

メキシコ西部を拠点とする巨大麻薬組織「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」の最高指導者であるネメシオ・オセゲラ・セルバンテス、通称「エル・メンチョ」が、2月22日にメキシコ軍との激しい銃撃戦の末、ついに死亡した。メキシコ政府は同日、軍主導による周到な大規模作戦が実行され、その過程でエル・メンチョが致命的な傷を負い、搬送中に死亡が確認されたと公式に発表した。この作戦には、長年にわたり行方を追ってきた米国側の緻密な情報提供があったとされており、これにより、世界で最も危険な国際的な最重要指名手配犯の一人の追跡が、劇的な終焉を迎えることとなった。
エル・メンチョとCJNGの台頭
#Mexico 🇲🇽: Cártel de Jalisco Nueva (#CJNG) released a video to announce their presence in #Aguascalientes.
— War Noir (@war_noir) February 6, 2023
Gunmen can be seen with .50 Cal Barrett M82A1 AMRs, G3A3 rifle, M1919 machine guns, FN M249(S), FN SCAR 17S rifles, AK and AR-10/15 pattern rifles with grenade launchers. pic.twitter.com/r7RRT9nChi
エル・メンチョは元々警官だったという異色の経歴を持つが、1990年代から麻薬密売の世界に深く関与するようになった。そして2010年代以降、メキシコ中部ハリスコ州を基盤とし、CJNGを創設し、その勢力を驚異的な速度で拡大させた。新興の組織でありながら、CJNGはその極めて攻撃的かつ残忍な手法により、メキシコ全土に急速に浸透していった。このグループは、治安部隊や公務員、さらには批判的な一般市民に対する一連の残酷な攻撃や、派手で残虐な見せしめによって悪名を轟かせている。例えば、ロケットランチャーを用いて軍のヘリコプターを撃墜したり、警察の車列を襲撃して何十人もの警官を殺害したりした事件は、その冷酷さを象徴している。また、ライバル組織を威嚇するために、他のカルテルメンバーの遺体を橋に吊るすという残忍な行為も知られている。現在、CJNGはメキシコで最も強力かつ暴力的な組織犯罪グループの一つに数えられている。
活動地域は、その発祥地であるハリスコ州だけでなく、メキシコ国内の広範囲にわたり支配地域を広げ、米国、欧州、アジアを含む国際的な麻薬流通網を確立してきた。彼らは軍隊並みの装備と、極めて残虐な戦闘戦術で知られ、長年にわたり対立する組織や治安当局との間で血みどろの抗争を繰り返してきた。エル・メンチョは、世界最大級の麻薬密売ネットワークを築き上げた人物として国際的に知られていき、米国当局、特にアメリカ麻薬取締局(DEA)は、CJNGをフェンタニルやメタンフェタミンなどの合成麻薬の米国流入における主要な供給源と位置づけ、その逮捕につながる情報に対して最大1500万ドルという巨額の懸賞金をかけて、長年にわたりその行方を追っていた。
決行された大規模作戦と終焉
RODEADO Y
— EJÉRCITO, FUERZA AÉREA Y GUARDIA NACIONAL México (@EJTO_FAM_GN) February 22, 2026
SORPRENDIDO
EL operativo de las fuerzas especiales del Eǰercito Mexicano sorprendieron a Ruben Oceguera Cervantes "el Mencho" en una quinta entre la sierra. No avisaron ni al Gobernador de Jalisco ni a las policias estatales. No funcionaron sus redes territoriales ni… pic.twitter.com/64VAPnN5EV
今回の作戦は、CJNGの拠点であるハリスコ州の山間部、タパルパ周辺の隠れ家を標的として実施された。メキシコ軍の特殊部隊がヘリコプターと精鋭の地上部隊を投入し、武装したカルテル構成員との間で激しい銃撃戦が展開された。作戦の結果、複数のカルテル構成員が死亡し、大量の武器や高度な通信機器が押収された。重傷を負ったエル・メンチョは、より高度な治療を受けさせるために首都へ空輸されることになったが、搬送中に死亡が確認されたという。作戦には米国が情報提供を行い、新たな対カルテル共同タスクフォースを通じて、場所の特定などの支援を行った。一部の報道や情報では、作戦を遂行したメキシコの特殊部隊は、米海軍特殊部隊(SEAL Team 2)から訓練を受けていた可能性が指摘されている。
「最も凶暴な犯罪組織」の一つであるメキシコの麻薬カルテル「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」のボスEl Mencho(エルメンチョ)が22日、米国の情報提供のもと、メキシコ軍によって殺害された。CJNGは各地で報復を開始、車両火災、道路封鎖、銃撃戦、店舗焼失が相次いでいるpic.twitter.com/XnxDUg8tJt
— ミリレポ (@sabatech_pr) February 23, 2026
エル・メンチョ死亡のニュースが流れると、CJNGの報復とみられる行動がすぐに発生した。州都グアダラハラや著名な観光地プエルト・バジャルタなどでは、車両の放火や主要道路の封鎖が相次いだ。治安当局は、さらなる報復行動や組織的な混乱を警戒し、コード・レッド(最高警戒態勢)を発令、厳戒態勢を敷いた。この混乱は、空港や主要高速道路で一時的な交通障害を引き起こし、市民生活やメキシコの重要な産業である観光業への影響も懸念されている。
今回の作戦は、メキシコと米国の対カルテル協力がもたらした象徴的な成果として位置づけられている。しかし、犯罪組織の構造的な問題に詳しい専門家の間では、「首領(ボス)の排除は、短期的に組織内部の権力闘争や勢力図の変化を引き起こし、かえって暴力が増加する可能性が高い」との見方が強い。実際、CJNGの内部では既に後継者争いが始まるとの観測があり、組織の分裂や、他のカルテルとの間で新たな抗争が激化する恐れも指摘されている。
メキシコは長年にわたり、カルテルとの間で続く「麻薬戦争」に苦しんできた。エル・メンチョの死は、この長い闘いにおける一つの象徴的な転換点となり得る。しかし、麻薬に対する根強い需要が存在し続け、組織犯罪の構造的な問題が根本的に解決されない限り、メキシコ国内の暴力の連鎖が完全に終息する保証はない。国際社会は今後、CJNGの再編動向と、エル・メンチョの死がメキシコ国内の治安情勢にどのような長期的な影響をもたらすのかを、引き続き注視していくことになる。
