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ロッキードが新型UUV「Lamprey」公開、潜水艦に寄生して充電する衝撃

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©Lockheed martin

2月9日、アメリカの巨大防衛企業であるロッキード・マーティン社は、海洋戦略における新たなゲームチェンジャーとなる最新鋭の多目的自律型水中無人機(MMAUV/Multi-Mission Autonomous Undersea Vehicle)、「Lamprey(ランプリー)MMAUV」の公開を発表しました。このプラットフォームは、従来の水中無人機(UUV)の概念を根本から覆すものであり、極めて高い柔軟性と戦術的価値を兼ね備えた“プラグ&プレイ”型の自律潜航ユニットとして設計されています。

特に開発の焦点となっているのは、米海軍が重視する「秘匿侵入(Assured Access)」と「海域拒否(Sea Denial)」といった現代の複雑な海上作戦への対応能力です。ロッキード・マーティン社は、本機の戦術的意義を強調し、「現代の海上戦闘空間は、隠れ、適応し、支配するプラットフォームを求めている」とコメントしており、Lampreyがその要求に応える切り札であるとしています。

ヤツメウナギに着想を得た「寄生型」無人機

Lampreyという名称は、古代魚であるヤツメウナギ(Lamprey)に由来しています。この魚が大きな獲物にしっかりと体を付着させる習性から着想を得て、本機は戦略的な移動と電源の持続性を確保する画期的な構造を持ちます。Lamprey MMAUVの最大の特徴は、味方の艦艇や潜水艦の船体に“寄生”するように付着し、移動・充電を行える点です。公開されたコンセプト映像や資料では、ホストとなる水上艦船や潜水艦の船体下部にLampreyが磁気的、または機械的に固定される様子が示されています。この状態で航行する際、Lampreyに内蔵された水力発電機(hydrogenerator)を用いて、航行中に自らのバッテリーを充電しながら戦闘海域へ到達する能力が強調されています。この「寄生型アプローチ」は、従来のUUVが直面してきた最大の課題、すなわち電源の持続性と作戦海域への到達時間を根本的に解決する可能性を秘めています。また、味方艦艇の貴重な格納スペースを占有することなく運用できるという運用上のメリットも大きいです。同社広報は、「(ホスト艦艇から)出発する際に完全充電された状態で戦略的に重要な海域へ送り込むことができる」と説明しており、UUVの航続距離と作戦時間を飛躍的に向上させるものと期待されます。

「多用途プラットフォーム」としての柔軟性

Lamprey MMAUVは、単一用途に特化された従来の無人艇とは一線を画し、その設計思想の根幹に「多用途プラットフォーム」としての柔軟性を持っています。車体中央には、約24立方フィート(約0.68立方メートル)という大きな内部ペイロード空間が確保されています。この空間は、オープンアーキテクチャとして設計されており、任務に応じて搭載する装備を迅速かつ柔軟に変更することが可能です。報道や公開資料では、Lampreyが担いうる多様な装備・任務が具体的に挙げられています。

  • 情報収集・監視・偵察(ISR)センサーの搭載
  • 標的捕捉・索敵支援システムの展開
  • 電子戦(EW)/妨害装置の搭載
  • 機雷やデコイ(囮)の展開・敷設
  • 無人航空機(UAV)対水中兵器(軽量トーピード等)の発射
  • 海底機器の展開や、広域にわたるセンサー網の構築など

特に注目されるのは、ペイロード空間に可変的な発射機構を装備することで、水上・水中・空中を跨いだ統合的な作戦展開が可能になる点です。例えば、複数の短距離ドローン(UAV)を搭載し、潜航状態から発射することで、上空からの情報収集や対地・対艦攻撃を行うという先進的な構想も示されています。この設計により、Lamprey MMAUVは低コストでありながら高い戦術的価値を発揮することを狙いとしています。従来型の有人潜水艦や、単一任務に特化した無人機に比べ、同一機体で多岐にわたる任務をこなせる画期的なプラットフォームとして位置づけられています。

海軍戦略における新たなマイルストーン

Lampreyの発表は、海洋戦略、特に無人システムが担う役割の拡大を象徴する重要な出来事です。従来、UUVは主に情報収集や監視といった受動的な任務に用いられてきました。しかし、Lampreyは、それらの情報活動に加えて、海域拒否、電子戦、攻撃支援といったより主体的かつ能動的な戦術行動までを視野に入れています。この戦術コンセプトは、米海軍が近年、その作戦遂行の二本柱として強調している「Assured Access(秘匿侵入)」と「Sea Denial(海域拒否)」の概念と完全に一致します。

  1. Assured Access(秘匿侵入): Lampreyのステルス性と持続性を活かし、敵の複雑な監視網に見つかることなく、戦略的に重要な海域へ近接し、詳細な偵察を行います。
  2. Sea Denial(海域拒否): デコイの投射、強力な電子妨害、そして必要に応じて兵装の投射といった多機能性を利用し、敵艦艇や潜水艦の機動を制限し、作戦海域へのアクセスを拒否します。

こうした多層的な作戦遂行能力は、個々の戦術的な柔軟性を高めるだけでなく、米国とその同盟国にとっての戦略的抑止力の強化にも直結すると見られています。また、Lampreyは、将来的に友好国との共同運用や、ネットワーク中心戦(Network-Centric Warfare)における重要な「センサー/エフェクター」(情報収集ノードと攻撃実行ノード)としての役割も担うことが想定されています。米国防当局が、この画期的なプラットフォームの同盟国海軍への導入を積極的に推進する可能性も指摘されています。

現時点では、Lamprey MMAUVの実戦配備時期、具体的な航続距離、最高速度、生産コスト、量産性など、詳細な性能データは依然として非公開であり、不明な点が多く残っています。今後、本格的な海上試験や実地配備に向けた評価・検証プロセスが、防衛・海洋産業界の最大の焦点となるでしょう。しかし、海洋戦略環境は、ハイエンドの脅威と技術の進化により急速に変化しており、無人・自律型システムの戦術的・戦略的価値は今後ますます高まることは確実です。市場調査によれば、UUV関連の国際市場は2030年代まで大きな成長が見込まれており、Lampreyのような多機能かつ柔軟性の高いプラットフォームが、次世代の水中無人機の新たな標準となる可能性があります。

Lamprey MMAUVの発表は、水中無人機技術における一つの大きなマイルストーンであり、今後の海洋戦闘の未来が、巨大な有人潜水艦や艦艇だけでなく、ステルス性と多機能性を兼ね備えた自律型無人プラットフォームの「群れ」が担う時代へと変わろうとしていることを示唆しています。

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