

スウェーデンの防衛大手Saabは2026年8月21日、リンシェーピング近郊のマルメン空軍基地で、将来の無人戦闘航空機コンセプト「A3-01」の実物大モックアップを公開した。翌22日から23日にかけて開催されたスウェーデン空軍創設100周年記念エアショー「Jubilee Air Show」の目玉展示となった。国際メディアは本機を、米空軍が進めるCCA(Collaborative Combat Aircraft)構想の“欧州版”と位置付けている。
単なるコンセプト機ではない 実は「A1・A2・A3」の三段階構想


A3-01はデルタ翼に近い主翼を持つ無尾翼レイアウトで、胴体側面に2つのエアインテークを備える。低被探知性(ステルス性)を意識した滑らかな形状は、従来の偵察用UAVとは一線を画す。重要なのは、これが単発の展示物ではなく、スウェーデン国防装備庁(FMV)主導の研究プログラム「Vägval Stridsflyg(戦闘航空の岐路)」の一部である点だ。同プログラムは、2040年以降のスウェーデン航空戦力のあり方を検討する「KFS(Koncept för Framtida Stridsflyg/将来戦闘航空コンセプト)」の枠組みで進められ、FMV・スウェーデン軍・国防研究所(FOI)・Saab・GKN Aerospaceが共同で取り組んでいる。背景には、2023年にスウェーデンが英国主導の次世代戦闘機計画「テンペスト」(後に日本のF-X計画と統合し「GCAP」となる)から離脱し、独自路線を選んだ経緯がある。NATO加盟やウクライナ侵攻後の国防費増額も、この判断を後押しした。
Saab幹部(上級プログラム責任者ピーター・ニルソン氏)によれば、開発は「A1」「A2」「A3」という3段階で進む。A1・A2はすでに製造中の実機(技術実証機)で、スウェーデン国防省の資金提供を受けている。一方、今回公開されたA3は、A1・A2で得られる技術を将来の運用機にどう統合できるかを示す“将来像”であり、量産や実機化の契約はまだ存在しない。ニルソン氏は「Gripen Eにとって大きな戦力になり得ると考えているが、現時点で正式な確約はない」と述べている。
A1は約15カ月後に初飛行へ エンジンはGripen Eと同型


A1はGripen E/Fと同じGEエアロスペース製F414ターボファン(推力約22,000ポンド=約98kN)を搭載し、超音速性能を狙う設計となっている。スウェーデン国防省は「コンセプトから初飛行まで36カ月」という厳しい開発期間を課しており、A1は今後15カ月程度での初飛行が見込まれている(2027年後半〜2028年前半の見通し)。A1の主目的は、低被探知機体を短期間で設計・製造できることの実証であり、内部兵装庫のスペースは備えるが、兵装の投下・発射試験は行わない予定だ。
後継のA2も同じF414エンジンを搭載し、新素材やセンサーなど追加技術に加え、実際に機能する内部兵装庫での兵装運用試験を行う計画とされる。SaabはA1・A2の開発について2030年まで契約を結んでいるが、A3を量産志向の試作機へ発展させる契約は現時点で存在しない。
ニルソン氏はスウェーデン地元紙コレーンの取材に対し、A3コンセプトが超音速到達を目指す設計であることを明確に認めている。またA3の垂直尾翼についても、公開されたモックアップは無尾翼形態だが、Saabは今後、垂直尾翼あり・なし双方の構成で試作機をテストする方針を示しており、A1の風洞模型では外側に傾いた双尾翼が確認されるなど、A3とは異なる形態も検討されていることが分かっている。
運用構想 Gripen Eが「指揮官」、GlobalEyeともネットワーク化
Saabはこの無人機構想を「flying combat buddy(空飛ぶ戦闘僚機)」と呼ぶ。想定される運用では、Gripen Eが1機以上のA3系無人機を指揮する“戦術ミッションコマンダー”を担い、Saab製早期警戒管制機「GlobalEye」(スウェーデンも導入済み)を含むネットワークの一部として機能する。A3自身がすべての目標を捜索・追尾する必要はなく、GripenやGlobalEyeなど他のセンサーから得た目標情報をもとに、自機の電波放射を抑えつつ有利な射撃位置へ進出するといった運用も想定されている。任務としては、電子戦、敵防空網制圧(SEAD)、精密攻撃など、高脅威空域における有人機のリスク低減に主眼が置かれる。
Gripen後継機ではなく、補完戦力
A3はGripenの後継機ではなく、あくまで有人機を補完する無人戦力として位置付けられる。スウェーデンは同じKFS/Vägval Stridsflygの枠組みの中で、2040年代を見据えた有人後継機の研究も別途進めており、将来的には「有人戦闘機+複数の無人僚機+早期警戒管制機」からなるネットワーク型航空戦力への発展が視野に入っている。
当面の焦点は、A1実証機が計画通り2027年後半から2028年前半にかけて初飛行を迎えられるかどうかだ。A3が実際に量産段階へ進むか否かは、スウェーデン政府による今後の予算措置・契約判断に委ねられており、現時点で確約はない。一部報道では、正式契約が2030年頃に承認されれば、2030年代半ばの実用化(IOC)もあり得るとの見方も示されているが、これはあくまで見通しの域を出ない。米国のCCA計画、中国のGJ-11に代表されるステルス無人攻撃機開発などと並び、スウェーデンのA1・A2・A3プログラムは、限られた人的・財政的資源で高い航空戦力を維持しようとする欧州中堅国の一つの解として注目される。
出典:
- The Aviationist「Saab Unveils A3-01 Collaborative Combat Aircraft Concept」(2026年8月22日)
- The War Zone (TWZ)「Saab Unveils Stealthy Supersonic ‘Fighter Drone’ Concept」(2026年8月22日)
- Militarnyi「Saab Unveils Supersonic Stealth Drone Concept」
- Air Data News「Saab reveals full-scale model of supersonic unmanned fighter」
- Army Recognition「SAAB Unveils A3-01 Autonomous Fighter as European Counterpart to U.S. CCA」
- Defence Industry Europe/Air Force Technology「Saab and FMV extend contract for future fighter studies」(2025年10月)
