傍受(COMINT)任務にも利用されており、Heronが強力な電子情報収集能力を備えた堅牢なISRツールとして、紛争を抱える国々から高い評価を得ていることが導入実績からうかがえる。

国際的にもHeronシリーズの導入は進んでおり、インドでは空軍と国境警備隊が導入し、係争地であるパキスタン国境や中国との実効支配線(LAC)沿いで偵察・監視任務に運用している。2020年以降の印中国境緊張(ガルワン渓谷衝突後)においては、Heron Mk IIが長時間監視と目標情報収集に活用されたと報じられており、その信頼性と実用性が改めて示された。また、アゼルバイジャンも導入しており、隣国アルメニアとのナゴルノ・カラバフ紛争後の国境監視任務などで利用されている例が報告されている。これらの実戦経験は、Heronが高度な強度を持つ地域においても性能が証明されていることの強みとなっている。

購入を検討している自爆ドローン

防衛省は、Heron Mk IIだけでなく、IAIが開発・生産する複数の自爆ドローンも検討対象としている。

ROTEM L

©IAI

その一つが「ROTEM L」である。これは垂直離着陸(VTOL)が可能なクワッドコプタードローンで、特に市街戦での運用を想定して設計されている。兵士1人で1分以内に組み立て・展開が可能であり、手持ちのタブレットで遠隔操作できるという高い即応性を持つ。重量は約6.5kg、射程距離は10kmで、1.2kgの弾頭(M26またはM67手榴弾2個に相当)を搭載可能である。自爆ドローンでありながら、攻撃が未達の場合は呼び戻して回収できる。巡航速度は36km/hだが、攻撃時には最大速度90km/hで標的に向かって急降下する。監視と目標捕捉・追跡用のカメラを機首と機体下部にそれぞれ搭載し、市街地での障害物との衝突を防ぐための障害物回避センサーも装備している。飛行時間は30分だが、弾頭を搭載せずにISRに限定すれば45分に延長され、観測のために駐機した状態であれば最大9時間の待機が可能である。

Point Blank

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もう一つの検討対象は「Point Blank」である。このドローンは、その携行性と高速性から「歩兵が携行できる電子光学・GPS誘導式のミサイル」と評される自爆ドローンである。VTOL(垂直離着陸)式で、重さは約7kgと軽量であり、片手で持てるほどコンパクトである。全長1m、翼幅0.8mで、バックパックでの携行も可能。Point Blankは、その形状と高度450m以上を最大速度280km/hという高速で飛行することから、手持ち式のミサイルと称される。最大20分間飛行し、最大射程は10km。攻撃前には空中でホバリングしながら標的の情報と正確な位置を確認し、その後、水平飛行のミサイル軌道に移行する。偵察監視用途にも使え、攻撃せずに回収することもできるため、柔軟な運用が可能である。

さらに、防衛省はイスラエルUvision社製の「HERO-120」とElbit Systems社製の「SkyStriker」も検討している。

Hero-120

Hero-120は4.5kgの弾頭を搭載した対戦車自爆ドローンで、最大60分間、60kmの飛行が可能であり、広大な攻撃範囲とISR能力を提供する。海外では戦車や装甲車、無人車両への搭載も計画されており、車両発射型自爆ドローンとしての採用が進んでいる。アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフ紛争で実戦投入し、ウクライナにも米国を通じて供与されており、既に戦場でその実力を証明している。

SkyStriker

SkyStrikerは、最大10kgの弾頭を搭載し、オペレーターが指定した目標を遠隔操作なしに探知、捕捉、交戦できる完全自律型の遊撃弾である。高精度の攻撃を実現し、最長2時間飛行、航続距離100km、急降下時の最大速度は555km/hに達する。目標捕捉能力を備えた自動ビデオ追跡装置を搭載しており、GPSや通信が遮断された環境下でもターゲットを正確に攻撃できる点が特長である。

これらの無人機・ドローンの検討は、防衛省が2023年度予算に計上した「小型攻撃用UAV(無人航空機、ドローン)」30億円、「多用途/攻撃用UAV」69億円といった、無人機攻撃能力の強化を目的とした予算措置の一環であるが7機中5機がイスラエル製という構成である。防衛省は、これらイスラエルの先進的なUASを導入することで、 ISR能力、攻撃能力、そして非対称戦における優位性を飛躍的に向上させ、日本の防衛態勢をより強固なものにすることを目指している。しかし、イスラエルのガザ侵攻をめぐり、イスラエル製兵器の購入には国内で強い反発がある。

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