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スペインがF-35購入中止、欧州製兵器への回帰!トランプ政権への不信感でF-35キャンセル広がる

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USAF

スペイン政府は、計画していたF-35戦闘機の購入を中止し、代わりにユーロファイター・タイフーンや将来的なFCASといった欧州製戦闘機の導入に大きく舵を切った。この異例とも言える決定の背景には、隣国ポルトガルをはじめとする他のNATO加盟国にも共通する、アメリカ、特にトランプ政権に対する強い不信感がある。

El Gobierno aparca la compra de cazas F-35 estadounidenses y busca alternativas europeas

スペインメディア「Elpars」の報道によれば、NATO加盟国であるスペインは計画していたF-35戦闘機の購入計画を取りやめ、欧州製の航空機を購入することを決定した。この決定は隣国ポルトガルに続くものであり、イベリア半島はF-35と決別した形だ。

スペインは2017年頃から、老朽化した空軍のF/A-18ホーネット(レガシーホーネット)の後継としてF-35Aを、海軍のAV-8Bハリアーの後継としてF-35B(STOVL仕様)の導入を検討してきた。2023年の防衛予算では60億ユーロがF-35調達予算として確保され、今年4月には104億ユーロの安全保障・防衛費総額が承認されるなど、F-35導入はほぼ確実視されていた。これは、欧州NATO諸国がGDPの2%を防衛費に充てるというコミットメントの一環であり、契約締結は間近と思われていた。しかし、突如として購入計画は中止され、将来的な採用計画も棚上げとなった。

トランプ政権への強い疑念が決定打に

この急転直下の背景には、トランプ政権の同盟国に対する敵対的、挑発的な姿勢が大きく影響している。トランプ大統領は就任当初から、NATO加盟国に対する過度な防衛費支出要求や制裁発言、さらにはEUに対する追加関税などで、スペイン政府に深刻な不信感を抱かせてきた。特に今年6月のNATO首脳会議で、トランプ大統領が防衛支出のGDP比5%を要求した際、スペインのサンチェス首相は「合理性を欠き、非生産的だ」と強く反発し、NATO事務総長に除外を求める書簡を送るなど、米国政府との間で決定的な亀裂が生じた。この出来事が、米国製兵器への過度な依存を見直す決定的な契機となったとされている。

さらに、スペイン政府は「防衛予算の85%を欧州に投資する」という明確な方針を掲げている。米国製であるF-35の導入は、この方針に反すると見なされた。結果として、スペインは英国、ドイツ、イタリアと共同開発したユーロファイター・タイフーンの追加購入、そしてドイツ、フランスと共同開発を進める次世代戦闘機FCASの購入へと完全に舵を切った。これは、欧州域内での防衛産業の強化と自立を目指すという、より大きな戦略の一環でもある。

ハリアー後継機の課題と運用上の空白

F/A-18ホーネットの後継機を予定していたF-35Aの導入中止はタイフーンの追加購入で補うことで対応可能だが、喫緊の課題として浮上しているのが、垂直/短距離離着陸機(STOVL)であるAV-8Bハリアーの後継機問題だ。現状、STOVL能力を持つ次世代戦闘機はF-35B以外になく、2030年に退役予定のハリアーの後継が未定という運用上の空白が生じることが懸念される。改修などの延命措置を行うか、最悪、艦載機が無くなる可能性もある。FCASの就役は2040年頃とされており、それまでの間、スペインは第5世代以降の先進的な戦闘機を持たないことになるため、今後の対応が大きな課題となる。

広がるF-35離れと米国の指導力への疑念

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スペインのF-35購入中止は単独の動きではない。トランプ政権の不安定な政策や信頼性低下への懸念から、NATO加盟国を中心に米国製兵器離れの動きが広がっている。

  • ポルトガル: 今年3月、トランプ大統領の発言がポルトガル当局者に敵対的と受け止められたことを受け、F-35調達を見直すことを発表した。
  • カナダ: カーニー新首相は「カナダはアメリカの51番目の州」というトランプ大統領の発言を受け、今年3月、決定していた88機のF-35Aの購入見直しを指示した。
  • インド: 今年2月にモディ首相が米国を公式訪問し、トランプ大統領から直接F-35のセールスを受けたが、8月には購入の意思がないことを正式に伝えた。これは、ロシア製原油購入に関する恫喝や追加関税に対するインド側の強い不満が背景にあるとされる。
  • スイス: 中立国であるスイスは2021年に36機のF-35Aを91億ドルで発注していたが、関税交渉がまとまらず、トランプ政権がスイスに対し先進国中最大の39%の関税をかけたことで、F-35Aの契約見直しの声が上がっている。

このように、トランプ政権による米国の指導力への疑念は広範に広がり、各国が自国の防衛戦略、特に兵器調達において、米国の政策変動リスクをより重視するようになっている。スペインのF-35購入中止は、こうした国際情勢の大きな転換点を示す象徴的な出来事と言えるだろう。

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